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隠れた真実13「ハイジャック防止法適用の問題点」

先日「隠れた真実13」として項目だけ挙げていたものの中身を記載。

1.大阪男性はJAL機脅迫で逮捕起訴どころか取調べも受けていない
男性は第12回公判で「8月1日に取り調べが始まって10日ほどして、JAL脅迫の事件もほのめかされた」と証言していて、結果的には「ほのめかし」だけで終わって警視庁移送も無かったようである。それどころか大阪地検で9月14日起訴され、同19日には三重男性PCでiesysが発見されて、同21日に大阪地検から釈放されたとのこと。それまで東京移送はなく、JAL機取調べは行われていなかったと考えられる。結果的に、「8月1日任意取調べ開始し、同26日逮捕から9月20日まで身柄拘束もしていたのにJAL機取調べ無し」だったということになる。

本事件のJAL機脅迫が東京地検の指摘するような大罪相当なら、何故大阪男性に対してはすぐ取調べが行われなかったのか。テロを想起させるものであれば、まず背後関係を調べるのは鉄則。結果的に大罪としての対応とは差がありすぎる。やはり東京地検の方は恣意的な法適用の可能性が高いと見ざるを得ないだろう。

2.論告の論理には明白な無理がある
11月21日第19回公判における論告内容で、以下(1)~(3)に関して「 」内の表現があったという情報をお寄せ頂いた。それを基に当方で考察を行なったところ、今回論告のハイジャック防止法違反適用の主張における無理筋の問題点が見えた。
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(1)メール内容 … 「読むものに不安や恐怖を感じさせる具体的内容」
以下のどこが具体的なのか? これを「具体的」と言うのは余りにも無理がある。
■2012/8/1 JAL爆破予告メール
  【JAL便に爆弾を仕掛けた】
  本日○○時○○分発の○○行き JL○便に我々の同志が爆弾を持ち込んだ。
  洋上で爆発するようセットしてある。
  爆発すれば必ず飛行機は墜落し、乗員乗客一人も生き残ることはない。
  そうならないために、我々はひとつ要求する。
  東京拘置所などに投獄されている麻原彰晃と信徒全員を今すぐ釈放しろ。
  そうすれば信号を発信し爆弾を止めることができる。
  要求が飲めなければ何百人も死ぬことになる。
  さらに地下鉄で硫化水素散布を行う用意もある。
  犠牲を出したくなければ言うとおりにしろ。

(2)釈放要求 … オウム真理教に関連させた具体的な要求」
上記脅迫文中の要求は、「東京拘置所などに投獄されている麻原彰晃と信徒全員を今すぐ釈放しろ」の一行(末尾行の「言うとおりにしろ」は強調のみ)。
オウム事件で東京拘置所に収監されている死刑囚だけで13名もいる。加えて拘置所「など」だから、死刑囚以外の刑務所服役者も含めた全員となり、一体何人になるのか。
これでは「今すぐ全員釈放」など無理は明らかだが、「具体的な要求」なら実現可能でなければならない。しかも仮に釈放できても、連絡先も連絡方法も全く書いてないから釈放実施を伝えて爆発させないように急ぎで交渉することも出来ない。これでどこが具体的なのか?
また要求として「引き返せ」とは書かれていない。JALの判断で引き返したことになる。しかし、本当に内容が具体的と受け取るなら、「洋上で爆発するようセットしてある」と書かれているのだから、引き返して洋上フライトを続けるのは危険が増す方向になる。本来やるべきことは出来る限り早く着陸する方法を手を尽くして探すことだが、機長証言では「社内でカテゴリー2と判断した…カテゴリー2なので、…緊急着陸するということでもない」(第11回公判)と述べている。
カテゴリ2とは「信憑性が高い、もしくは信憑性が低いが何らかの対応を行う」とのことで、二通りの場合の判断が含まれている。前者(信憑性高)なら当然緊急着陸必須だから、それをしなかったのは後者(信憑性低)の判断ということになる。つまり、JALは「信憑性が低い」と見ていたわけだが、検察官がそれを知らないふりをして「具体的要求」などと書くのは詭弁を通り越している。

(3)乗客被害の大きさ … 「人生を狂わせかねないほどの影響」
他事件、例えばこれまで取り上げてきたマルハニチロ事件では、従業員66人退職(自己都合退職とされているが、従業員には出向の話があったとのことで、勤務地移動困難などの事情も多いだろう)、派遣契約解除23名(派遣者のほぼ全員)などの報道がある。「人生を狂わせかねない」どころか、実際に狂わされた人がこれだけいた事になる。更に会社に残れて出向した従業員も職場移動により生活に影響を受ける人も多くなる。
また「黒子のバスケ事件」でも被害を見ていけば、400通以上もの脅迫状によるイベント中止等や陳列食品への毒物混入宣言による回収などで様々に影響受けた人の数は本事件より間違いなく多くなる。
会社を辞めたり思わぬ出向対象になった人、派遣解除された人、時間をかけて準備したイベントを中止せざるを得なかった人達などが、JAL機乗客より影響が小さいと検察側は主張するのだろうか。当然そのようなことは言えるわけもなく、その上で「マルハニチロ」・「黒子のバスケ」両事件は業務妨害罪であり、被害比較面からも検察側のハイジャック防止法違反適用は無理が出てくる。
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結果的に論告のハイジャック防止法違反適用の論理は随所で破綻と言うよりなく、弁護側主張のように業務妨害罪相当と見ることが妥当。
特に論告は具体的というごく基本的な日本語の使い方を間違えている。そして「具体的」であることを適用正当化の基本的な根拠としているのだから明らかな論理破綻である。
だが、文科系のトップエリート集団がそのような簡単な間違いをするとも考えられない(例えばの話として、もし司法試験や大学の試験でこの脅迫文が出題されて、「具体的か?」という設問になっていたら「Yes」の回答をした人は当然 X (バツ)になるだろう)。

それでも敢えてこのような論告にしたのは意図があるはずで、恣意的な法適用と過大求刑を正当化するために行なったのではないかと推定せざるを得ない。
更に裁判官が、明白な論理破綻の論告によって、重罰規定が無理筋で適用されることを認め、求刑に沿ったような判決を出すなら日本の刑事司法は歯止めも効かない事になる。
今回の裁判官の訴訟進行には「適正手続」と思えないところがあることを昨日記事で示したが、最後では良識を示して頂いて、上記のような論告の問題点も見抜いて適正な量刑の判決を出して頂けることを期待し判決を待ちたい。

以上
[追記]
上記でハイジャック防止法違反適用に関する論理破綻を複数示したが、同法第4条は初適用でもあるのに検察側は後々記録に残る論告でこのような無謀なことをしないで、何故日本人お得意の「空気」を読まなかったのだろうか。論告前の第18回公判では法曹三者とも「大団円」の雰囲気が出ていた。それに沿って最長でも求刑7年程度にしておけば、「具体的」という日本語の使い方も間違えた論告にしなくて済んだのではないか。
また、検察官の方々も独任制とは云え、組織人として内部事情は色々あると思うが、何がここまで検察側に無理をさせたのだろうか。やはり「面子」の問題が大きかったのか。或いは検察官は昨年4月から交代しているが、その前の3月に同法違反も含めて起訴した前任者の路線を引き継がなければいけなかったからか。

追記以上
「お知らせ」…「隠れた真実」シリーズも完結して、当面書こうと考えていた内容は終了したので、来年2月4日判決まで当ブログは待機します。その間基本的に記事投稿は行わない予定。何か書くことが出てきたら”kensyou_jikenbo2"の方で掲載します。
判決が出たら、判決内容や関係者の反応、世間の受け止め方など又記事にする予定。