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 JAL事件の量刑検証

昨日記事で、ハイジャック防止法第四条初適用に関して充分な論議を行なうよう指揮しなかった本件裁判官の問題は大きいと書いた。それだけでなく、検察側の求刑にも大きな問題があることも改めて指摘しておきたい。
同記事で紹介した判決理由から、検察側の論告求刑での主張は以下のようになる。
JAL事件はハイジャック防止法第四条が想定する典型的行為で、その中でも最も重い部類に入る”

第四条の罰則規定は懲役1~10年であるから、最も重い部類というのは10年に近い刑を想定していることになる。(しかも罰則規定からの判定だから併合や再犯も抜きで、これだけの刑を想定していることになる)

求刑にはハイジャック防止法違反だけでなく他の犯行分も含まれ、併合や再犯考慮もあるので、同法違反だけでどれぐらいの刑を想定しているか本来は分からない。しかし、論告の主張から検察側は同法第四条違反単体でも10年に近い刑を想定している。

仮定として、いたずらメールによるJAL事件単体で裁判が行なわれたとした場合、検察側は10年に近い求刑をするだろうか。例えば弁護側が最終弁論で示した「函館ハイジャック事件」(第一条適用、警官隊突入が行われ乗客1名負傷)でも懲役10年判決である。
全く実行するつもりがなく、内容的にも機長が見て「本当かも知れないが、いたずらのようにも思えた」という証言があるメールで、10年に近い求刑になるとは到底考えられない(機長は「いたずらの可能性が高い」と当時思ったとしても、引き返した以上をそれを率直に言うことはない)。
それにも関わらず論告で「最も重い部類」と主張して10年近い刑を示唆している。過度な求刑を無理に正当化しようとしているのではないか。分析していくと検察側主張の矛盾や問題点が見えてくる。

そして、当方はもしJAL事件単体で併合も再犯加重もないとした場合の刑なら、重めに見たとしても3年程度と想定する(検察側はこの条件で10年近いと主張していることなる)。3年で考えると、以前にも述べたように本事件は業務妨害罪など3年以下刑の併合相当となって、再犯を目一杯考慮しても求刑10年は困難になる。

だが、検察側の求刑10年や判決8年を妥当・或いは軽いと云う見解も、2chツイッターなどを始めとするネット上には見られる。このような方々には、仮にJAL事件が単体で併合・再犯も無しとして裁判員裁判で行なわれ、自身が裁判員として判定する場合は、何年が妥当とお考えになるか?」について聞いてみたいところである。又皆さんはどのようにお考えになるだろうか。

以上