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 JAL事件の量刑検証補足

昨日記事に補足。よく知られていることであるが、日本の量刑のやり方はアメリカ型の「個別犯罪について量刑を行なって加算する」という方式ではない。その中で併合罪の考え方について最高裁で以下の判例がある。
併合罪の構成単位である各罪についてあらかじめ個別的な量刑判断を行った上これを合算するようなことは、法律上予定されていないものと解するのが相当である」

つまり、個別犯行の量刑は示さなくて良いことになっている。(当方はこのやり方について異論があるが、現状はこのような運用になっている)
本事件も個別量刑は示さないと想定していたが、昨日記事で紹介したようにハイジャック防止法違反単体での量刑を実質的に明示した論告求刑になっていた。
JAL事件はハイジャック防止法第四条が想定する典型的行為で、その中でも最も重い部類に入る」→第四条の最長刑期10年に近いという見解を検察側は示していることになる(再犯加重・併合なしでの量刑)
これが重要と考えて昨日記事で改めて検証した次第。

そして、例えば本事件のような容易にいたずらと分かるような内容ではなく、「何らかの手法で具体性を持たせた脅迫メールを送って針路変更による行き先も指示し、航空会社がそれに抗えず第三国などに強制着陸させられ返還交渉も難航した」というような場合を考えてみれば、本事件とは悪質性も量刑も雲泥の差になることは明らかである。

第三国などに針路変更させられる事態が起きた場合の量刑が10年としたら、本事件は何年が妥当か? 人によって考え方は違うと思うが、昨日も記したように当方は3年程度と考えるし、重く見る人でも精々5年程度ではないだろうか。
それを検察側は10年近いと主張しているのである。これでは実際に第三国強制着陸があったような場合は何年にするつもりなのか?(法律上10年限度になってしまうが)
このように検察側は論告求刑で矛盾を露呈してしまっているのである。

また、裁判官も佐藤氏会見によると、「ハイジャック防止法についての(検察官の)非常に厳しい指摘が本来予定しているような犯罪類型とはちょっと違う」という指摘だったとのこと。
しかし、前述のように「実際に第三国等への強制着陸発生」などと、実行意思が全く無かった本事件は、「ちょっと違う」というレベルの差では無いだろう。
裁判官の言い分の詳細は判決文が出てこないと判定できないが、「ちょっと」や「少し」の違いと言うなら裁判官の認識にも重大な誤りがあるということになってくる。

結果的に検察官も裁判官も、量刑判断に問題があって、本事件裁判は無効レベルと当方には思える。

以上