kensyou_jikenboのブログ

yahoo!ブログの同名ブログを移行しました

 他事件事例(三鷹ストーカー殺人)

昨日以下の記事が配信された。
”池永被告の1審判決(懲役22年)を破棄「リベンジポルノの過大評価は誤り」”2015.2.6 産経新聞
(東京高裁の)大島隆明裁判長は「名誉毀損罪を実質的に処罰する判決で、1審の審理の進め方には違反がある」と指摘。起訴していないリベンジ(復讐)ポルノを事実上過大評価した判決は誤りとして懲役22年とした裁判員裁判判決を破棄し、東京地裁に差し戻した。・・・
大島裁判長は、池永被告が交際中に撮影した生徒のプライベートな画像を事件前後に流出させた「リベンジポルノ」と呼ばれる行為に着目。量刑を考慮する要素に取り入れること自体は否定しなかったが、裁判開始前に裁判官と検察・弁護側の三者で行われる公判前整理手続きについて「(リベンジポルノについて)主張・立証を行うことの当否、範囲や程度が議論された形跡は見当たらない」と指摘。裁判官による論点整理や審理の進め方に誤りがあったとして、論点を整理した上で改めて1審裁判員裁判で量刑を検討することが必要とした。>

本事件との比較を考えると、リベンジポルノと誤認逮捕では被害の状況は違うが、東京高裁の言う「起訴されていない被害を量刑の考慮要素に取り入れること自体は否定しないが、それに至る手続きや進め方に誤りがあった」という指摘は、まさに本事件にも当てはまってくるのではないか。
具体的には「リベンジポルノ」の部分を「誤認逮捕」に置き換えて上記を書き直すと以下のようになるだろう。
「…公判前整理手続きについて、誤認逮捕被害について主張・立証を行うことの当否、範囲や程度が議論された形跡は見当たらない…」
これは本事件の状況そのものになる。ただし、本事件では公判前整理手続の段階においては、被告人の否認によってシロクロを争っていたという大きな違いはある。しかし、遅くとも公判が始まって真犯人メールにより自供が行なわれた後には、公判や期日間整理手続などによって、「誤認逮捕被害」を量刑に取り入れる当否や範囲・程度等について集中論議するように裁判官が指揮する必要があっただろう。

更に、本事件では当ブログでも再三指摘してきたように、「ハイジャック防止法第4条」は初適用であるのに、適用当否に関する論議は公判前整理手続どころか自供後の公判でもずっと行なわれず、論告求刑に至ってようやく検察側から理由説明がなされたという状態であった。
しかも佐藤氏会見によれば、判決ではハイジャック防止法について適用自体は認めたが、検察側の「ハイジャック防止法(第4条)の中でももっとも厳しく指弾されるべき犯罪」と云う主張に対しては、「(第4条で最も悪質と)予定しているような犯罪類型とは違う」とその主張を退けているとのこと。

本事件で最も重い罪状であるハイジャック防止法違反の適用解釈において、裁判官が検察側主張に疑義があるような状態なら、1年半以上にも及ぶ公判前整理手続と公判の期間を通じて、適用論議が最終盤の論告と最終弁論における文書やりとり一回だけしか行なわれなかったのは、三鷹の事件で指摘された「手続きや進め方の誤り」にも相当しかねないのではないか。
裁判官は原則的には個々で独立しているとはいえ、少なくとも当方にはこの両事件についての裁判所見解の相違による整合性の無さに、社会的納得性を見出すことは困難と感じる。これで裁判の信頼性は保たれるのだろうか。

(両事件の量刑比較についても、「人の将来を完全に奪う殺人」と「ハイジャック防止法違反を含めた犯行予告」というそれぞれの罪の重さ比較を、どのように納得性を持たせて量刑に反映させるかという根源的なところで色々考えさせられるが、更に三鷹の事件では上記のリベンジポルノ問題だけではなくストーカー被害、本事件では誤認逮捕被害が有り、また両事件とも被告は若く更生可能性の問題なども絡んできて複雑になる。もし三鷹の事件が差し戻し審で22年より刑が軽くなったら、更に量刑比較を考えさせられる事態になりそうである)

以上