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 裁判官と適正手続

判決は来年2月4日であるが、さてどのような判断が下るか。
その前に今回の地裁裁判官の訴訟指揮には、適正手続(due process )と言えるのかどうか疑問な点が有る。

(1)保釈申請却下
高裁では認められたとはいえ、本事件の判決も下す地裁裁判官は却下だった。
その顛末を記した江川氏2014年3月4日記事”保釈決定は出たが…”に、高裁の方の保釈決定理由が出ている。長くなるが重要と思うので引用する。
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決定によると、同高裁は
1)弁護人は600点以上に及ぶ検察官請求の書証全部を証拠とすることに同意し、第1回公判で甲号証のすべてが取り調べられた 
2)検察側証人16人の大半は、警察関係者やコンピュータ関係会社の技術者等である。被告人を釈放しても、これら証人予定者に働きかけて自己に有利な証言をさせることは想定し難い 
3)被告人が自宅や勤務先で使用していたパソコンは全て押収されるなどして捜査当局の管理下にあるとみられ、ハードディスク内のデータに被告人の主張に沿う痕跡を作出するのは困難というほかないから、被告人がそのような行為に出る漠然とした危惧は否定できないけれども、実効的な罪証隠滅を図る余地はそれほど大きいとは考えられない 
――などとして、 
「釈放すれば巧妙な手法を駆使し、主張に沿った遠隔操作の痕跡を、自らあるいは他人の通謀して作出し、または他人のパソコンに密かに指令を出して作出するなどの罪証隠滅に及ぶおそれはきわめて大きい」とする検察側の主張を退けた。
さらに、 
あ)被告人の身柄拘束は1年以上と長期にわたっている
い)専門的知識を必要とする本件事案の困難性に照らし、被告人を釈放したうえで、弁護人、特別弁護人との間における十分な意思疎通の機会を確保させる必要性が高い 
――と認定。 
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高裁の理由は真っ当であり、却下した地裁は上記の中にある検察側主張を重く見たことになるだろう。しかし、保釈のリスクは見ようと思えば幾らでも高く見れる。権限の濫用につながりかねない。
ただし、他者に身体的危害を加える恐れがあるような場合は、リスクを高めに見ても国民的理解が得られる場合も有るだろうが、本事件の犯行形態はそのようなものではない。

裁判官は「証拠隠滅」を重視して却下したのだろうか。
しかし、高裁理由にもあるように、600点以上もの証拠に全同意で、検察側は完全に自信を持っていて、偽装メールなど仕掛けられてもびくともしないのではないか。論告においても検察側は「別に彼の自白がなくても、・・・情況証拠で事実関係は充分説明できている」と事実上の勝利宣言のようだったとの傍聴報告がある。

それでも検察側はルーティンとして保釈反対するということだろうが、中立の裁判官までが今回のような状況下で却下決定というのは当方には全く理解できない。
日本の裁判所ではこれが適正手続なのだろうか。高裁で保釈になったので隠れてしまったが、地裁の保釈却下という事態はもっと議論されるべきものだったと思う。

(2)情状鑑定申請却下
これも本来あり得ない決定だったと思う。だが、鑑定の必要性を強く主張していた弁護団までもが、すぐ諦めてしまったようだった。それだけ裁判官の権限が強いということだろうが、このような決定は個人的には到底納得がいかない。
犯罪はただ罰するだけではなく、時には事件から社会が学んで再発防止などに活かすことが必要。本事件の被告人の精神鑑定に税金が使われても、国民に対する納得性は有るだろう。国民目線で考えてもらいたいと思う。

その後行われた私的鑑定も詳細事情は不明だが、鑑定書は証拠申請されなかった。その件はよく取り上げられるが、鑑定が行われなかった根源的原因はやはり裁判官の却下にあり、明確な理由も示されていないのは非常に問題と思う(当方は根源重視)。
以前述べた「『決定的証拠が無かった』と言うことで逆に警察・検察側の問題点を隠蔽してしまう」という件もあるし、前項の保釈問題もそうだが、何が根本要因かということを見逃さずに鑑定却下に対してもっと厳しい目を向ける必要があると思う。

ただし、弁護団も長谷川氏との関係を是非とも修復して頂き、片山氏やご家族の了解を得られる範囲でいつか鑑定書公表を望みたい。

論告求刑に至るまで、公判でハイジャック防止法違反適用に関する論議がなされた形跡は無いと思う。同法第4条は初適用であり、しかも起訴事由中で飛び抜けた重罪なのだから、しっかり吟味することは必須。
何故裁判長は同法適用論議を促さなかったのか。もし弁護・検察双方が不要と言ったとしても、法曹者として職権ででも論議の場を設定すべきだったと思う。法律家なのに法律を軽く考え過ぎではないか、とさえ思えて仕方がない。しかも論告まで適用論議しなかったことは、結果的に検察側に求刑のフリーハンドを与えることになったのではないか。
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以上のように本事件でのこれまでの地裁決定や進め方は常識的に考えて適正とは思えないところが有り、国民目線で見る裁判員裁判なら違った判断になっていた可能性が高いだろう。
しかし、本事件裁判を捌くのは裁判員ではない。上記のような経過からすると、検察側に理解が有る裁判官ではないかと推測せざるを得ず、求刑を重視した判決が下されるのだろうか。

以上
[追記]
「隠れた真実番外編」と云うところまではいかないと思うが、小ネタをご紹介。
自殺予告メールで使われた神奈川新聞であるが、分倍河原を通った際に、片山氏が乗降していたと思われる改札口の駅売店で神奈川新聞は有るか聞いてみたら、「神奈川新聞は有りません」とあっさり答えが返ってきた。しかも口調的には「ここで神奈川新聞?」と云うニュアンスも感じられた。又同駅売店はそこ一つ。

調べると駅住所は「東京都府中市」とのことで、当然東京新聞は置いてあった。
2012年当時の状況は分からないが、このような事情からすると、とても分倍河原駅で神奈川新聞を売っていたとは思えない。確かに丙社(T社子会社)は駅の目の前にあるから、分倍河原駅を使うのは間違いないが、そこで神奈川新聞は入手できそうもない。

分倍河原駅やその周辺での入手説は、神奈川新聞のマイナー度を余りご存じないか、過小評価していたのではないか(同じ首都圏地方紙でも東京新聞とは全く違うレベル)。また、JR南武線は神奈川県川崎市を縦貫しているが、分倍河原駅を含む府中辺りから立川まで東京都になることを見過ごしていたのか。
なお武蔵小杉駅売店で神奈川新聞を売っていることは当方で以前に確認済み。

追記以上
「お知らせ」…明日「隠れた真実13」相当になるハイジャック防止法適用関係の記事を書くと、考えていた内容は書き終わるので、その後当ブログは2月4日判決まで待機に入ります。判決が出たら又書く予定。