水収支の排水超過(改訂版…超過拡大)
前記事の水収支計算では、「工事用仮設ポンプを撤去して降雨浸透量が増大したのは「2016年7月~9月」として計算実施。これは、これまでも紹介してきているように、昨年2017年8月の環境アセス審議会での以下の都側説明があった。これから「仮設排水施設の撤去が7月から8月にかけて行われた」と読み取れたためである。
しかし、同じく昨年8月の「市場問題PT第2次報告書」に当時の状況の詳細記述があり(内容は追記で掲載)、「仮設排水設備を撤去して降雨浸透量が増大したのは、2016年8月9月」と東京都が見ていることが明らかになった。
そのため7月分の想定浸透量を外して再計算した結果、「排出超過への転換」の想定時期が前記事の2017年11月から半年強早まって、2017年4月となった。グラフ化すると以下。
色々な条件、特に浸透率は都想定の「敷地全体で8%」を使用しているが、実測値ではないため排出超過への転換時期も目安となる。
しかし、9月10月の想定浸透量が約38千トンに対して、地下ピットからの汲み上げ量は12月1月で約22千トン。(地下ピットからの汲み上げ排出は2月以降も行われているが、表面に滞留水が無くなったのが1月のため、12月1月を集計してみた…環境アセス審議会が開催された昨年8月までの集計にすると、地下ピット排水累計は約36千トンで、地下ピット排水だけで当初大量流入をほぼ排出し終わっていた)
ポンプ撤去時の大量浸透の半分以上が地下ピットの滞留水に相当。土中の含水ではなく、水そのものだとポンプの排水能力がフルに発揮されて迅速に排水された状況。これで排出超過への転換が早まったと考えると辻褄が合う。
なお、以下の都議会委員会で「2016年8月以降、雨が続くと地下ピットに水侵入を確認していた」ことが答弁された。
<○曽根委員 最初に、主な建物下の地下空間にたまったたまり水についてです。
主な建物の下に盛り土がされておらず、地下空間には大量のたまり水がありました。このたまり水の由来について、雨水によるものか地下水によるものかが、まず最初に問題になりました。東京都は当初、このたまり水は雨水由来だと、繰り返し都民、都議会関係者、私たちに説明してきました。
市場当局として、このとき地下空間のたまり水について雨水由来だとした根拠について、当時どういう根拠で説明したのかお答えいただきたい。
○佐藤中央卸売市場施設整備担当部長 地下ピットにたまった水につきましては、八月以降、雨が続きますと地下ピットに水が浸入していたことから、雨水によるものではないかとのご説明をしてまいっておりました。
その後、専門家会議の座長の指示により、九月十五日に採水して分析を行いまして、九月二十四日に、座長より、地下ピット部の水と近傍の揚水井の地下水に含まれる溶存成分、いわゆる主要イオンの組成がほぼ同じでありますことから、地下ピット部の水は地下水であるとのご判断が示されたところでございます。>
→酷い話であり、共産党都議団から8月末に地下ピット視察要求が出るまで水侵入と滞留水を隠蔽していた。但し、滞留水を発見していて盛土も無しも知っていながら、8月中に農水申請する積りだったのかと考えると興味深くなる。都職員も役人体質の責任回避で、最終的には幹部から知事に上げて判断仰ぎ、移転延期になったと想定するのが妥当そう。結果的に延期は必然で、生田氏らの「小池知事の延期判断」を問う訴訟など全く意味なし。
以上
[追記]
”市場問題プロジェクトチーム 第2次報告書 ”平成 29 年8月10日
1)地下水位が A.P.+1.8m を超過した原因の究明
〇地下水位を目標管理水位(A.P.+1.8m)以下に維持することは、土壌汚染対策及び液状化 対策の前提であり、地下水管理システムは対策の要である。よって、地下水管理システ ムは、地下水位を A.P.+1.8m 以下に維持する性能を有していなければならない。
〇地下ピット内の地下水位は、平成 28 年 10 月の時点で 7 街区建屋外では地下水位が最大 A.P.+5m に到達していた(この時点での 7 街区地下ピットの地下水位は A.P.+2.7m)。
〇地下水位が A.P.+1.8m を超えて建物の地下ピットに侵入した経緯は、中央卸売市場当局 によれば、次のとおりである。
①地下水管理システム稼働前後の排水方法等は、下表のとおり。
②地下ピットに侵入した経緯は、次のとおり。
ⅰ)平成28年7月から8月にかけて、仮設の排水設備を撤去したため、地下水管理システムの本格稼働が始まるまでの2か月程度、十分な排水設備がない状態となっ ていた。
ⅱ)排水設備を撤去した主な理由は次のとおりで、都とJVが協議をした上で都が了 解している。
・仮設の排水設備設置場所の外構工事を行う必要があったこと
・撤去前の降雨量が節水対策を行うほど少量であったこと
・外構工事終了後は雨水の浸透が抑制されること
・地下水管理システムの試運転が間もなく開始される予定であったこと
ⅲ)仮設の排水設備撤去後に、台風到来など降雨量が大幅に増加し、外構工事終了前 に想定以上の雨が差し込んだことから地下水位が上昇したと考えている。
〇平成 28 年 8 月後半の東京の台風関係の降水量は次のとおりである(気象庁)。
・台風第 7 号 平成 28 年 8 月 16 日 09 時~17 日 12 時 47.0 ㎜
・台風第 9 号 平成 28 年 8 月 21 日 21 時~23 日 06 時 106.5 ㎜
・台風第 10 号 平成 28 年 8 月 28 日 12 時~30 日 24 時 58.5 ㎜
〇地下ピットの地下水位が上昇し、滞留したのは、地下水管理システムが本格稼働する前 である。地下水管理システムは、A.P.+2mを超えて水位上昇した地下水を排出する能力 を備えていない。よって、別途ポンプを設置して強制排水を行うこととなった。
〇ここでの課題は、善良なる管理者の注意義務を果たしていれば、仮設の排水設備を撤去 すれば、地下水位が上昇し、地下ピット内にも水が滞留することが分かっていた。
①地下ピット内の水の滞留を想定し、それを是としていたとすれば、地下水管理システ ムは A.P.+2mを超えて水位上昇した地下水を排出する能力がないのであるから、強制 排水を行うことが当然の作業工程として想定されていなければ、地下水管理システムは機能しない。よって、強制排水が事前に工程に組み込まれていなければならないが、地下ピット内の地下水位上昇の確認以降の市場当局の対応によれば、それはなされて いない。
②地下ピット内の水の滞留を想定外の事態とするならば、秋は台風シーズンであり、東 京地方に大量の降雨がありうることを想定するべきであり、東京都の工事管理責任者は善良なる管理者の注意義務を果たしていないこととなる。その責任は明確化され、今後同様の事態が生じないような手立てが講じられなくてはならない。
追記以上