kensyou_jikenboのブログ

yahoo!ブログの同名ブログを移行しました

農水省宛資料2通目

農林水産省 食品産業局食品流通課 武田卸売市場室長様
(続)豊洲市場における地下水の遮水不良に関して
2018103日 kensyou_jikenbo(ブロガー)
先月豊洲市場の数ある問題点の中でも、「法令違反(環境影響評価条例違反)」が発生している「水位問題(地下水位目標未達成)」について状況をお伝えさせて頂きました。
 
その後、9月の多雨の影響により、地下水位が更に大幅上昇する事態になりました。
そのため、①②の二つの観点から改めて状況を説明させていただきます。
 
  設計構想と現状
先ず設計構想を明らかにして、それに対して現状がどうなっているかを述べます。
1)設計構想
■専門家会議(対策の基本方針):
地下水面の上昇を防止し、概ねAP+2.0mの状態を維持するよう、地下水位のモニタリング、及び地下水位上昇時の揚水処理を行っていく(20087月)
■技術会議提言:
集中豪雨や台風時においても、AP+2.0mで地下水の管理が可能となるよう、日常的に管理する水位をAP+1.8mとし、地中に貯水機能を持たせる201611月)
⇒構想実現のために下図の「地下水管理システム」が構築されました。
なおAP+1.8m2.0m間の20cmで貯水を行う構想になっていますが、この仕様を決めるにあたって都は、「過去140年間分の降雨データを調査して、最大降雨量でも対応できるようにしてある」と説明しています。
イメージ 1
(2)現状
まず、前項図(左端)記載のように2つの管理水位が有ります。
(ⅰ)日常管理水位:AP+1.8
(ⅱ)集中豪雨時管理水位:AP+2.0m
このでずっと来ていましたが、本年730日の(新)専門家会議「追加対策工事に関する確認調査結果」の記者会見において、前回報告でも言及しましたように、平田座長は突然「AP+2.4m」という数値を持ち出され、以下のように3種類の水位を説明されました。
イメージ 2

新たなAP+2.4m水位の妥当性はさておいても、突然基準を緩和するやり方は、「結果に合わせて基準を変えても、とにかくOKにしてしまいたい」という意図を感じざるを得ません。
 
また、意図の問題も一旦不問にしたとしても、現在は以下のようにAP+2.4mも超える地点が多発しています。
101日と717日の水位データ比較
青色:1.8m以下黄色:2.02.4m 赤色:2.4m超…各街区11地点で合計33地点)

イメージ 3

一目瞭然で赤色が増えているのが分かります。地点数の内訳を評価して見ると下表のようになり(上図左下拡大)、101日分は大幅悪化です。
イメージ 4
 
それに対して、717日データは平田座長らが「効果確認OK」とした根拠であり、その際も2.4m以上で赤色相当の地点が1地点(下表6-①)あったのも、もっと注目されるべき問題でした。それが101日には8地点に増加では、もはや効果確認は破綻しています。
 
しかも、これらの観測データは「ウェルポイント工法(WP)」で水位を抑えた状態での測定です。都と専門家会議も、そのことは分かっていて、下表のように719日にWP停止での測定を行っています。

イメージ 5
WP停止すると水位が上昇するため、現状でも実際の水位を確認するために「WP停止での再測定」が必要ですが、都と専門家会議にそのような動きは無いようです
 
また、WP工法は本来工事期間中に水位を下げて、工事をやり易くするために用いられることが多いのですが、豊洲市場では強引な水位低下策として、高水位の観測井戸の周囲を狙い打ちして設置しています。
 
7街区7-①観測地点周囲のWPの状況を示します(同観測井戸近くには特に密に配置)。
イメージ 6
これだけ露骨に狙い撃ちしても観測水位を下げようとしているにも関わらず、7-①は101日の水位3.09mで、2.4mどころか3mも超えています。
 
なお、水位上昇は降雨と連動していると考えられますが(但し単純な連動ではない可能性有り…後述)、前10日間の気象庁降雨データは以下であり、1日当たりの降雨量は50mmを超えた日もありません。何十年も使用する市場において、今後はもっと降雨が多い状態が出てくることは確実です。
イメージ 7

このように、強引なWPでも結局は高水位を抑えきれず、降雨はもっと多くなるのですから、水位管理は破綻しています。昨年の環境影響評価審議会への「変更届」の内容に対する相違が更に明確になり、環境影響評価条例違反です。
 
また専門家会議の効果確認は無効となり、その確認に基づいた小池知事の「安全宣言」も、もはや虚構になっています。
 
更に、地下水位管理は汚染問題だけでなく、以下のように液状化対策にも密接に関連している点でも重要です。

2012314日都議会予算特別委、中西中央卸売市場長回答
液状化は地盤に地下水がある場合に起きる現象ですが、豊洲新市場では、地下水位をAP二メートルに管理し、その上に液状化を生じない層を少なくとも四・五メートル確保することとしております。」

■平成29年8月10日 市場問題プロジェクトチーム委員 時松 孝次氏
「地下水位を A.P.+1.8m に維持することで、液状化しない表層厚さを 4.7m 確保することにより(液状化対策の効果は)担保されている。」
 
⇒しかし、730日会見資料「追加対策工事等に関する確認調査等の結果について」では「液状化対策」には言及が有りません。
 
  8月分を含めた排水量
先月資料で添付した各街区ごとの水収支(=想定降雨浸透量-公表排水量の累計グラフに、8月分を追加しました。
イメージ 8

 7月に追加工事が完了しましたが、その後も同じような傾向で排水超過になっています。また、8月は月間降水量が33mmと少なく、少雨状態でも排水超過の増加が継続する結果になっています。
 
原理的に考えてみますと、豊洲市場の敷地は、側方の遮水壁と底面の難透水層でプールのようになっています(プールモデル)。水の出入りは以下の様にシンプルになり、概念図も示します。
流入:敷地内への降雨が地下へ浸透する水量(東京都想定は敷地全体で降雨量の8%浸透)
■流出:揚水して水質改善処理を行って排出する水量(約600トン/日の処理能力)(蒸発は無視、蒸発を含めると更に流出が増加)
イメージ 9

 非常にシンプルな構成になります。豊洲市場の現状のように、排水超過(流出量>流入量)の状態が続けば、当初に入っていた水量が少なくなって行きます。いずれは水位低下限界に行き当たります。上図の場合は蛇口の遮水高さを限界として描いていますが、蛇口を例えば底面に付けたとしても、原理的にプール底より水位が下がることは有りません。
 
豊洲市場の場合は日常管理水位AP+1.8mを維持するために、前掲の地下水管理システムにおいて水位を確認しながら、水位上昇時には揚水ポンプを起動して揚水を行い、水位が下がるとポンプを停止する制御を行っています。
 
但し、水位が当初想定通りに下がらない事態になって、都はポンプを停止する水位の設定を変化させており、前述の「水位低下限界」がハッキリしません。しかし、排出超過が続いていけば、どこかの時点で限界水位に達して、その後は流入量と排出量が釣り合った状態で推移することになります。
 
それに対して、前掲グラフのように、特に6街区では排出超過が長期継続しています。それでも80日間の暫定稼働予定だったWPを、期間経過後も稼働継続せざるを得ない異常な事態になっています。都は「いつごろ低下限界に達して、WPも停止して本来の日常管理状態に移行できる見込みなのか」について説明する必要が有ります。
 
しかし、都は、高水位の原因を詳細調査していないため、状況把握できていない可能性が有ります。そのため前掲のグラフなどから状況を推測してみますと、特に6街区の累計排水量2016年末には排水超過に転換した可能性が有ります。
 
本来はその時点で地下水管理システムの水位低下限界に達して、その後は日常管理水位AP+1.8mを維持するために、降雨浸透量の分を排水していけば良いことになります。この場合、水収支(想定降雨浸透量-公表排水量)は、概ねプラスマイナスゼロが続いていくことになります。しかし、2年近く経過した現在も排水超過が続いています。 
 
結果として、「排水超過分は、一体どこからの水を排水しているのか」という疑義が発生します。プールモデルが成立していれば、敷地内降雨の浸透しか流入は無いので説明がつきません。結果的に、底面や側面のどこかの箇所で遮水不良が発生していて、プールモデルが破綻して、外部からの地下水流入が発生している可能性が出てきます。
 
なお、「水位上昇は降雨と連動していると考えられる」と前述しましたが、降雨による浸透以外に、もし外部からの地下水流入が有れば、それも地下水位に影響することになり、高水位も単に敷地内への降雨の影響だけとは言えなくなります。 
 
このように水位に関して色々な影響が考えられるにも関わらず、都と平田座長らは「とにかく何でもOK」になるように突然基準を変えてでも強弁することに終始しており、この姿勢が最大の問題と思われます。特に平田氏は科学者としての矜持が感じられず、今後別の専門家による再調査が必須と思われます。
 
以上
[追記]
責務有太郎@sekimuyuutaroo」さんのツィから引用させて頂きました。
https://t.co/Iv7vQpddAy (各務さんの引用ツィから再引用)
 
なお、農水省から特にリアクションなどは有りませんが、後々深刻な状況が判明してきた際に、「知らなかった」とならないように状況を知らせておくことが重要と考えています。
 
追記以上