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水収支の試算と見えて来たこと

中央市場で公表されている2016年8月~2018年6月までの「排水量」データから水収支の試算を行ったので、考察も含めご紹介。

対象期間が長いので、4分割して計算結果の表を掲載する。計算に使用したデータや計算の仕方は以下のようになっている。(①~④は計算結果表の下部の行と関連する)

①:揚水量は中央市場HPの公開データ参照 「豊洲市場に関する環境データ」
②降雨量は気象庁HP(江戸川臨海
③浸透想定量は以下計算による
 ■敷地全体面積(407,000㎡)x 降雨量 x 想定浸透率(0.08) …浸透率ゼロ想定の建物部も平均した敷地全体の想定浸透率が8%(都の想定値…追記で補足説明)
 (「2016年8月と9月は外構工事完成前に工事用排水システムの撤去で水位が上昇した」というのが都側の説明のため、この両月に関しては以下計算とした…想定浸透率は当方独自仮定あり
●2016年8月想定浸透量㎥ = 敷地面積(407000㎡)*外構部面積割合(0.5)x 降雨量(0.2055m)x想定浸透率(0.5)
 →計算根拠:(1)外構部面積:建物と外構の割合は約半々なので、407,000x0.5 、 (2)降雨量;気象庁データ 、 (3)想定浸透率:外構部は10月17日完成で8月は工事進行中。そのため8月は外構の半分程度完成と想定し、更に完成/未完成で浸透率を分けて考えて、「外構完成部0.15、未完成部0.85」として中間の「0.5」とした。
●2016年9月想定浸透量㎥ = 敷地面積(407000㎡)*外構部面積割合(0.5)x 降雨量(0.2705m)x想定浸透率(0.3)
→計算根拠:(1)(2)は上記と同じ、(3)は10月17日外構部完成で9月は殆ど完成に近い状態ととなり8月の0.5より想定浸透率を下げて0.3としてみた。
●2016年7月想定浸透量㎥ = 敷地面積(407000㎡)*外構部割合(0.5)x 降雨量(0.0875) x 想定浸透率(0.7)
→未舗装部は緑地の浸透率を参考にすると0.85だが、7月時点でも部分的に舗装されている写真があるので想定浸透率0.7としてみた。なお、都は「7月から8月にかけて都と施工者が協議をし、都が仮設排水の撤去を了承した」と都議会で答弁している(移転問題特別委員会2016年12月2日)。これだと工事用排水ポンプが撤去された正確な時期は不明で、7月も仮設排水が動作していた期間が存在する可能性有り。そのため7月の想定浸透量はもっと少なくなる可能性があるが、現段階の試算では7月も仮設排水無しで想定しておく。

計算結果表」…④水収支が赤字になっている月は「排出超過」を表す
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[考察]
詳細は今後さらに検討していくが、今回の試算の総合的結果として、水収支の総計を考えてみる。(水収支総計は上記の計算結果表4枚目右下にあり)

■水収支総計は「43,983㎥=約44,000トン」の「排出超過」になっている。
⇒排水(揚水)能力は足りていた!

また、途中段階の水収支も累計してみると以下の結果になった。
■水収支の累計を行っていくと、「2017年11月には排水超過が始まっていた」。
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⇒東京都は昨年2017年8月28日の「環境影響評価審議会」において、水位が下がらない状況に対する委員からの質問に、アセスメント担当課長が次のような趣旨の回答をした。
<地下水をA.P.+1.8mに管理できなかった原因は、平成28年7月から8月に仮設の排水設備を一時撤去せざるを得ない状況になった時期があり、地下水管理システムの本格稼働は10月からで、この時期に台風等の影響により相当量の雨が降ったことから、地下水の水位が上昇したものと市場局の方では考えている>
⇒しかし、現状の2018年8月は、2016年8月からは既に2年が経過。
それでも現状約半数の観測地点で「日常管理水位AP+1.8m」を達成できない状態が続いている。
「東京都としては、日常管理水位が全体として未達成な状態の原因を、未だに2年前の水位上昇の影響と考えているか?」という疑義が生じる。

結果的には、上記の「排出超過への転換」が既に昨年から生じていたことから考えると、2年前の影響からは既に脱していると考えられる。
そうなると、現状で排出超過になっている水は、一体どこから来ているのか?

東京都は見学会における地下水管理システムの解説動画で「豊洲市場の敷地はプールのようになっている」と説明。プールモデルであればシンプルで、流入は「敷地内降雨の浸透」しか無い。しかし、現実的に、想定流入量より多い排出量になっているということが上記試算で明らかになり、以下の事態が見えて来た。

■プールモデルが破綻していて、外部流入が発生しているのではないか
「破綻モデル例」
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→「遮水不全」の可能性。上記環境アセス審議会で東京は「遮水が出来ている」と説明したが、それに反しており、「環境アセス条例違反」の状態になっている。

また条例違反だけでなく、遮水は豊洲市場の環境汚染対策の根本であり、遮水を前提として汚染対策が組み立てられている。例えば、豊洲市場の周囲には未対策の高汚染が残っている区域が有り、遮水で侵入を防ぐ設計構想になっている。

しかし、先日の「追加対策効果確認の記者会見」で、専門家会議と東京都は遮水不全の可能性として「底面からの流入」に関して記者から問われたが、両者とも「検討していない」とのことだった。
だが上記データ検証から見えて来たように「外部流入」の検証はもはや必須。そして調査のためには開場の再延期が求めらると言わざるを得ない。

なお、試算段階ですので、皆様からのコメントや不明点など有りましたら、検証してみますのでお寄せ下さい。

以上
[追記]
浸透率の関しては、過去の経過の中で色々な数字が出ているが、再招集された新専門家会議で少なくとも2回、浸透率「8%=0.08」が示されている。
都の設計構想を吟味するには、都が提示している中で、なるべく新しい資料の数値が適切と思われ、想定浸透率は8%として本文では計算している。

(1)第2回専門家会議(都側計算資料)
イメージ 6

(2)第6回専門家会議後の平田座長記者会見(2017年5月)
全体として東京都が見積もっているのは8%が地下浸透すると考えている
⇒「全体として」ということで、「敷地全体で浸透率8%」と考えると、前項(1)と合ってくる。

なお、8%がどこから出て来たかは、以下のように推定している。
都は、全体敷地の約半分を占める「建物部」の浸透率をゼロと見ている。それ以外は「舗装部」と「緑地部」になる。舗装部の浸透率の都想定は15%。
緑地部のベントナイト混合土層追加後の最終的浸透率は資料が無いが、仮に舗装部と同様の15%とすると、建物部以外は15%となる。建物部がゼロ%で、割合が半々だから均して「8%」と考えると辻褄が合ってくる。

追記以上