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土壌汚染対策法と豊洲(検証追加)

昨日記事のまとめをツィートして頂いた方があった。当ブログで述べたかったことの要点そのままなので引用させて頂く。世の中には仕事が早くて的確な方がおられると改めて感心。

----「yocibou (よしぼ~)」さん ツィート引用開始----
■kensyou_jikenboのブログ(1);
(1)土壌汚染対策工事は完了しているのか?
(2)届出と違った仕様で建ってしまっていたら建物はどうなるのか?
(3)現状の地下空間は土対法の規程に適合しているか?
■kensyou_jikenboのブログ(2);
(1)土壌汚染対策工事は完了しているのか?
もし、全面盛土で届け出てあったら虚偽記載で土対法違反だろう。同法は「環境影響評価法」とは違って罰則もあり、都庁内処分では済まなくなる。
■kensyou_jikenboのブログ(3);
(2)(もし)届出と違った仕様で建ってしまっていたら建物はどうなるのか?
もし全面盛土で届け出られていたら、現状は違う仕様で建ってしまっている。、、、現状がそもそも土対法を満足していなかったら変更申請も出来ない
■kensyou_jikenboのブログ(4);
(3)現状の地下空間は土対法の規程に適合しているか?
現状の地下空間においては「遮断」が出来ておらず、土対法に適合していないと思われる(当方個人的見解)。
外部との遮断がない点でも土対法違反に当たるのではないか(個人的見解)。
----引用終了----

これに基づいて追加検証。
まず、昨日の図で土壌汚染対策法(土対法)の区域指定は①と②の2種類。加えて区域指定ではないが、区域の状態として「汚染物質無し(除去済)」を③(下図右)としてみる。これで上記まとめの項目(1)~(3)を検証する。

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(1)土壌汚染対策工事は完了しているのか?
「もし、全面盛土で届け出てあったら虚偽記載で土対法違反だろう」
→「盛土無し」で申請することも可能なことを見い出した。「汚染物質除去」のみで届け出て実施すれば、① → ③ と一気に飛んで解除可能かも知れない。

東京都はHPで解除情報を掲載していないが、別の自治体(札幌市)の事例がある。

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掲載12件中「盛土」は1件で残りは殆ど「基準不適合土壌の掘削除去」になっている。盛土の例は、元が①なので②に移行したと思われる。結果的に、①から掘削除去で③になった例は載っていない。それでも札幌市の場合を紹介したのは、「掘削除去 + 盛土」という複合対策の記載は一つも無かった。豊洲も「掘削除去」だけで届けている可能性は残る。ただし、豊洲は汚染除去しても③にはせずに②にしている…②でモニタリング中が現状。

それを考えると、届け出には「盛土」も入っている可能性は有り。②にしているのは盛土で遮断しているからと云うことになる。その場合は全面盛土か、建物下は盛土無しか。

豊洲は2種類の対策を行っていて、しかも一部実施してなかったりで、組合せが発生してややこしい。結局まずは届出書類で確認するしか無い。専門家会議などで迅速にやっていただけると良いのだが。

(2)(もし)届出と違った仕様で建ってしまっていたら建物はどうなるのか?
もし全面盛土で届け出られていたら、現状は違う仕様で建ってしまっている。 
→これは土対法でどう扱われるか分からないが、変更申請の問題として次項(3)と一緒に検証。

(3)現状の地下空間は土対法の規程に適合しているか?
現状の地下空間においては「遮断」が出来ておらず、土対法に適合していないと思われる(当方個人的見解)。
→①と②の違いは、「摂取経路の遮断」。この点で盛土の意味は大きいのだが、現状空間全肯定派(以降全肯定派)の識者らは簡単に考え過ぎておられるように思う。

ただし、ここで疑問になるのが、下図のように豊洲はAP+2.0mより下は「環境基準を超える汚染物質は確実に除去」となっている。

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これだと、「遮断」の必要はなく、盛土も不要。これが全肯定派の方々の重要論拠の一つにもなっていた。例として橋下氏の見解を挙げる。

<・・・の対策で豊洲の土壌と地下水の汚染物質は完全に除去される。じゃあ盛土やコンクリートは何のために必要なのかと言えば、「念のため」の対策である>
→この記事の後、9月29日報道により「8月末の測定で基準値超のベンゼンヒ素が検出された」ことが明らかになった。更にその後、地下空間での測定でも鉛が検出された。この状態で「基準超え汚染物質除去済み」と言えるのだろうか。橋下氏の見解は分からないが、測定で出ているのだからAP+2.0m以下に基準超え汚染物質が残っているという前提で以降の考察を行ってみる。

橋下氏は上記引用に続けて、「念のため」の部分を更に詳しく述べている。
<汚染物質の完全除去対策を行った後、その上部を盛土及び堅固なコンクリート床(これは問題となっている地下の床の砕石層=砂利部分ではなく市場建物の床部分=地下の天井)によって覆うので、汚染土壌の曝露による人の健康リスクは「より確実に」防止される>
→盛土はないから、1階のコンクリート床での遮蔽(遮断)となる。しかし、1階床と砕石層の間に地下空間がある。佐藤PT委員曰く「今回の市場は350m×200mとか非常に巨大な空間」で、高さも4mとかある。この巨大空間が、橋下氏も使っている言葉で表すと、「汚染土壌の曝露」に晒されている。同氏や他の全肯定派識者は、この空間の曝露リスクは無視している場合が殆ど。

しかし、頻度は少ないが地下空間にも人が入っている。今後もモニタリングやメンテで入ることになる。それに対して、土対法では厳格な「立入禁止」が求められる。環境省の説明資料を示す。

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土対法が実際にここまで求めているかどうかは不明だが、所管官庁の資料であり、同省がこのような認識という事実は重い。現行の地下ピットの立ち入り管理は早急に考え直す必要があるだろう。シートを被せることも必要なようである(今は水が溜まってしまっているが)。
また、上記資料で「土地を全く利用しない場合」となっており、「遮断」が無い場合は厳しい見方をされる。その上で、配管スペースやメンテ用に使うのは充分「利用」に当たるようにも思える。ただ、基準値超えの範囲や程度なども勘案する必要が出てくるだろうし、解釈だけでも非常に厄介。ちなみに、民間の建物でこのような状態だったら、行政は立入禁止や何らかの是正を求めるのではないか。東京都の姿勢も問われる。

(1)~(3)に関して以上だが、土対法はロードマップ最終段階の「農水省認可」にも関連してくる。農水省の認可にあたっての考え方が以下の資料で出ている。非常に重要と思うが、小池氏は会見で言及しなかった。

食料・農業・農村政策審議会 食品産業部会(平成23年3月25日) 配布資料

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「想定し得ない」と微妙な表現になっているが、想定しないとすれば「形質変更時要届出区域」のままでは農水省は認可しないということになる。しかも、8月測定の基準値超えで、(自然由来除く)指定解除は少なくとも2年以上先になった。東京都は、この事態について農水省と話をしているのだろうか。また、土対法の解釈もあるだろうから、環境省との調整も必要か。
もし、東京都がまだ話をつけられていないと、小池氏が言及しにくいのも分かる。(なお、平成23年の資料だから、状況が変わっている部分は有るかも知れない)

加えて、上記のように「市場建物ほぼ全域の地下に土対法に基づく巨大な立入禁止空間が広がる」という状態で認可できるだろうか。ただし、何らかの対策工事等で立入禁止は不要にすると思われるが、少なくとも全肯定派が英知とか盛土より良いと絶賛する現状空間のままでの認可は難しいのではないか。

対策工事としては、専門家会議の話からして地下空間は「換気」することが予想される。換気系統の設計・施行も難しそうだが、巨大空間だから簡易的な換気塔のようなものも必要かも知れない。フィルターをがっちり付けるとしても、外部排出にあたっては環境アセスが避けられないだろう。アセスは全部やり直さないにしても、部分的やり直しになる可能性は高いように思える。

対策で、空間の底面処理追加が必要になる可能性も有る。この場合は、工事内容にもよるが「地階」扱いかどうか等で建築基準法における問題も出てくるかも知れない。

全体を合わせるとロードマップ遂行には、ステップ1:「土対法」、ステップ2:「環境影響評価法」、ステップ3:建築基準法?、ステップ4:「土対法と農水省認可」など、環境技術的なハードルが並ぶ。もちろん補償問題など他にも難題山積だが、当方から見て上記だけでも殆ど「詰んでるのではないか」という難局。

専門家会議・市場問題PT・小池知事の三位一体などで、どのように取り組んで行かれるのだろうか。特に平田氏ら専門家会議が土対法に抵触しないような解釈や対応策を見い出せるか。

以上