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土壌汚染対策法と豊洲の汚染対策(論点整理)

昨日記事で土壌汚染対策法(土対法)に基づく検証を行ってみた。同法に照らすと、豊洲の対策のやり方は問題がありそうなことが分かってきた。ただし、「東京都の前に東京ガスが対策工事を行っていた」という条件がある為、昨日記事は削除して本日改めて検証実施。

東京ガスの工事内容詳細は分からないが、同社の対策により既に「形質変更時届出区域」になっていたという前提を置く。その上で検証を行ってみて、以下のような論点が抽出出来た。

(1)土壌汚染対策工事は完了しているのか?
→2014年11月「第18回技術会議」において、「土壌汚染対策工事(以降対策工事)が全街区で完了した」ことが確認された。しかし、実際に完了していたか疑問が出てきた。皆さんもよくご存知のように、完了確認時点では建物下は盛土がなく以下の状態だった。
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対策前も「形質変更時届出区域」とすると、対策工事を新たに行うには文字通り届け出が必要。その際には豊洲に関する東京都のパターンからすると、「全面盛土」の仕様で届け出ていた可能性が高いのではないか。そうなると上図の状態では完了ではないし、最終的にも盛土無し。
もし、全面盛土で届け出てあったら虚偽記載で土対法違反だろう。同法は「環境影響評価法」とは違って罰則もあり、都庁内処分では済まなくなる。影響は大きいので、どのような届出内容になっているか、確認の必要あり。

(2)(もし)届出と違った仕様で建ってしまっていたら建物はどうなるのか?
→前項(1)では、届け出の虚偽記載の可能性を検証したが、もし全面盛土で届け出られていたら、現状は違う仕様で建ってしまっている。届け出の変更が認められるか、行政との折衝になる。事前打合せが早急に必要だろう。また、現状がそもそも土対法を満足していなかったら変更申請も出来ないので、次項で検証。

(3)現状の地下空間は土対法の規程に適合しているか?
→これが難題。土対法の概要は以下のようになる。指定区域は、①「要措置区域」と②「形質変更時届出区域」の2種類。
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ポイントは「摂取経路の遮断」。「形質変更時届出区域(②)」は、この遮断が必須。また、遮断の方法としては、「50cm以上の盛土」か「10cm以上のコンクリートアスファルトも有り)」がある。
そして、豊洲建物の場合は、建物下(内部)での遮断と、建物外(外部)との遮断の2種類の経路が考えられる。

内部…地下空間内における遮断
地下空間には地下水は入って来ているし、地下水由来と見られている基準値以上の水銀も検出された。「遮断」はされていないことになる。
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また、AP+2.0m以下は汚染物質が除去されたことになっているが、水銀の基準値超えで無視できなくなった。更に、地下空間には殆ど人が入らないといっても、土対法上は立入禁止にするか対策が必要と思われる。揮発性物質だけでなく、「砕石層だけで土壌の遮蔽になるか?」という問題もある(これは長谷川猛氏が指摘していた)。
結果的に、現状の地下空間においては「遮断」が出来ておらず、土対法に適合していないと思われる(当方個人的見解)。

外部…建物外との遮断
建物外周は遮断が出来ていないと考えられる。実際都職員が当初「地下の水たまりは雨水」と言っていた。実は地下水だったが、職員は雨水が入ることを知っている。気密性はないだろう。
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しかし、専門家会議の議論などでは「地下から上ってきた揮発性汚染物質が建物内に入る危険性」が考えられていた。それに対しては、建物外周だと建物内には入りにくく、問題としては低くなると見て、それ以上は検証してこなかった。だが、土対法だと単に「遮断」となっていて、外部も対象になることが想定される。それが出来ていない現状は、外部との遮断がない点でも土対法違反に当たるのではないか(個人的見解)。

もし外部との遮断が必要になると、専門家会議で話が出ていた「換気」による対策だけでは済まないかも知れない。換気用のフィルターで建物内外を分離するという考え方も出来るかも知れないが、解釈の問題になってくるから一概にOKと言えないだろう。
また、前項の地下空間で底面の防水対策も必要になる可能性あり。鉛検出により地下水からの気化対策は必須と思われる。これも気化した汚染物質を換気して済まそうとする場合は、それでOKかどうかの論議が必要。

結果的に、対策のグレードアップが求められてくる可能性あり。設計・工事期間が厳しくなり、コスト問題も出てくる。土対法問題は影響範囲が大きく、最優先で取り組む必要があると思うが、関係者が気がつくかどうか。

他にも土対法から考えると問題が出て来て、例えばモニタリング期間。前述のように2014年11月段階では対策苦工事は完了していないと考えられるのに、モニタリングを始めてしまい、そこから2年間で今年11月終了予定にしていたことになる。しかも、盛土無しで1階床コンクリートで遮断と主張する場合も、少なくとも1階床が今のような形になるまでは工事完了とは言えない。完了前の期間のモニタリングは有効と認められるか。もし、有効でなければ、全箇所延長が必要になってくる。
また、平田氏は8月の測定で基準値超えが出たことに対して、「超えた箇所は、もう2年間モニタリングが必要」と明言されていた。これに関する考え方もまだハッキリ打ち出されていないと思うが、そのような状況で専門家会議の報告を4月メドとした小池氏会見は、事前にどこまで詰められているのだろうか。

以上
[追記]
土壌汚染対策法は本文で書いた内容以外にも、豊洲の問題の根本に影響を与えている。
特に「土壌汚染対策法改正」への対応が失敗の大きな要因と見る。改正対応により2年間のモニタリングという普通の建物にはない作業が発生した。そのために観測井戸設置と地下水採取用のスペースが必要になった。それを「モニタリング空間」として配管スペースと共用の空間としたところまでは或る程度妥当性があった。しかし、ミニユンボ作業空間を持ち込んだことで、非常に大きな空間が必要になった。無理が発生して、おかしくなったと思う。

また、本来のやり方と云う点では、全面盛土も行って土壌汚染対策工事が本当に完了した時点から、2年間モニタリングを行って安全を確認してから建てるという段取りが必要だった。期間は長くなるが、理想論ではなく実際にこうしないと、今回のような問題が起きたら収拾つかないという実例が有る。

追記以上