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調査報告書4…2009年1月13日資料の地下構造案(4種類)検証

昨日記事にペコさんからコメントを頂いた。
(フーチングは)実質柱なんですが、名前を「柱」にしてしまうと「地階の」柱ということになってしまいます。そこは何が何でも「基礎(フーチング)」にしておかないと。
ちなみに「フーチング」の断面算定は「柱」的になされています。

また、「既成杭」を扱う関係者の方からも専門的なご意見を頂いた(本日追記に転載)。
それぞれ貴重な示唆があった。現在の「特殊な構造」につながる経緯解析として、昨日取り上げた公表資料「2009年1月13日付資料」の図面を更に詳細検証してみたので記録に残す。

----図面詳細検討----
[A案] ( 「 」内は図面記述や注記、→ 以降は当方補足や見解等)

イメージ 1

①「A案(地中梁なし案)」→A・B両案表題の違いは「地中梁」の有無。これが重点で検討されたことになる。
②「AP+2mより下に基礎をつくらないため、こちらの案(A案)を推奨する」→「AP+2mより下に基礎をつくらない」ことが重視されていた…理由推定は後述
③「フーチン2m角ぐらいは必要」→地中梁が空間下部に無いと、強度を持たせるためフーチングが大きくなる…柱間が12x18mと書かれていて、それからフーチング寸法を以下のように概略で求めてみると、4m弱角ぐらいありそうだが、これは流石に大きすぎるか?
イメージ 2

④「郡杭 杭径は小さくなる」→ 一つのフーチングに杭4本の構想
⑤「柱と柱の間に杭は設けない。12mx18mの柱の位置のみに杭を設ける」→柱と柱の間に杭が無いのは当たり前と思えて、記述の真意は不明
⑥「GL」→グランドレベル、1F床はGLより少し上がっている
「(説明無)」→梁を表していると思われる
⑧「砕石 AP2000 AP2500」→砕石層厚みは50cm
「(説明無)」→A案は基礎梁が下部にないので⑨は基礎梁を表す? 但し斜線が施されているので、例えば「ミニユンボが使用できない高さや空間」を表す意味などもあるか?
⑩「2000(=2m) ミニユンボの作業空間 H=3mはほしい」→2mでは使用が難しいということになり、現状も基礎梁の大きさから考えると使用は無理と想定される
⑪「観測井戸」→ミニユンボ使用は無理でも、指定解除用のモニタリング用井戸(観測井戸)は必要。現在どのように設置されているか確認必須。地下視察の議員さんらには、これにも目を向けていただきたい。
「(説明無)」→基礎杭
⑬「この空間を建築指導や消防が地下階と見なすかどうか」→地下有りにしたくない意向は相当は強かったと推推察。理由は次項が考えられるが、「それまでの企画検討で、ずっと地下がないことで来ていた」という背景も影響していたかも知れない。
⑭「避難階段その他の施設・設備が必要になるかも、確認する必要がある」→施設・設備の追加による工費・工費増を回避したかったか
⑮「マシンハッチだけでなく点検口も必要」→「マシンハッチ」はミニ重機以外に、どのようなマシンの想定があったか? 「点検口」の方は今まで話が出ていないと思われ、何の点検用か不明。
⑯「作業は工事用ファンを送れば十分」→工事中の換気対策か(地下で風が通らない空間になる)
⑰「基礎フーチングの間に梁がなく改良しやすい」→何の目的で、どう改良するのだろうか?
⑱「フーチングを下げる必要がなく、根切り深さは浅くて良い」→AP+2mの下は触らないという方針に適合
⑲フーチングが大きく、杭本数がB案に比べ多くなる」→コスト的にB案とどういう比較になるか(コスト面は重要だが、この検討図面にはコスト関連の記述は見られないようだ)
⑳「根切り底を地下水位より上で止めることが出来、工事がしやすい」→妥当と思われる

[B案]
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㉑「B案(地中梁有り案)」→本来B案の構成の方が強度を出しやすく、フーチングも小さくできると考えられる。しかし、結果としてはA案が推奨されている
「(説明無)」→フーチングと考えられる
㉓「「地中梁」→フーチング間を連結していると想定される。フーチングと共にAP+2m以下になっているため不採用になったと思われる…理由詳細は次項
㉔「AP+2mより下に基礎が入ると土壌対策工事との責任範囲が不明確になる」→AP+2mより掘り下げると土壌対策を行った部分に食い込む。そのため建築側はAP+2mより上の砕石層と盛土の部分を使用する意向になったと推測…更に次項も理由の一つか
㉕「PFI上。リスクが不明確」→土壌対策だけでなく、PFIを行う場合もAP+2mが責任分界と考えていた?
㉖「柱の曲げモーメントを、基礎梁で負担する為、フーチングを小さくする事が出来る」→B案の方が構造的に理にかなっていると思われ、フーチングを小さくするという簡素化もしやすい
㉗基礎梁がある為、根切りをする範囲が全体に広がる」→「根切り=構造物をつくるために地面を掘り下げて所要の空間をつくること」であり、建物下全体を掘り下げる必要がある点をデメリットと見ている…AP+2mから建てる今回の場合は、既に全体が根切りされていた状態
㉘基礎梁に囲まれた部分がある為、基礎梁天端を砕石レベルにする必要があり、根切り深さが深くなる」→これもAP+2mより掘り下げることを示している
…別の考え方として、フーチングと基礎梁をAP+2mより上に作り、基礎梁天端まで土を盛って平らにする。そこから空間天井までを配管スペースに使用する。この方が通常の地下基礎工事のやり方では無いだろうか。
配管スペースとともにモニタリング空間も確保できる。重機使用は元々無理ということで考えなければ、一番妥当な手法ではないか。これだと2m程度の盛土も可能になると思われるが、最終的にはやはり「揮発性汚染物質(ベンゼン等)」の遮蔽性能を持たせられるか?という点がネックか、
なお、「1階床の厚いコンクリートがあるからOK」という見解の場合は、少なくとも「建物外周等で気密性が保たれていない」という課題をクリヤする必要が有ると思われれる。
㉙「根切り底が深くなり、一部の工事が地下水面下の工事となる」→これまでの項目と同様だが、「AP+2mより掘り下げる」ことは問題が多く論外と思える。(基礎杭を除いて)AP+2m以下に手を付けることを検討対象にしたことさえ疑問。ただし担当者には何らかの意味があったのかも知れない。それでも外から見ると意図不明。PTは解明してくれるか。
㉚「工事中の地下水の処理、モニタリング方法を別途考慮する必要あり」→地下水面以下の工事すると問題になる事項

[Case-1]
イメージ 5

㉛「Case-1」→A・B案とは別のルートや機会で検討されたものと推測される。他にも検討資料は存在するだろう。A・B案も含めて、コンサルや設計会社の関与調査は必須。(本日N建設計に関するニュースも出た…[追記]に記載)
㉜「5街区 1階床高=GL(AP+6.5m)」→青果棟の1階床面は地表面と同一の設計
㉝「マシンハッチ」…ミニ重機は使用しなくても、他の機械や資材の搬入は有ると思われる
㉞「4000」→AP+2mの上に砕石層0.5mがあり、1階床面がGLなので、地下空間高さは4m(=4000mm)。現状も同様になっていると想定される。
㉟「地中梁」→地下空間上部(=1階床下)に高さ約2mの地中梁(基礎梁)がある。その下にミニユンボが書いてあるが、「作業空間高さ3mは欲しい」とA案で注記があり、2mでは使用困難と思われる。この状態でもポンチ絵が描いてあること自体が不思議。また、その後は更に配管等が張り巡らされ動きがとれ無さそう。
「(説明無)」→フーチングと思われる。ただし、A・B案のフーチングとは形状が違って2層構成? また、フーチング底面が砕石層上面(AP+2.5m)より更に上(+0.5m=AP+3m)になっている。意図は不明。
㊲「モニタリング空間」→これは必要にせよ、「ここまで大規模に考える必要があるか?」という点は昨日紹介の川柳が見事に表現。モニタリングの件は別立てで後述。
㊳「「6街区 1階床高=GL+0.7m 、7街区 1階床高=GL+1.0m」→6街区と7街区は、この図面では1m程度の高床式想定か
㊴「配管スペース」…明確に分離された配管スペースになっている。重要なことは、この時期にも配管スペースの必要性を認識していた図面があったという事実。ただし、A案注記のように「地下室」と見られる等の理由で採用できなかったと推測される。又地下室関連の課題をクリヤできれば、この配管スペース下の空間へ㉘項と同様に2m程度の盛土は可能かも知れないが、やはり隙間無し盛土の問題は出る。
「(説明無)」…位置的にフーチングと推定。AB案とも、5街区とも、違う描き方になっている。

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以上メモとして長くなったが書いてみた。図面に多くの注記も付いているので情報量が多い。他にも関連図面が沢山あるのは確実で、その精査と職員レベルまでのヒアリングを組み合わせれば、実態にたどり着けるのではないか。

都側調査でも十分やる時間はあったと思うが、報告書は小池氏だけでなく皆も全く納得しないレベル。ただし、そもそも都側が盛土による対策を予定していたと云う超重要資料を抜かして検証・公開が行われているのだから、何を言ってもダメな人達ということになってしまう(苦笑)
 「マッチポンプ」の言葉を入れるだけでも、実態を端的に表しているのだから、(一定以上の年代の方々には)相当納得性と理解が得られたと思う。

さて、「モニタリング空間」について特に考察。「改正土壌汚染対策法」に基づく「形質変更時要届出区域」の指定を解除してもらう目的で、東京都は2014年11月から地下水のモニタリング調査を実施してきた。この指定は名称の通り「形質変更」、つまり土壌形質に影響を与えるような工事等を実施する際に届け出が必要になる区域。

変更しなければ申請不要であり、そのまま土地を使っている分には問題がない。そのため当初予定だった11月7日開業は、11月末の最終モニタリング調査の結果を待たずとも移転可能という判断によるものだった。

モニタリング実施は「安心」のために念には念を入れて、という意味合いが大きいと思われる措置だった。ただし、中央市場開設に許認可権限を持つ農水省が、生鮮食品を扱う市場として「要届出区域指定」がずっと解除されないままだと難色を示すのではないか、という話もある。

また、指定解除用のモニタリングとは別に、「地下水管理システム」という設備を豊洲は備えている。開業後もずっと稼働必須で、こちらにもモニタリング機能がある。「モニタリング空間」では建物下のAP+2m地点にも観測井戸が設置されていると思われるが、恒常的な「地下水管理システム」の方は建物が建った後も使えるように建物周囲に観測井戸が設置されている。(建物下モニタリング空間の観測井戸の方は、前述のように見た人の話は未だ出ていないと思われる)

このような背景に加えて、「土壌汚染対策法」は豊洲移転の検討が進んだ状態で、謂わば後から改正された。建物の概要や配置等もほぼ決まっていた。そのような段階になってから建物下もモニタリング必要になっても、本来は対応困難。前述の農水省豊洲移転の大計画をストップさせたら国政レベルでも大問題になり、最終的には止める積りはなく相談に乗ると思われる。また専門家会議への再諮問や技術会議の仕様変更も、正規にお願いすれば当然対応される。

つまり後からの改正という、やむを得ない事態には、真っ当な手続きをすれば皆協力できる。そのときに「建物下には盛土不可」という実情も率直に説明し、盛土無しに仕様変更して再検討することも出来たのではないか。しかし、都側は技術会議へ仕様変更したいという明確な説明を行わなかった。しかも意識的か無意識かは分からないが、指定解除用のモニタリングと地下水管理システムを一緒くたにして分かりにくい状態を作り出し、結果的に盛土無しで進めてしまった。

以上を含めて当方仮説だが、根底には都側の担当関係者が謂わば「盛土無し症候群」の様な状態にあったのではないか。盛土実施につながる事柄は何でもスルー、盛土無しの方向へは小さな理由でもすくい上げる。それをこじらせて結果は現在の事態に至った。
もちろん、もっと違った状況だったかも知れないが、幾らでも「盛土無しになっています」と声を上げる機会が有ったのに、そうならなかった事情を是非PTでは解明していただきたいと思う。

その際には先日も書いたように「技術会議で説明した課長クラス」は必ず知っているキーマンだし、実際はその上の部長クラスも当然知っていたと推察される。特に直接担当部門の「基盤整備担当部長」「施設整備担当部長」は重要。PTでしっかりヒアリングしていただきたい。

以上
[追記]
「HALL」さんからもコメントを頂き、以下の情報を得た。
設計会社が「盛り土不要」提案、11年1月までに提出”TBS
豊洲新市場の建物の下に盛り土が行われていなかった問題で、設計を担当した「日建設計」が2011年1月までに「盛り土不要」と明記した技術提案書を東京都に提出していたことが新たにわかりました。>

やはり、N建設計の話が出始めた。新国立競技場でやったような完黙対応は止めて、小池知事の姿勢に合わせて情報公開姿勢に転換していただきたい。ただ、いま出ている内容を見る限りは、「盛って掘って又埋めて」における「盛って掘って」の無駄を指摘したようにも受け取れて、「又盛って」の部分に対応する話も今後出てくるか。
イメージ 4

なお、本文の補足として昨日コメント欄での「フーチング」関連記述を転記。
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<フーチングはあくまでも基礎杭と躯体をつなげるための部分ではないでしょうか?既成杭の場合は支持力の関係から3~5本の杭頭部をまとめます。この図のように4~5m伸びた部分まで、フーチング呼んでいいのでしょうか?>
→ご趣旨通りと思いますが、本文の(2)豊洲模式図を描く際に写真を見ていて、どこまでがフーチングか区別付かなかったので、仮に「長いフーチング」としていました。そうしたらPT委員の渡辺氏が「フーチングが4.5m位のところまで降りていっている、ちょっと例のない特殊な構造」とのこと。「長いフーチング」ということになり、少々驚いて記事にした次第です。

<4~5mもあれば耐震&構造計算が必要となり躯体の一部じゃないんですか?>
→これも全くその通りで、本文の図(2)と(3)は梁の位置の違いと共に、両方を(1)と比べて構造・耐震計算ではどう扱われるでしょうか?という構造的課題提起の図になります。
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追記以上