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調査報告書3…モニタリング空間&地下ピット

報告書の添付資料も公表された。その前にもTVでは「地下空間」に対して色々な図が紹介されていて、中でも以下は既に見られた方も多いと思われる興味深い図。

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特長として、ミニユンボの書かれた「地下空間(モニタリング空間)」と「地下ピット(配管スペース)…半地下であるが地下とする」が両方設置されている。端的に言えば、「空間を上下に分割した形」。

「地下ピットは必須だから地下空間は問題ない」という見解をお持ちの方もおられるが、上記の形の方がスッキリするのではないだろうか。それが何故今ある「4.5mの地下ピット」のような形になったのか? 公表添付資料から推察してみる。
手がかりにしたのが「2009年1月13日」文書で上図を含めた4種類の図面が掲載されている。

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A案(以下A)の中に「この空間を建築指導や消防が地下階と見なすかどうか」という記述がある。Aは空間底部が砕石になっていて現状に近いが、それでも「地下階」と見なされないか気にしている。

地下ピットに床が有る「Case1右図」(冒頭図と同一)では、少なくとも空間を分割した上部は地下室と見なされる可能性が高い。普通はそれでも良いと思われるが、Aの追記で「避難階段その他の施設が必要になるかも、確認必要」とあり、地下階と見なされた場合の施設追加を懸念していた。

また、都側は「地下は無い」と言い続けてきたので、ここで「地下を作りました」とは言い出しにくかった事情も有るだろう。更にAで地下と見なされることを気にしていたのだから、現状の構造になっても地下階と見られるのを避けたかったと思われる。その配慮が構造計算書の設定などに影響したかも知れない。このように図面を見ると色々情報が得られて来る。

また、明確に「配管スペース」と記載しているのは1種類のみ。これら図面作成時は「地下ピットより『モニタリング空間』を作る検討が第一目的だったのではないか」と当ブログでは推測している。(その底流にある意図は意識的か無意識かは別にして、「盛土不可能のため、何とかして建物下の盛土無しにせざるを得ない空間に理由付けができないか」ではなかったか)

このモニタリング空間検討の文書は、2年後の設計会社(N建設計)との打合せにも使われ、2013年6月の地下空間がある基本設計図に繋がったようである。
報告書本文で、小型重機の図について「地下を活用した場合の簡単なポンチ絵として描いた、との証言が有る」と記載。20011年1月における作成意図は、この程度のことだった。それが2年後の打合せでも使用された際には、作成時の意図や状況が余り伝わっていなかった可能性があるのではないか。

もしそうであれば、小型重機に関して2年間の間に立ち消えになったような状態の図を別の人が打合せに使って、現状の設計につながったという想定も出来てくる。しかも、その後の設計進行の中で重機使用はもっと忘れ去られた可能性があり(笑)、地下空間の写真では高さの低い箇所が様々あり、人の背丈より低い場所もある。
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これでは「小型重機」であっても使用はなかなか難しいと思われ、都側もそれが重々分かっているからマスコミの用途に関する質問に当初「配管用」と答えていた。報告書でも前述のように軽い位置付けが推測される注釈を付けたと思われる。

それでも「重機」や「ユンボ」というキャッチーな言葉に触発されて、建築関係者と思しき人も「4.5mの作業空間があるから重機も使用できる」という趣旨を書いているのを見た。 その様な人向けには、ネットにあった次の秀逸な句 (by青葉太郎さん)を提示して差し上げたい(笑)…
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「モニタリング よくぞ見つけた 言い逃れ」が端的だし、「必要がないほど広大なモニタリングスペース」というフォローが、また本質を表している。確かに使用想定頻度に比べて広すぎる。使用実例もありそうにないし、モニタリング期間の予定は2年間だった。それらをまとめて突くような鋭い一刺し。

このような簡潔な表現で認識出来るとともに、報告書や添付資料で材料も揃ってきたと思われ、モニタリング空間と地下ピットの経緯については、早く小島PTの専門家が詳細検証して現在の設計に至った経過や理由を明確に解説していただきたいと思う。

基本的には専門家の論議を待つ中で、基礎構造について本日若干検討。まず、上記A・B案は「地中梁の有無」がポイントということで、それぞれ以下の記載がある。
 A…「基礎フーチングの間に梁がなく改良しやすい
 B…基礎フーチングの間に「地中梁

これは以前から専門家にもっと論議をしていただきたいと思っていた点につながる。
「地中梁(基礎梁)」相当が現状では地下空間の上部にあると思われるが、下部の方が一般的ではないかという見解もあると思われ、どちらが適切なのか?”という疑問である。

例えば、ペコさんは「下部にある方が安定する」という見解と思われ、当方も技術的な一般常識から「重いものは下部の方が望ましい」という見方をしている。しかし、現状の上部にある構造で問題を感じていない専門家の方々もおられるようだ。

そういえば、小島PTの建築家佐藤尚巳氏も次のように発言しておられて、安全性は担保されているという見方。
<それ(現在の構造)を前提として構造計算をしてる限り、それは安全性が確保された建物として私は認識するし、確認審査なり、構造評定なりで、第三者の目でチェックされているはずですから、見落としのような話もあったかも知れませんが(注:コンクリート厚み1cmの件)、そこについては時松先生(注:構造専門家)の方でしっかり見ていただければ安全性については十分評価できるし、特殊な構造ではあるんですけども私は安全は担保されている(と思う)>

同氏は現在の構造は特殊と認識しておられるが、その特徴を上記の前段で次のように述べておられる。
<建物の地下に入ってよく観察してみたのですが、基礎梁があって杭があって、そこの基礎梁と杭と柱を連結する部分をフーチンと言うのですが、非常に大きなコンクリートの塊です。その塊が地下の方にずっと降りていって地下4mか4.5mのところまで、すっと降りた形のちょっと、余り例のない、言ってみれば高下駄をはいているような構造かも知れません。>

これに関連して、当方が以前説明用に作成した図を追加改訂して再掲。

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この図に対して建築関係者と思しき方が、例えばフーチングについて「もっと短い」というようなご指摘されているのも見かけた。確かに門外漢が今回調べて書いたポンチ絵もどきで、自分の認識整理が主目的でもあって、とても正確とは思っていなかった。それでも今になって佐藤氏の現地調査した上での見解に接すると、たまたまながら合っている面もあるようで驚いた(笑)

現状は「フーチングが大きな塊のまま下に降りている余り例のない形状で高下駄をはいているような構造」とのことで、当方も「高床式に似ているのではないか」と思って作成した意図は合致していたようだ。またフーチングはもっと太く描こうとしたが、元が軽量を思わせる構造図だったので余り太くしなかった(同様に豊洲の基礎梁も地下空間高さの半分近くある)。
ただし、ポンチ絵レベルであるのは間違いないので、建築専門家の方々に(2)と(3)の評価はどうなるか、また高床式の様になる場合の構造計算(特に耐震)の考え方など、掘り下げていただければと期待。

ちなみに実際の地下写真を見ると、フーチングと思えるところは非常に太いようである(佐藤氏いわく「塊」)。
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後は、前述の「基礎梁の位置が上部・下部どちらが適切か?」、などもPTの専門家によって議論していただきたいと思う。「現状の構造で正確に計算されて認証されているならOK」だけでなく、構造の妥当性も検討すべきと思える。

「構造が特殊」という指摘が出てくるのは、「重機を使えるようにするために構造が特殊化したのではないか?」という疑義が出てくる。実際に使われる見込みがない、或いは極端に低い用途のために特殊化したなら、余分なコストアップした可能性もある。そうなればPT検証においても問題点として追加されることにもなる。

ちなみに佐藤氏は上記のような的確な見方もしておられるが、図面が公表された今となってはPTでの発言で結構ズレているのではないかという印象のものもある。

例えば、本日検証した「当初は地下ピットよりモニタリングと重機使用を目的に検討されて、その結果で建物下全体に空間が出来た可能性」の件がある。それが今は高さ4.5mもの地下ピットとして使われている。しかし、低い位置にも配管等が多数あり、小型重機の使用は消えている可能性がある。
また、AP+2mの地盤が用意されていて、そこから上に建てたら地下に相当する部分は必然的に4.5m程度の空間になる(盛土無しの場合)。佐藤氏は排水勾配などから説明しておられたが、勾配自体は必須として、それが優先で現在の地下ピットが作られたと言えるのだろうか。

現在の地下ピットが建築的必要性や合理性だけから決まってきたのではない可能性も考えられるが、詳細検証前にいきなり都側技術系(主に建築系想定か)の「英知」と持ち上げてしまわれた。技術者の認識の仕方という観点からも興味があるので、今後どのような見解を出されていくか、他の専門家の先生方も含めて注目していきたい。

追加として、B案には以下の注記があり、基礎部分に関して責任範囲(AP+2mが分界点?)に関連する課題もあったようである 。(「PFI… 民間資金等活用」が一時検討されていた)。これは基礎梁が下部に無いことにも影響するか。
<「AP+2mより下に基礎が入ると土壌対策工事との責任範囲が不明確になる→PFI上、リスクが不明確」>

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以上
[追記]
東京都の報告書添付資料には、第1回専門家会議の資料東京都が予定している土壌汚染対策 は入っていない。昨日記事でも書いたが、これを考慮に入れないと「都側の壮大なマッチポンプ」という構図が的確に理解されにくい。小島PTなどでぜひ指摘していただきたいと思う。

また、以下は重要なニュースと思われる。

もしこれが事実とすると、東京ガス操業由来の汚染物質が残っていることになる。今度の基準値超えは単に見守るだけでなく、「土壌に問題がありうるので対策すべき」ということにもなるのではないか。対策時期は次回結果が出てからとしても、基準超え検出点には建物下も含まれている可能性あり。いよいよミニユンボユンボの出番になるか。もし、その場面が来たら取材陣やカメラの放列が凄いことになるだろう。

検証項目や興味深いポイントは増えるばかりだが、一旦推移を見守ってみるということで当面は基本的に不定期掲載に入ります。

追記以上