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旧計画再検証9 「官邸チームの情報秘匿」

ザハ氏の新しいインタビューの日本語訳がTwitterに出ていた。既に見られた方もおられると思うが、以下に抜粋引用。
----ツィート引用開始----
ciaosea @ciaosea 3月16日     
数日前にツベに公開されたザハのインタビューのなかで、11:11分からが新国立についてだった。その部分の耳コピ。(オックスフォード大学のユニオン Oxford Union)
・・・
ciaosea @ciaosea 3月16日  
しばらくして、ラジオやテレビでニュースを知ることになる・・・東京の(おそらく)ハディド事務所の人間が国際電話を掛けてきて、日本の総理がテレビでこのプロジェクトはキャンセルになったと発表したと教えてくれたが、それまで何も知らされていなかった。(東京のハディド事務所がおかしいだろー)
----ツィート引用終了----

これを見るとザハ氏も安倍総理発表を事前には全く知らなくて、東京事務所からの国際電話で知ったようである。
総理の発表は他の関係者にとっても突然だったようで、検証委員会のヒアリングで各人が述べている。

----ヒアリング結果引用開始----
①【下村 博文 文部科学大臣
○2,520億円でやむを得ないと思った段階では、工期が間に合うと確信を持てる材料がまだ無かった。今年(2015年)の7月17日に総理のところに行って、見直しをした際には、ラグビーワールドカップには間に合わないが、オリンピック・パラリンピックには、ゼロから見直しても、工期は間に合うという確信を持てた。
②【河野 一郎 (独)日本スポーツ振興センター理事長】
○ JSCとして、ラグビーワールドカップに間に合わせることが第一優先事項であったた
め、それが白紙撤回で無くなったことに驚いた。
③【永山 裕二 元文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年企画課課長】
○ 白紙撤回の話はニュースで知った。その瞬間までラグビーワールドカップに間に合わせるということで見直しは難しいと考えていたので、1つの大きな決断だと思う一方でショックを受けた。
④【山下 隆幸 元(独)日本スポーツ振興センター新国立競技場設置本部施設部部長】
○ 7月になるまで白紙になるとは思っていなかった。陸上、サッカー、ラグビー、コンサートを全てやって芝生の育成を考えるという厳しい条件ではあるが、技術力を駆使してやるということで進めていた。
----ヒアリング結果引用終了----

それぞれが虚偽証言でなければ、ZHA・文科省・JSCのトップたちでさえ白紙見直しの検討が行われていたことを知らなかったことになる。更に文科省課長やJSC部長なども含めて口裏を合わせるのは困難と思われ、やはり上記各人が「発表まで知らなかった」ことは事実と推察される。(下村文科大臣は上記①だと7月17日に官邸に行くまで知らなかったようで、他の発言では事前に少し知っていたようなことも言ってるが曖昧であり、トップが「知らなかった」とは言いにくいからカッコ付けの可能性有り)

特に河野理事長(②)が知らなかったことは重要で、建設推進の実務を担っていたJSCトップが知らなかったということになる。しかしそうなると「鬼澤理事や山崎本部長も知らなかったのだろうか?」という疑問も出てくる(両氏ヒアリング結果には書かれていない)。両氏は文科省からの出向者だから、知っていても外様の河野氏には情報を上げなかったと云うようなことが有りえるか。
しかし、仮に山崎氏や鬼澤氏が知っていて、理事長に伝えていなかったら責任は伝えなかった人の方に降りかかってくる。責任回避第一の官僚の行動原理からすると、伝えていないとは考えにくい。また、JSC設置本部で山崎氏の部下に当たる山下部長(④)も知らなかったと証言。本部長クラスが部下にやらせずに自ら動くとも思えない。また、もし責任を自ら引き受けて動く人たちだったら、このような事態になっていないだろう。文科省も担当部局の課長(③)が知らなかった。結果的にJSCも文科省も知っていた人が見えてこない(つまり知らなかったと思われる)。

「白紙見直し」と「新コンペ」を主導した官邸チームとゼネコンは一体どのように情報管理して、ここまで秘密に出来たのだろうか。検証委員会に白紙化経過を検証させなかったのは、この辺を隠したかった可能性大。しかし、このようなことが出来ると、これまでも述べてきたように「民主主義の危機」になる。再度検証委員会を立ち上げて、白紙化経緯を解明すべき。
なお、設計チームにおいてザハ氏は知らなくても、「日建設計はどうだったのか?」という疑問があり、これは追記で検討。

以上
[追記]
日建設計ヒアリング結果に「白紙見直しをいつ知ったか」は述べられていない。
ここからは相当憶測が入るので追記の方にしたが、「日建設計の幹部クラスは官邸チームとゼネコンで動いていることを知っていたのではないか」という気がしている。
設計を主導していたZHAと日建設計はゼネコン参加後に情報が入りにくくなったら、その理由を知ろうとすることは当然で、特にゼネコン業界とも関係が深いであろう日建設計が八方手を尽くして全く情報が入手できないということは考えにくい。それなのにザハ氏が何も知らないというのは(発言が虚偽でなければ)不可解な話。

本文Twitterで<(東京のハディド事務所がおかしいだろー)>と感想が書かれているように、ロンドンでは情報が取れなくても東京事務所は日建設計と連携して動いていて情報が入らないとは思えない。しかし、ZHA東京事務所の担当だった内山氏は日経アーキのインタビューで<「整備計画を白紙撤回する」という話は、決定する1カ月ほど 前から報道で聞いていた。これは「 価格交渉でコストを抑えるためのけん制」だと 思っていた。>と述べている。この通りだとすると東京事務所も知らなかったことになるが、本文ヒアリングの官僚たちと違って商売が掛かっている直接担当者が、本当に報道以外に情報源がなかったのだろうか。

そこで日建設計とZHA東京事務所に関して、今まで注目されていなかった内容を参考に記す。ZHA東京事務所のU氏は2015年10月に日建設計に移籍したが、最初に移籍話が出たのは2015年春先だったことが日経アーキのU氏インタビューとは別の記事に書かれていた。
”【エピローグ】チーム解散、新天地に挑む”
日建設計山梨和彦氏・・・「新国立競技場の旧整備計画では、内山さんがザハ・ハディド事務所でデザイン 監修者として仕事をしました。監修者という立場 でしたが、設計に賭ける熱い思いを共有したまま、同じ血が流れるチームの一員として働いてほしいと願い、春先くらいから移籍についてザハ・ハディド事務所と話し合ってきました」>

2015年春先ということは、「由利俊太郎氏」記事にある「ゼネコンによる官邸直訴」も同じ春先。何か符合が有るのだろうか。少なくとも、この頃から日建設計の設計グループ代表とZHA東京事務所の担当者が気脈を通じ合っていたのは事実ということになる。
ただし、もし日建設計が「官邸チームとゼネコンの動き」があることを掴んでいたとしたら、JSCの鬼澤氏や山崎氏も知らないわけがないとも思える。だが本文のようにJSCや文科省は知らなかったようだから、JSCに所属しつつ実際は文科官僚でもある両氏が、JSC内にも文科省にも知らせず独自に動いていたとは考えにくい。

ゼネコン官邸直訴が有ったと想定される2月頃から白紙見直し発表の7月まで、途中6月頃に白紙化検討のリークが有ったとはいえ、長期間隠し通すのは普通に考えたら困難と思われる。官邸チームは一体どのような手法を使って検討の動きを秘匿したのだろうか。また、更に深く考えるてみると、官邸チームやゼネコンもそれまでの設計情報が必要だから日建設計とは或る程度連携していたのではないか、その状態で日建設計はZHA側にはU氏だけに伝えてU氏は自らまでで抑えていたのではないか、最終的に緘口令を敷くために日建設計はU氏も取り込んで口をつぐみ続けているのではないか、ZHAと組んでの新コンペ参加意向もカムフラージュだったのではないか、など色々推測出来てくるが憶測(仮定)が重なっていくためこの辺まで。

なお、話は変わって聖火台問題について日刊ゲンダイで以下記事が出た。

夕刊紙のゲンダイが事実に基づく真っ当な報道をしていて、こういう正統派の報道を昨日取り上げた東京新聞森本記者などに期待したいところ。今からでもJSC取材して、ザハ案で外部に置く予定だった構想の概要でも出させるよう、東京新聞だけでなく他新聞等も巻き込んで要請して頂きたいと思う。JSCは聖火台仕様を先送りにしただけの杜撰な対応だった可能性も有るが、その場合も「決めていなかった」ことを明らかにする必要あり。

ただし、ここで上記の官邸チームとの関連が出て来て、聖火台問題を含めて実際にコントロールしているのは同チームになると思われる。ただし、官邸チームが聖火台無しに気づいていたかは不明だが、対策は同チーム主導で行われると想定される。結局ここに踏み込まないと真相報道は出来ないと思われるが、森本記者の著書にも同チームの話は出てこない。同記者のように取材を長期に重ねても官邸チームの秘匿の壁は、存在することさえ察知させないのだろうか。或いは新聞社側や記者個人に自主規制の空気のようなものがあるのだろうか。

追記以上