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聖火台問題9…事情判明「毎日新聞記事及びワーキングチーム議事録」

asd**hjkl35*200*200*」さんへの返信でコメント欄に書いたように、以下の毎日新聞によると「JSCは旧計画で、まず”ラグビーW杯対応”を考えていた」という経緯のようである。(ワーキングチーム議事録も出ていたので追記で示す)
<検討漏れ、残る不安 
 「みなさんに疑念を抱かせたことを申し訳なく思っている」。ワーキングチーム(WT)の議長を務める遠藤利明五輪担当相は初会合の冒頭のあいさつでこう述べた。WTは4月下旬までに聖火台の設置場所を「競技場の内か外か」を決める方針。聖火台に点火する開会式(20年7月24日)の式典内容は通常、1年前ぐらいから詳細を詰めるため、これ以上は決められないのが実情だ。 
 聖火台の問題は最近になって組織委とJSCが事務レベルで話しているうちに設置場所が決まっていないことに気づいた。トップが集まる組織委の調整会議で、WTの設置が決まったが、組織委の森喜朗会長は「たとえは悪いが、家を建てたのにトイレがなかったようなもの」と批判する。
 政府関係者によると、白紙撤回された旧整備計画では、競技場が開閉式屋根で覆われることもあり、JSCは競技場外に仮設することを想定していた。しかも、五輪前にラグビーの19年ワールドカップ(W杯)で使用されることになっていたため、W杯後に聖火台を含めて五輪仕様に追加工事を実施する方針だった。 
 しかし、新たな整備計画は初めから五輪会場として策定された。政府関係者は「旧計画は『聖火台はどこ』と言われても『まずラグビーだ』と説明がつく。今回はいきなり五輪だから『あれはどうなっている』という感じになる」と、急浮上した背景を明かす。 
 聖火台の設置場所は政府が昨年8月に策定した新国立競技場の整備計画とJSCが公募段階で示した「業務要求水準書」でも具体的に検討されていなかった。遠藤氏は「前計画の時(議論が)済んだような気がしていた」と率直に振り返ったが、政府が具体的な要求を出さなかったことで、JSCは旧整備計画のように後から聖火台を設定するという認識のままだった。新国立競技場を最初に使用するのがラグビーW杯から五輪へと前提条件が変わったにもかかわらずだった。JSC内からは「政府から指示がなかった」との声も漏れてくるが、事業主体としてJSCはあまりにも無責任との批判は免れない。さらに所管する文部科学省監督責任が問われている。 
 そもそも1964年東京五輪の主会場だった旧国立競技場と一体となって語り継がれたように聖火台は特別視されてきた。旧国立の聖火台を宮城県石巻市にいったん移したのも、レガシー(遺産)として新国立競技場に残すためだ。「(新整備計画の)A案かB案か、外見に気をとられているうちに肝心の中身の議論がおろそかになっていた」と組織委幹部は指摘する。これからも中身の検討漏れが浮上する懸念はある。 
 WTは「総工費の上限は超えない」と確認した。しかし、実際に聖火台を設置するには費用がかかる。組織委は国の責任を強調して、JSCは聖火台はあくまで五輪のために限られた設備のため、組織委の負担との考えだ。今後、費用負担を巡る議論は避けては通れないことになる。> 

上記で「式典内容は通常、1年前ぐらいから詳細を詰めるため、これ以上は決められない」となっていて、当方見解の「現状で演出家や演出の話に持っていくには無理がある」という見方は政府側も同様ということになる。ただ、記事中の政府関係者は「1年前ぐらい」という目論見だが、リハーサル等も考慮するともっと早く「2年前」ぐらいが妥当と思う。気運が盛り上がれば更に前の決定も考えられるだろうが、それでも今は4年以上前である。演出家選定の話には早すぎるし、演出決定にはもっと早い。
ちなみにビートたけし氏も理解していて、視聴者受けするギャグとして演出のことをTVで発言したと思う。彼自身映画監督だから、まだ早すぎるのは重々分っているだろう。今からだと映画の場合は監督がスタジオ作りから、舞台なら演出家が劇場作りから指揮するようなもので、実際は極めて特殊な状況となり以前にも書いた劇団四季の「浅利慶太」氏ぐらいではないか。また、たけし氏は依頼が来ないのも承知の上でギャグとしての演出アイデアを披露している(それでも政府・組織委員会が依頼したら粋だが)。そういえば隈氏も「早く演出家と協議したい」とテレ朝のインタビューで述べたとのこと。こちらは、おとぼけか。

なお、国際コンペ募集要項から既に「開閉会式開催に必要な機能を整備する」と云う規定は有って、新コンペでも入っていてるが、聖火台仕様は開会式内容がまだ決まらないからということで先送りしていたようである。ただし、特に外部設置だと夏季では初めてとなり、早期にIOCに確認を取っておく必要があると思われ、組織委員会との調整が必須。もしそれをやって有れば、「ザハ案の時はこうでした」と説明できるし、新計画の参考にもなると思うが、そのような話は無し。JSCと組織委員会はザハ案で一体何をやっていたのか。
また、聖火台問題が「急浮上」したという理由については、当ブログで紹介した2月19日に川口市が各所に陳情したことによるものではないかと云う推測が出来るが、実態はどうだろうか。

それにしても、この毎日新聞の記事は他紙に比べて突出して経過説明が詳しい(上記引用でも抜粋…登録して全文お読みください)。しかも「政府関係者」となっているから間違いなくリーク。3月11日に聖火台の設置場所を検討するためのワーキングチーム初会合開催後に、当番になっていた毎日新聞だけに情報を流したと考えられる。
新国立競技場問題の報道を見ていると、「記者クラブ加盟社の中で順繰りに担当を決めて、そこに政府が情報を流す」という構図が改めてよく分かる。日本の記者クラブ制度の問題点はよく指摘されるが、加盟社や政府は取り決めを守らない会社には情報を出さなくして統制できる。加盟社間での過度のスクープ合戦を防ぐなどの意図も理解できなくはないが、国民のための報道と云う観点から考えて少なくともこのような状態が今後ずっと続いていくのはどうかと思う。

参考として3月11日会合以降の毎日新聞以外の記事を示すが、内容の詳しさは雲泥の差である。

なお、毎日新聞は3月11日時点でリークを貰って、同日中にも詳細記事を出している。(題名は違うが内容はほぼ同じで、3月12日の方はロンドンの聖火写真などが入っている)

以上
[追記]
官邸からワーキングチームの議事資料がアップされている。抜粋を示す。
聖火台に関する経緯 
1.従前計画時 
・ザハ案に基づく従前計画は、2019年ラグビーワールドカップまでに完成する前提だったので、聖火台を含め2020年東京大会のために必要な追加工事(オーバーレイ工事)を組織委員会が検討し、実施する方針であった。従って、ザハ案時には聖火台に関する計画・予算積算は措置されていなかった。 
2.新整備計画以降 
・白紙撤回後の新計画では、当初は2020年春の完成見込みであったため、2020年東京大会時に必要な追加スペックを、組織委員会からの要望に基づき、設計段階から織り込むこととした。実際に、例えばオリンピック時のカメラ取材の場所となるモートなどは要求水準にも盛り込まれ、事業者からの技術提案にも含まれている。 
・しかしながら、聖火台については、開閉会式のセレモニーとも密接に関連する事柄であるため、セレモニーの内容が決まっていない設計段階では対応困難との理由などにより、技術提案の要求水準に盛り込むことは見送られ、後日検討する課題として整理されてきた。 >

JSCは旧計画でラグビーW杯の2019年までに完成させる予定にしていた。その後の五輪向け対応は追加工事として組織委員会が実施することで考えていたから、聖火台については旧計画に入れてなかったということになる。これで聖火台にまつわる事情はほぼ分かったようである。また、旧計画時では聖火台の計画・予算積算は無かったとのことで、「ザハ案の時から外部だった」というのは言い訳か、殆ど考えずに言っている可能性が高そう。

なお、上記で<オリンピック時のカメラ取材の場所となるモートなどは要求水準にも盛り込まれ、事業者からの技術提案にも含まれている>という点については、以下のように業務要求水準書(P-3-37)に入っている。
(3) カメラモート
 ① フィールドの外周部にカメラモート(奥行き 3m程度、深さ2m程度)を設ける。
 なお、カメラモートの位置は下記のとおり。詳細は組織委員会と協議すること。
 【参考資料15】「カメラモートのイメージ」を参照する。

ただし、上記【参考資料15】は公開されている業務水準書に無いため、「カメラモート」の内容は現在不明だが、「カメラモート」という文言に関しては既にザハ案の実施設計書に入っていた。また、開閉会式に必要な対応に関しては、同設計書で組織委員会の要望事項への対応」となっており、JSCと組織委員会は以前から打合せを行なっていた。それでも新コンペで聖火台の扱いが抜けたのは両者ともに問題がありそう。

追記以上