kensyou_jikenboのブログ

yahoo!ブログの同名ブログを移行しました

官邸チームと聖火台問題及び白紙化経緯追加検証

先日も紹介したが、週刊新潮記事が「ディリー新潮」というサイトに掲載されている。週刊誌らしく詳細な取材が行われ、その中に聖火台に関する以下記事がある。昨日までの検証の追加も含めて、官邸チームとの関連を重点に考察する。
----記事抜粋開始----
問題が持ち上がった経緯を関係者が証言する。
「聖火台を忘れるわけがないでしょ。19年ラグビーW杯前の完成を目指していたザハ案の時から、これは『オーバーレイ工事』、ざっくり言うと、競技場が出来たあとに必要な付属施設を作るということで進めてきたんです」
 こんな風に打ち明けるのは、文科省関係者のひとり。ときにわれわれは、トラックで躍動する競技者を臨場感あふれる映像で楽しむことが出来る。これは設置されたレーンに沿って走るカメラを通じてのものなのだが、こういった設備はオーバーレイ工事の範疇となる。
「ザハ案がご破算になってから、改めて新国立の仕様を指示した『要求水準書』を作りました」 と、これは組織委員会関係者の話である。
「その時も、内閣官房の新国立競技場の整備計画再検討推進室日本スポーツ振興センター(JSC)、そして組織委員会の3者は、聖火台の『後付け』を了解済み。したがって、水準書も聖火台については触れていません」
 事実、JSCに聞くと、「聖火台の敷設は、『セレモニー関係機器の設置工事および機材検証』という項目に含まれており、時期としては20年3月以降を予定しています」
 煎じ詰めれば、聖火台のことは新国立のデザインと切り離して考えて、秘中の秘である開閉会式の演出と絡め、開催の4カ月くらい前から詰めようというスタンスだった。そのことの是非はともかく、関係各所が押しなべて「異存なし」とする案件だったのだ。
----抜粋終了----

この抜粋の後には、<どうして今回の混乱に至ったのか>ということで基本的に「森氏」批判が続くのでご覧ください。また、上記中の「聖火台は、…開催の4カ月くらい前から詰めようというスタンス」が実際あったとすると、それが適切かは大いに疑問あり。これは追記で一部検討することにして、「官邸チーム」との関連を考察。
上記にある「内閣官房の新国立競技場の整備計画再検討推進室、JSC、そして組織委員会の3者は、聖火台の『後付け』を了解済み」という点がポイントになる。組織委員会とJSCの調整事項という話は出ていたが、「整備計画再検討推進室=官邸チーム」も入っていたようだ。そして今も「新国立競技場の聖火台に関する検討ワーキング・チーム」の事務局は同室になっている。課題処理の手腕が評価されているものと思われる。
ただし、その隠蔽体質は相変わらずのようで、新たに掲載された第3回会合資料を含めて、これまでの資料に「再検討推進室」の表記は無し。第1回と2回の議事録も出ておらず、このままだと今後も出来るだけ隠蔽していく方針かも知れない。

なお、上記記事の別部分では森氏との関連で以下の記述がある。
<「JSC側からは、“聖火台は五輪にかかわる問題なので、費用は組織委員会の負担でお願いしたい”という提案があった。森さんらは、“これ以上の負担は看過しがたい。聖火台の責任の所在をはっきりさせたい”などと言い始めた。2週間くらい前からです」(前出・文科省関係者)>

どうも聖火台問題における現状の優先課題は、まず「費用負担」のようで森氏がそれを口を挟んでいる。第3回会合資料でも「内閣官房」(=再検討推進室)から財源に関する資料が出ている。
 ・資料2-1 従前案と新整備計画案のコスト比較(内閣官房
 ・資料2-2 新国立競技場整備に係る財源スキーム(内閣官房
結果的に同室主導で負担の割り振りを決めてから、本来の聖火台仕様について組織委員会とJSCも含めて調整に入るのではないか。ただし、なぜ問題が表面化してイメージダウンになる前に、もっと迅速に調整して抑え込めなかったのかは大きな疑問。森氏が幾ら無茶を言ったとしても、説明して是正していくのが官僚の能力だろう。白紙見直し決定と新コンペ段取りまでの同室の働きは評価できると思うが、その後は上手くやれているのか、不明確に思える。

それと白紙見直しは評価できても、流用が隠れていて後で発覚し問題になっている。いつ頃ザハ案流用を決めたのかも未だ不明。対象期間としては2015年春先(多分2月)の「ゼネコンによる官邸直訴」から、最大で同年7月14日に「大成の社長が官邸に呼ばれる」前までと想定できる。更に、その間の出来事によって分けてみる。
 (1) 2月~4月…ゼネコン直訴から河野理事長の文科大臣報告ぐらいまで
  (2) 5月…ゼネコンとの交渉が5月に入ってJSCから離れ官邸に移った(当時ZHAのU氏証言)
  (3) 6月…6月初にZHA契約解除検討報道あったが、6月29日にはザハ案推進を文科大臣が関係者に報告
  (4) 7月…7月14日大成社長官邸訪問まで(途中7月7日有識者会議などあり)

まず、これまでも述べてきた(2)のZHA契約解除報道はリーク記事と思われ、信憑性は高いと想定される。当該記事を抜粋再掲する。
今後は文科省日本スポーツ振興センター(JSC)に加え、文科省から費用の一部負担を求められている東京都、内閣府などが新国立問題に対応する方針

リーク記事というのは興味深くて、「今後は内閣府(再検討推進室になる前の官邸チームと想定される)が対応する」という真相が、さらっと入っている(笑) リークの手法等については更に研究したいが今は置いておくとして、この時点では既に官邸チームが主体となることは決定していたと推察出来る。
そうなるとZHA外しが(2)5月から決定的になっていたから、官邸チームの検討はザハ案中止を前提に進められていたと考えられる。この頃に「ZHAと契約解除するが、内部構造設計は流用する」という方針も決まっていたかどうか。普通に考えたら有り得ないやり方と思われ、少なくとも契約解除報道ぐらいまでは、まだザハ案流用しない新規設計で考えていたのではないか。その後何らかの事情でザハ案流用せざるを得なくなった。つまり(3)(4)の6月初めから7月初旬ぐらいまでの間と推定出来てくる。それ以上は残念ながら現時点までの情報では絞り込めていない。

結果的に白紙見直し決定に至る経緯は、まだまだ謎が存在する。丁度昨日までの検証記事について、@KintaGoyaさんが<国家根幹関わる佳境推理>とツィートされていた。本当に謎が多いし、政府中枢に及ぶ多数の関係者が、ごく一部を除き真相を知らず考えもしないまま動いている。国家レベルのミステリーになっているが、もはや喜劇の面も強いのが国民としては情けない(苦笑)

なお、槙氏とそのグループも想像以上に積極的に動き、白紙見直し過程で提言を繰り返していたことが経緯検証で認識できた。しかし槙グループ案は採用されずに新コンペが行われA案になったが、その要因は「ザハ案流用による開発期間短縮効果」である可能性は大きい。その流用問題でZHAと未だ決着付けられていないのだから、槙氏は批判しても良さそうなもの。しかし、容易に分かるレベルの流用判定自体を「I'm not sure」と避けている。
また、旧計画の基本的問題点についても、"ザハ・ハディドは日本的な曖昧さの犠牲者だった"という昨年9月のインタビュー記事で、<監修者と設計者の役割をはっきりさせていなかった。どのような契約関係にあったのかをはっきりさせるべきだ。>と述べている。しかし、槙氏自身が文科大臣と直に話が出来ていたのだから、例えばJSCから契約書等を出させ確認可能だったのではないか。槙氏関連もミステリー。

約1500億円という多額の税金を投入するプロジェクトで、官民ともミステリーだらけというのは困るが、加えて多くのマスコミ等が長期に渡って取材しながら解明できていないのも問題。「多数の人を長期間だますことが出来る」というリンカーンもびっくりの事態が出現するのか。

以上
[追記]
本文新潮記事中で、猪瀬直樹氏が都知事時代に接した「聖火台プラン」を紹介している。
<「13年に招致が決まった直後から、非公式にいくつかあがっていました。特に印象に残っているのは、『空中に浮かぶ聖火台』。超伝導なのでしょうか、日本の技術力を誇るものだと思いました。それが今になって“聖火の話が抜けていた”というのは通らない」>

このプランの詳細や実現可能性等は不明だが、改めて「色々なアイデアが有る」ということを感じた。今後更に出てくるだろう。また川口鋳物による前回聖火台の再使用は有力であっても、それを使った上でハイテクの演出を施すことも出来るかもしれない。
その際に様々な技術開発が考えられるだろう。陰りが見えるハイテク日本の底力を見せるためにも、産官学の連携などで進めることは有って良いと思うし、複数開発で競うことも考えられる。そこに演出が絡んでくるが、全部演出家に任せるのではなく、聖火台の構想は大体用意しておいて感性でアレンジしてもらうことも出来る。

このように検討すべきことは山ほどあって時間もかかる。同記事にある「開催の4カ月くらい前から詰めよう」などという発想では対応できない。そして開閉会式の段取りや構成を作り上げていくのは、五輪準備と運営に責任を持つ組織委員会が主体になってやるしかない。しかし、なかなか同委員会が先頭に立ってやろうとしないのは、やはりトップである森会長がネックになっていると思われる。これまでも書いてきたが、元総理の森氏ではどうしても「政府がやるべき」となる傾向が強いし、、政府の担当大臣は見事に子分で固めてしまっている(笑) 森氏交代の検討は急務。

追記以上