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旧計画再検証6 「異常な設計プロセス…二つの推進ルート」

昨日記事で「旧計画は『異常な設計プロセス』だったから、『通常の設計業務』によるコストダウン取り組みが出来なかったのではないか」という趣旨を書いた。本日はこの「異常なプロセス」に対する当方理解を更に説明してみる。ポイントは「二つの推進ルート」があったと思われること。(ライン1、2は下図に示す)
 ①JSC主導ルート…ライン1(文科省、JSC、ZHA、設計JV、途中からゼネコン設計部隊)
 ②官邸主導ルート…ライン2(官邸チーム、ゼネコン上層部、途中からJSC、文科省、ゼネコン設計部隊)

下図は日経アーキに掲載されていた経過図をモノクロ化し、当方が追記したもの。参加組織が多いので分りやすくは出来なかったが、ライン1とライン2の二つのルートがある概略イメージを把握頂ければと思う。

イメージ 1

「①JSC主導ルート(ライン1)」は本来の推進ルート。ただし、JSCが全てを決めていたわけでなく、文科省が上にいて有識者会議もあったが、推進の中心はJSCだったので「JSC主導ルート」としてみた。設計実務はZHAと設計JVが担当し、実施設計からはゼネコン2社が加わった。旧計画が「通常の設計プロセス」で進んでいたと見る方は、このような流れで設計が行われ、コストが合わなかったら仕様や設計の変更が実施されて設計完成に至ることを想定しておられたと思う。

その本来ルートに対して、途中から「②官邸主導ルート(ライン2)」が発生したと当方は捉えている。「文藝春秋由利氏記事」にある「ゼネコンによる官邸直訴」を受け、和泉総理補佐官が中心となって国交省官庁営繕部からの出向により官邸チームを編成。ゼネコン(特に大成建設)と密接に打ち合わせながら、緊急対応策(ザハ案白紙化と新コンペ)を推進したと想定され、本来ルートから外れたイレギュラーな異常プロセスとなった。

由利氏記事からすると2015年春先(多分2月)の直訴から②が始まり、5月からはZHAのU氏証言により「ゼネコンとの交渉はJSCを離れ官邸に移った」とのことで、完全に①→②のシフトが起きたと考えられる。ただし、②は極秘の緊急対応として推進され、気づかれないように①も表面上は残し、7月7日有識者会議へ本来ルートで進んでいるように見せかけていたと推測。内実は、昨日も述べたようにZHA抜きではザハ案実施は出来ないので、少なくとも5月からは①でのザハ案推進を実質的に捨てていて、②による全面見直し(新コンペ)に絞ったと見る。

ゼネコンは両ルートに参加したことになるが、ゼネコン内でも①と②を分けていたと思う。直訴は上層部だけが知っていて、ゼネコン実務部隊は①をそのまま推進し、②は官邸チームもゼネコンも直接関与は少人数にして情報管理した体制が考えられる。由利氏記事以外は断片的かつ少数の報道しか未だに出て来ていないから、情報管理は成功したと云えるだろう。
その中で以前にも紹介した昨年7月の現代ビジネス記事を参考に再掲。この記事では「プランB」としている白紙見直し案を検討した官邸ルートの存在は、当方推測にとどまらず実際にも確実と思われる。なお、以下記事の筆者「伊藤博敏」氏は取材力の高いフリー・ジャーナリストのようであるが、それでもまだ由利氏ほど深い内容ではなく別人と見ている。
<連日の批判で当事者能力を喪失していた文科省に替わり、首相補佐官の元国土交通省住宅局長、和泉洋人を中心に内閣官房チームに現行計画を白紙に戻し、ラグビーW杯を断念した場合の「プランB」を検討させていたのである。> 

また、由利氏記事によればゼネコンは「撤退覚悟」で直訴したとのことで、その時点で既にザハ案の構造設計とそれを主導した体制(ZHA+アラップ+日建設計)に見切りを付けていた可能性が高い。そのまま進めるならゼネコン2社は「降りざるを得ない」と考えたほど問題は深刻だった。そのような判断をした理由を、世間一般が新国立競技場(旧計画)について認識している「コスト問題」と見るか、他にも問題があったと見るか。当方は後者で、「建てられない構造設計」というコスト増よりも根本的な重大問題があったと推察している。

マスコミやJIA調査などは、二つのルートの存在を考慮して、そのような異常プロセスに至った経緯を明らかにすることで根本問題に迫って真相を解明して頂きたいと思う。

以上
[追記]
現在は新コンペ後の対応でZHA側が正義のようになっている。しかし、流用や審査方法疑惑は日本側の問題だが、新コンペが必要になった直接要因としてはZHA側の責任も重大。JSCや文科省の与条件設定や推進方法の問題は大きい。しかし、ZHAや日建設計が構造設計の問題点を適宜率直に伝えていれば、もっと早く構造全面見直し等も対応できた可能性が充分あったのに、設計側が隠し続けた疑惑がある。JSC側にも隠蔽の加担者がいた可能性はあるが、構造設計の問題だから発端は設計側になる。
当方は客観的に検証を続けていく予定だが、マスコミやJIA調査等でもZHA側問題点にも着目するようになって貰いたい。

追記以上