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日経アーキ「伊東豊雄氏インタビュー記事(2016/03/22)」

昨日追記で触れた日経アーキテクチャ記事”伊東豊雄氏がザハ案とA案を比較する理由 表層を剥がした裸のデザインに「日本らしさ」があった”の考察。
まず「表層を剥がした」という点については以下のように述べている。
<――新国立競技場の設計で「A案」と「ザハ・ハディド案」の類似点を、平面図や断面図を使って説明したのは、なぜでしょうか。
「報道で外観パースを見比べた人たちは「A案もB案も極めてよく似ているじゃないか」といった感想を持ったと聞いています。その認識は違う。「A案とB案はまったく異なる設計なのだ」、ということを訴えたいと考えたのが、そもそもの動機です。…
ザハ・ハディド・アーキテクツはA案と自分たちのデザインが「驚くほど似ている」と指摘しています。しかしテレビを見ていると建築の専門でないコメンテーターが「こんなに見た目が違うのに、どうしてザハ・ハディドは訴えを起こそうとしているのか」という発言をしていました。表面的なデザインだけを見れば、一般の人にとっては当然の質問かもしれません。だから私は、「表層の問題ではない」と説明したかったのです。>

この伊東氏発言を理解する際に、新コンペでの提案について「似ているという評価が二通りあった」ことに注意が必要と思う。
  (1)A案とB案は同じようなもの
  (2)A案はザハ案を下敷きにしている
(1)に関しては例えば以下のような意見がネットにあった
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・「今回出てきた案はどちらも安全策というか新しさがなくて、ザハの時の衝撃度がすごかったので、あんなスタジアム、日本に欲しかったけどなぁ(笑) 」
・「ザハ案から見るとこの2案はほとんど同じようなものだ 実際出来上がったらどっち案を採用したのかわからんレベルだろw」
・「新国立は2案とも平凡でつまらないのに1500億円という値段で 屋根もなくクーラーもないってなんなのか」
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しかし、その前からの伊東氏発言も考慮すると、実際には(2)を強調したい意図も感じられる。つまり、「A案とザハ案の内部構造類似」を意識して発言しておられると思う。記事には以下のように、「独自に設計を進めて竹中に持ち込んだ」という経過の紹介がある。「A案がザハ案を下敷きにした大成建設・梓設計主導」と云う見方との対比と思われる。
----引用開始----
――新国立競技場に関して、どのような思い入れがあるのですか。
伊東 私は旧整備計画のコンペに応募していましたし、既存スタジアムの改修案も発表していました。だから、2015年7月にザハ案が見直しになった段階で、「もう一度やってみたい」と思ったのです。構造エンジニアに協力してもらい、15年8月の時点ではある程度、デザインの基本形ができていました。この時はまだ、大手建設会社とは協力をしていません。独自に設計を進めていたのです。
 その提案を持って、竹中工務店を訪ねました。「この提案なら(旧整備計画から)コストも工期も縮小してできる。一緒にやりませんか」と提案したのです。竹中工務店からは締め切り(15年9月18日の競争参加資格者の申請期限)ギリギリで「やりましょう」と返事をもらいました。そして、キックオフミーティングではB案の原形となるデザインを示しました。
----引用終了----

このような形でスタートして、最終的に記事の結びは以下のようになっている。
<――新国立のコンペで競ったことは自身にとってどのような経験でしたか。
今回の新国立の審査に限らず、建築は目先の判断だけにとらわれず、10年先、20年先にどう変化していくのかを豊かな感性で捉えなければいけないのではないか、と考えています。>

こういう一般的教訓のような話だけで終わらせてしまって良いのだろうか? 
当方はA案と同様に、B案も竹中の方で原案が出来ていて、それに伊東氏が依頼されて乗ったと見ていた。しかし、上記発言だと全く違った状況だったことになる。B案にも原案があったと考えた理由は以下のようなこと。

(ⅰ)竹中は新コンペ成立用の当て馬…官邸チームと大成が新コンペを考えたとき、大成一社だけではコンペにならないから競合社が必須。ザハ案で一緒にやっていた竹中工務店に「負け承知」で参加して貰うよう官邸チーム主導で調整したと考えられるのではないか。参加に当たっては大成の提案書と或る程度遜色のないものが必要だから、竹中も早くから提案内容を考えていたと推測。
(ⅱ)B案も提案書のレベルが高い…9月1日募集開始で11月16日締め切りと云う短期間で、あれほど質・量とも充実した提案書が作れたとは思えない。A案は白紙見直し表明前から検討していたのは確実と思われるが、B案もA案ほどではなくても事前検討してないと出来ないレベルの提案書ではないか。

なお、(ⅱ)については伊東氏発言によると9月1日募集開始どころか、9月18日参加申請期限ぎりぎりで、やると決まったとのこと。そこから提案締め切りまで2か月弱しかなかった。そのような短期間で詳細な提案書が出来たとすると同氏を含む竹中チームは凄い能力と云うことになる。
(ⅰ)についても伊東氏の主張が事実とするなら、少なくとも竹中チームの方は官邸チームやJSCとの間で官製談合は存在しないことになる。しかし、新コンペに関して次のような疑問や疑惑がある。

①JSCによる「旧計画成果の最大限活用」意向表明ZHAとの契約を一方的とも言える形で解除しながら何故そのような意向を議事録に載る形で第一回会議において表明したか。その際に著作権問題等はどう考えていたか。
②JSCによるザハ案資料提示…同議事録で「可能な限り参加者に(ザハ案の)資料を提示する」となっているが、竹中チームはJSCのザハ案活用意向を知っていたか?資料提示は受けたか?受けた場合も使用しなかったと思われるが何故か?
③竹中チームの認識…JSCから大成チームがザハ案活用することを聞いていたか?或いは何らかの形で知っていたか。
④審査採点疑惑…審査員の香山氏が仮採点疑惑の状況を複数回にわたって述べている
⑤審査委員会人事…官邸チームの母体となっている国交省官庁営繕部の人脈で固められていて同チームが審査をコントロールしたのではないか(香山氏も同人脈の範疇と想定されて制御可能と思われたか)
⑥官製談合…全体を通して官邸チームが主導し、ゼネコンが協力した官製談合の疑惑がある(というか確実に官製談合有り)

このような状態においては、「B案の方が優れている」と確信するのであれば、昨日追記でも述べたように早急に訴訟等も含めた異議申し立てを行って、再審査やコンペやり直しを求めるべきではないか。
少なくとも上記③に関して伊東氏はA案の流用を確実と認識していて、竹中の担当者も説明者で参加した公開シンポジウムで流用証明図を見せている。また同シンポジウムで④採点疑惑の現場状況を香山氏が説明した。結果的に、B案チームは①②も含めた新コンペの重大な問題を認識しているのだから、法的措置を含めた強力な対応を取るべき。そうでないと逆に前述の(ⅰ)(ⅱ)の方が真相で竹中も加わった⑤⑥のような官製談合が存在することになってしまう。

隈氏のように「流用全否定」という虚偽を押し通したままA案で建てれば将来に禍根を残す。B案の方が優れていて虚偽も避けられることを知っているB案チームが、教訓で済ますだけでなく具体的かつ強力な措置をとることは国民のためにもなる。その結果として、このままA案で建てることを良しとしない選択になった場合に五輪対応をどうするかは、まず国として嘘をつかないという道義面を優先させ、嘘を排除してから政府が国民も含めて議論すればよいと思う。猪瀬氏のように「レールがもう敷かれているから」という、なし崩しの発想だけでは真に国民のためになるか疑問。伊東氏と竹中の今後の動きを注目していきたい。

以上
[追記]
先日記事において紹介済みの件で、官邸HPに聖火台検討ワーキングチームの議事資料が出ている。しかし、報道では取り上げられていないようである(少なくとも当方はまだ見ていない)。聖火台問題の経緯は大体これで分る重要な内容になっている。報道機関は早く取り上げて、これに基づいて更に突っ込んだ取材の記事を出してもらいたいもの。

追記以上