kensyou_jikenboのブログ

yahoo!ブログの同名ブログを移行しました

聖火台問題5…責任の所在

森元総理が以下のような発言をしてネットで叩かれている。
組織委員会ばっかり悪者にしてね。あれ一番悪いのは馳浩文部科学相)です。文部科学省です」
恒例行事とも言えて(笑)、子飼いの馳大臣の名前を出しているところが、お得意の「小芝居」とよく分る。それを叩くのもお約束とはいえ、結果として実質的な責任の所在が隠されてしまっている。昨日記事でも書いた官邸の「再検討推進室」。新国立競技場建設プロジェクトは2015年初頭の或る時期(多分2月~4月までの間)から和泉総理補佐官が率いる官邸チームが主導し、7月の白紙見直し表明後には正式に「整備計画再検討推進室」(以下推進室、同室)となって新コンペを取り仕切った。大失敗して当事者能力を無くした文科省・JSCは推進室にお任せで、組織委員会も新国立競技場に関しては右に倣え状態と想定される。
官僚の仕事は明確な司令塔が存在しなくて混迷することが多い。本プロジェクトも一見そのように思われるが、実際は和泉補佐官という官房長官の後ろ盾も得た強力な司令塔がいる珍しい状況。しかし、同氏はなかなか表に出ないので、プロジェクト推進の実態は分らない。つまり、強力なリーダーがいるのに表に出ないため、結果的にどうなっているか分らないという異様な状態になっている。

しかし、今回の聖火台問題は基本的に推進室の責任が大きいと推測される。同室が作成したと考えられる「業務要求水準書」(新コンペ応募要項相当)の中に「開閉会式」への言及はあるが、聖火台をどうするかの明確な規定はない(旧聖火台の保存規定は別に有る)。該当箇所を示す。

イメージ 2

非常に微妙な内容になっていて、開閉会式式を意識していることは確実だが、「聖火台」という言葉は入っていない。これではゼネコンが聖火台について質問するのは当然だが、JSCはこれまでの記事で紹介しているように「新しい聖火台工事は本事業の対象外です」ときっぱり文書回答している。この回答を推進室も了承していたかどうかが重要。JSCが自主判断で同室に知らせずに回答したなら同室の責任は小さくなる。もし知っていたなら、同室の責任も重大(JSCに組織委員会との調整を指示することが必要だった)。JSC・文科省の失敗の後始末をしているとはいえ、特に新コンペは当初から同室が主導したと想定され責任は免れない。(審査委員会人事や審査のやり方などでも主導は明らか)

この辺の経緯は今後の失敗防止のためにも明らかにしておくべきだが、推進室が主導した白紙見直し経過は政府検証委員会の検証対象から外され、マスコミも森氏の小芝居に幻惑されたりして推進室の動きに迫れていない(JSC・文科省のバックで同室がコントロールしていることさえもずっとスルー)。日本の政府は民主主義のはずなのに、国家プロジェクトでこれほど大規模な隠ぺいが常態化しているのは民主主義の危機とも言えるのではないか。安全保障のような問題ではないのだから、政府は経緯を公表すべきだし、マスコミも公開を求めてもらいたい。

以上
[追記]
本文で紹介した新コンペの応募要項に当たる「業務要求水準書」はJSCの名義になっているが、「業務要求水準書」という言葉自体が国交省用語で同省からの出向者が中心の推進室が作成したことは確実(第1回審査委員会から既に草案が出されていた)。
更に第2回審査委員会(平成27年8月25日)の配布資料だった「内閣官房提出資料(その1)」は、「3つのアプローチ」などの基本方針から「面積の見直し」・「コストの算定」という詳細まで書かれている。「内閣官房提出」だから推進室が見直し計画を主導していたことを更に明確にする資料。

なお、「内閣官房提出資料(その2)」は公開されておらず何が書いてあるか不明で、こういうところにも疑問がある。また、前述の(その1)の方にも「免震用特殊装置」という本プロジェクトの書類で他に見たことがない言葉が出ている。キールアーチを取り止めると、これも見直しが出来るようである。屋根部が950億円→238億円に下がる中で重要な要因だったようなので、どのようなものか情報公開して欲しいところ。また、ザハ案で検証委員会でも明確にならなかった以下の「新国立競技場の特殊性」の手掛かりはこの辺かも知れない(推進室はそれを掴んで公表していないことになりそう)。
イメージ 1

追記以上