聖火台問題6…経過検証
聖火台問題は今月になって急に浮上してきた印象があるが、経過を報道などから検証してみる。
①2016年の動き
”聖火台に川口鋳物を 五輪相に市長ら要望書”2016.2.20 産経新聞
<2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場(東京都新宿区)の聖火台について、川口市の奧ノ木信夫市長と川口商工会議所の児玉洋介会頭らは(2月)19日、遠藤利明五輪相に対し、1964年東京五輪に続き、川口鋳物の使用を求める要望書を提出した。…
川口市は平成25年4月から関係機関への要望活動を開始。五輪担当相に対しては初めてで、新藤義孝衆院議員(埼玉2区)が同行した。大会組織委員会(森喜朗会長)と日本スポーツ振興センター(大東和美理事長)も訪問し、改めて要望書を手渡した。…
大臣室で要望書を受け取った遠藤五輪相は「組織委が最終決定するが、日本の伝統産業や歴史を踏まえて対応したい。十分に頭に入れて進めたい」と応じた。>
直近の問題浮上の直接的な切っ掛けとして、この先月2月19日訪問があるのではないか。遠藤五輪大臣・森組織委員長・大東JSC理事長と主だったところのトップを回っている。この中の誰かや同席した関係幹部などが組織委員会やJSCに「聖火台はどうなっているか」と確認し発覚したとすれば辻褄が合う。遠藤大臣は「最終的に組織委員会が決定する」という認識だったことも重要。
また、その前の1月28日にも同大臣の地元である山形県などからの申し入れがあった。
”縄文土器、土偶を聖火台デザインに 舟形町長らが遠藤五輪相に要望”2016年01月29日 山形新聞
<炎が燃え上がるような装飾の「火焔(かえん)型土器」が見つかった新潟県十日町市、優美なデザインの「縄文の女神」が発掘された山形県舟形町など、国宝に指定された縄文時代の土器、土偶が出土した全国3市町の首長が28日、遠藤利明五輪相(衆院県1区)と面談、2020年の東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場に、これら国宝をデザインした聖火台を設置するよう要望した。…>
地元を含む3地域からの要望でもあるし、この時に同大臣が状況確認などをさせていれば、ここまで騒ぎにならずに収拾できる時間は充分あったと思われる。やはり手腕に疑問符が付かざるを得ない。
②昨年までの動き
”「聖火台また川口の鋳物で」五輪相に要望書”2013年12月18日 読売新聞
この時は下村文科大臣あてに提出したようである。これがJSCや翌年2014年1月発足の五輪組織委員会等にどう伝えられていたか、或いは伝わっていなかったのか。
”天水桶 71”2014-06-01 ブログ
<(2014年)1月30日の富山県内のニュースによれば、
鬼澤元理事の名前まで出てきた。同氏は設計会社の対応に憤りを見せていたという記事があって、ちゃんとやろうとしていたようにも思えたが、聖火台の件ではどうだったのだろうか。ザハ案時の経緯を同氏や山崎元本部長などは知っている。外部設置案が有ったのならば、政府はその内容を概要でも明らかにすべき。
更に川口市からは2014年6月にも要望書が出ている。
”2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に係る要望書” 平成26年(2014年)6月24日 川口市長、鋳物組合他
<前回の東京オリンピックと同様に、新国立競技場の聖火台については、是非とも川口鋳物の製品を発注していただきたい>
2015年に関しても、例えば前項記事の最後に遠藤大臣への山形市申し入れも書かれている。
<山形市の佐藤孝弘市長は昨年(2015年)12月、遠藤氏に対し、新国立競技場に山形鋳物を使用した聖火台を設置するよう要望している>
これほど聖火台は注目され、様々な地域から要望が出ていたのに設置の考慮が抜けていたとは信じがたい話であるが、これがまさに官僚クオリティなのか。また政治家も遠藤大臣は地元選挙区からの要望にさえ反応が鈍かったようである。
③JSCの姿勢
昨年の検証委員会のZHAヒアリング結果にJSCの姿勢に関する記述がある。
構造設計に基本的欠陥の疑いがあるZHAの言うことをそのまま信じてよいかということはあるが、このところのJSC対応を見ていても実際にこのようなことが有った可能性は高いように思える。官僚の縦割り・責任回避の習性が現れた端的な例と云うことか。実態は大きな不祥事であり、再発防止のために組織委員会ともども検証すべきと思うが、また有耶無耶のまま進んでいきそうな情勢。
以上