日経アーキ記事゛新コンペ仮採点問題香山氏インタビュー゛
表題の件の前に、まず流用問題に関する中日新聞の記事。
”新旧の内部構造「似てる」 新国立案” 2016/3/9 中日新聞
購読者専用会員制のため見れるのは冒頭部分のみだが、流用問題のポイントが的確に書かれていて、証拠の伊東氏シンポジウム図もしっかり掲載されている。
やはり、これだけ明白な流用と虚偽説明はメディアが動き出すという気もするし、動くべき。特に新聞より複数頁で詳しい内容を載せやすい雑誌に期待。週刊文春は芸能ネタや不倫ばかりでなく、甘利大臣秘書問題よりも本質的には重大な国家的問題のこちらのスクープをやってもらいたいし、文藝春秋も由利俊太郎氏記事の続報を考えてもらいたい。
そのような中で表題のように、専門誌の本命と言える日経アーキテクチャが新コンペ審査の仮採点問題について審査委員香山氏のインタビューを掲載したので抜粋を示す。(是非会員登録して全文お読みください)
”「新国立」問題にモノ申す!!
----日経アーキ記事引用1回目開始----
――「本採点1時間前の仮採点の実施」など議事録で公開されていない事実もあり、選定方式には課題がたくさんありました。
香山:・・・両陣営へのヒアリングを終えて、審査委員会が総意としてどのようにA案、B案を評価しているか。その状況を見るために、日本スポーツ振興センター(JSC)が各委員の点をいったん集計することになりました。
ずいぶんと待った後にJSCが審査項目ごとに仮採点した資料を委員に配りました。この表を私は確認しています。合計点については暗算しませんでしたが、委員会の総意は採点日までに続けてきた議論通りで、個別の審査項目によって目立った点の開きはありませんでした。
仮採点からしばらく後の夕方ごろに実施した本採点では、仮採点で確認した内容と違った結果が出てきました。審査結果は「工期短縮」の項目(A案が177点、B案が150点)で大きな開きがあります。驚きました。仮採点の時点では、これほど大きな差はなかったと記憶していたためです。
――仮採点の結果を示す資料はないのでしょうか。
香山:記録は残っていません。本採点は委員会の決定なので記録がありますが、「仮採点は検討会や勉強会の一部としており、正式な委員会ではないため資料を残さない」との説明でした。「あれは委員会のはずでしょう」とJSCに問い合わせても、「公のプロセスではない」との返答でした。
そもそも仮集計を委員会で確認した際に、特定の項目で大きな採点の開きがあれば、本来なら議論になっていた。「どうして両案にこれほど大きな差が付くのか」と話し合ったはずです
7人の審査委員がどのように採点したかは、それぞれ知らされていません。不可解な結果となりましたが、今となっては「何が起こっていたのか」は分かりません。
――仮採点に関して「審査委員が評価を公表していない以上、変な操作につながったと思われても仕方がない」と過去に発言されています。
香山:少なくとも何人かの委員はそう思ったでしょう。疑惑を払しょくするためにも、「誰がどのように点数を付けたのか」を絶対に公表しなければならないと考えます。
委員会の議事録は公表されましたが、各委員の採点表も併せて公表すべきでしょう。そうでなければ無責任です。周りから疑われても仕方がない。
しかし、JSCは最初の委員会で認めた規約に、委員の匿名性について説明してあり、その内容について同意を得たはずだとの立場です。
----引用1回目終了----
香山氏は思い切って発言しておられる。日経アーキが付けたまとめでは以下のようになっている。
<委員の1人である香山壽夫・東京大学名誉教授は「仮採点では特定の審査項目で、A案とB案に大きな差はなかった」と明かす。>
この重大な疑惑をそのままにしておくのだろうか。特に建築設計界は姿勢が問われると思う。個人的にズバリ言ってしまうと、旧計画で最初に声を上げた「槙文彦氏」が今回も動いていただきたい。流用問題について「I'm not sure it's a copy」(それがコピーかどうか分かりません)と英字紙に曖昧な見解を述べているばかりでなく、審査問題も含め建築設計界を代表して踏み込んだ発言をお願いしたい。槙氏論文を最初に載せて、その後も提言を続けたJIAも更に役割を果たしていただきたい。
なお、香山氏は予想以上に危機感をお持ちのようで、勇気ある発言を先日シンポジウムなどに続いてしておられる。しかし、日経アーキ記事の以下の内容に関しては、新コンペの問題はもっと深刻ではないだろうか。
---日経アーキ記事引用2回目開始----
――なぜ今回のような選定方式になったのでしょうか。
その結果、選定の過程はどうなったか。委員会では「A案はこの部分が良い」「B案はあの部分が評価できる」という議論になりませんでした。「この案を選べば、こうした想定ができる」という方法論を語ることができなかった。つまり、総合的な判断ができなかったのです。
――「専門家としての建築家」を世間が信用しなくなっています。
香山:この問題の根は深い。公共建築などのコンペである建築家が選ばれても、しばらくすると世の中の不満の声が高まってきます。その不満のクライマックスがザハ・ハディド案の選定でした。
ザハ・ハディド案の選定に際して、コストに関する議論が欠落していた。この一件はコンペにおける審査の価値を大いに貶めました。建築家はコストを考えないのかと。
----引用2回目終了----
同氏は、<ザハ・ハディド案はインパクトだけで選ばれた。あれはやってはいけなかった。>と言っておられるが、旧計画国際コンペの方が議事録等を見ても公正だった。コンペは公正が第一。その意味では、新コンペ審査は国際コンペより遥かに劣ると思われるし、官製談合にもなる。建築設計界は流用問題含め新コンペを検証し、その結果を踏まえて新国立競技場問題全体から得られた教訓を基に自浄作用を発揮していかないと信頼回復につながっていかない。B案については先日シンポジウムが有ったが、旧計画の問題でシンポジウム等を主催していた方々などは、この状況になってもまだ動かないのだろうか。
以上