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デザイン監修料

2014年2月5日に民主党(当時)の有田芳生参院議員が新国立競技場に関して国会質問を行っている。2013年12月にフレームワーク設計が終わり、年明けから基本設計が始まっていた時期になる。

----質疑応答抜粋開始----
有田:おかしな選考経過なんですが、ザハ・ハディドさんへの謝礼はいくらですか?
久保(文部科学省スポーツ・青年局長):賞金が2000万円と、あと監修料が3億円と聞いております。
有田:これから監修料などを含めて13億お払いになるんじゃないですか?
久保:それにつきましてはまだ決まっておりません。
有田:さっき示したような上からだけのデザインコンクールをやってそこに賞金2000万円、さらに今後監修料として13億払うと、これは自民党の無駄遣い撲滅プロジェクトにそう返答されてるんですよ。大臣いかがですか? ちょっと普通の金額じゃないんではないかと思いますけども。どうお考えですか?
下村:まあこのデザインがですね、選ばれたということでこのデザインを基本ですが、デザイン通りの設計ではなくて、これは当初の案よりも相当縮小してですね。コンパクトにしております。ですからコンパクトの中での設計でのことですので、今局長から答弁がありましたが、金額そのものもですね、変更ありうる話だと思います。
----抜粋終了----

重要と思われるのは、久保局長が「監修料3億円」と言っている。当方は大事業のコンペ賞金が2000万円では労力の割りに安過ぎるのではないかとずっと思って来たが、ここで監修料「3億円」の話が出ていた。有田氏が質問した13億円の方は、監修料に加えてZHAが設計に参加して主導する分まで含めた金額をJSCが考えていたことを意味すると思われる。

当初のJSC構想を推測してみると、ZHAに監修料は支払うが、実際の設計作業は改めて公募して選定する日本の設計会社に担当させる目論見だったことは間違いないだろう。その際の設計会社JVは業界トップの日建設計を中心とすることも決めていたと思われる(官製談合)。
しかし、ZHAが設計関与を要求して来てJSCが断り切れなかったことが、迷走の大きな原因になったと当方は推測している。更にJSC構想に無かったはずのアラップも設計JVに入れさせて、ZHAの影響力は増した。

JSCからすれば、ZHAには殆ど仕事をしてもらわなくても、要所でデザインに関するアドバイスや承認を貰えば監修料を満額払うことにして、良い条件を出したつもりだったと推察する。しかし、ZHAが、それでは満足しなかったところにJSCの悲劇が生まれた。加えて構造設計に根本的欠陥があったのにZHAを含めた設計チームが修正できず、ずるずる弥縫策を重ねてしまった。

旧計画の設計プロセスに関して、例えば安藤忠雄氏は雑誌のインタビューで以下のように述べている。
<倍近くに跳ね上がった工事金額に世論が疑問を呈したのは理解できます。自分自身、驚いた。しかし、”白紙撤回”は行き過ぎではなかったかと思います。コストが問題ならば、事業者と設計者と施工者で、計画を変更調整するのが当たり前の建築プロセス。

この「当たり前のプロセス」が、ゼネコン参加以前のZHAが主導した設計段階では出来なかった。その様子が文芸春秋「由利俊太郎」氏記事の以下部分と思う。
----文芸春秋記事引用開始----
ザハ・ハディドの影響力」
東京が招致に成功すると、ザハ氏はデザイン案採用だけにとどまらず、JSCに「設計にも関与させてほしい」と要求を突きつけたという。
 JSC広報室が説明する。「ザハ・ハディド・アーキテクツより基本設計を行いたいと申し出があったのは事実です。しかしながら公募型プロポーザルで選定することが決まっており、直接随意契約することは困難なためお断りしています」
 ところがそれでもザハ氏は納得せず、結局、JSCと基本設計の「デザイン監修業務」を契約することに成功する。これが、設計段階でいくら難点が顕わになっても、ザハ案が維持され続けた大きな理由だ。・・・
 ザハ氏側から『うちのデザインを生かすには、アラップ社の優れた構造計算の力が必要だ』と口添えがあり、設計JVに組み込んだ・・・
----引用終了----

ちなみに、< JSCと基本設計の「デザイン監修業務」を契約することに成功 >というのは、3億ではなく13億の契約を得たことを意味すると推測。3億なら元々予定の範疇の契約でJSCも断らないだろうし、「成功」と言うまでもない。実際の契約に関しては、まだ不可解な点があり今後検討予定。

なお、JSCには設計の問題点がどこまで知らされていたか不明な面があり、構造設計の詳細経緯を知るのはZHA&アラップと日建設計になるだろう。しかし、設計JVの中心だった日建設計が完黙状態を続けている。国民の税金や資金を使う仕事で、費用面だけでなくラグビーW杯に間に合わない等の機会損失、国際的信用失墜なども発生させているのに余りにも無責任。日建設計のだんまりの壁をどこかの報道機関が取材で突破してくれないだろうか。ジャーナリズムの底力が問われる。

以上