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契約基準と類似点の考察追加

GW明けから一週間経過したが、上林氏から以下の懸案について追加コメントはまだ無し。
 (1)流用問題否定の証明になる作図
 (2)国の公共工事の契約例
この中で(2)に関連して、契約基準における「著作物等の利用の承諾(許諾)」の条文が、JSCと国交省官庁営繕部(条文A)で違いがあることが当方比較で見い出せた。
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著作物等の利用の承諾
第8 受注者は成果物が著作物に該当するとしないとにかかわらず、次の各号に掲げる成果物の利用を発注者に承諾する。この場合において、受注者は、次の各号に掲げる成果物の利用を発注者以外の第三者に承諾してはならない。
 ①成果物を利用して建造物を完成すること。
 ②前号の目的又は本件建造物の増築、改築、修繕、模様替え、維持、管理、運営若しくは広報等のために必要な範囲で成果物を複製又は変形、改変、修正その他翻案すること。
 ③前2号の目的又は発注者の事業の必要に応じて成果物の複製物等を頒布すること。
2 発注者は、本件建造物が著作物に該当するとしないとにかかわらず、次の各号に掲げる本件建造物の利用を行うことができる。
 ①本件建造物を写真、模型、絵画その他の手法により表現すること。
 ②発注者の事業の必要に応じて本件建造物の複製物等を頒布すること。
 ③本件建造物を増築、改築、修繕若しくは模様替えにより変形し、若しくは改変し、又は取り壊すこと。

2. ”建築設計業務委託契約書” 国交省官庁営繕部
条文A
著作物等の利用の許諾
第8条 受注者は発注者に対し、次の各号に掲げる成果物の利用を許諾する。この場合において、受注者は次の各号に掲げる成果物の利用を発注者以外の第三者に許諾してはならない。
一 成果物を利用して建築物を1棟(成果物が2以上の構えを成す建築物の建築をその内容としているときは、各構えにつき1棟ずつ)完成すること。
二 前号の目的及び本件建築物の増築、改築、修繕、模様替、維持、管理、運営、広報等のために必要な範囲で、成果物を発注者が自ら複製し、若しくは翻案、変形、改変その他の修正をすること又は発注者の委託した第三者をして複製させ、若しくは翻案、変形、改変その他の修正をさせること。
受注者は、発注者に対し、次の各号に掲げる本件建築物の利用を許諾する。
一 本件建築物を写真、模型、絵画その他の媒体により表現すること。
二 本件建築物を増築し、改築し、修繕し、模様替により改変し、又は取り壊すこと。
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JSCの方は「成果物が著作物に該当するとしないとにかかわらず」となっている。
上林氏は、4月13日産経新聞記事で、< 日本の国内法においては、機能的なアイデアはそれ自体として保護の対象にはなりません。ザハ氏のアイデアについても保護の対象とはならないでしょう。>と述べておられる。

これについて当方は知財に詳しい弁護士の方が書いておられる「薄い著作権の理論」を適用できるのではないかと云う論考を行った。しかし、それとは別に上記JSCの契約基準条文だと、著作物に該当しなくても、つまり著作権による保護対象でない部分でも成果物を流用したら契約違反になる可能性があると思われる。ただし、JSCの条文に、「発注者が他者に利用を許諾する場合」については書かれていないが、相対契約で発注者側にも受注側と同様の制約がかかると解することも可能ではないか。

なお、契約に関しては上林氏も以下のように述べておられる。
< 一点だけ気になることがあるとすれば、ザハ事務所との契約内容です。今回は通常の公共施設と違い、ザハ氏は設計者としてではなくデザイン監修者として参加しており、権利の範囲について通常とは違う契約がなされている可能性はあり得ます。しかしながら、一般に監修者の権利範囲は設計者よりも狭いことが多いようです。>

実態においては、< 監修者の権利範囲は設計者よりも狭い >との見方は、当事者証言や「デザイン監修仕様書」等からZHAは「監修者+設計実務者+主導者」となって、設計者より権利範囲は広くなるように思える。その上でJSCの上記基準がある。

最終的には訴訟になった場合の裁判所の判断になるが、JSC自体は基準条文を当然知っている。この内容で契約を結んでいるとしたら、鬼澤理事が以下のように不安を漏らしていたことも理解出来てくるように思う。
<あの狭い空間に8万の座席を収めること自体、極めて高い能力。一からやると大変。でも一部でも似た設計となると(ザハ氏が)『私の知的所有権ですよ』と言う可能性が高い」。・・・ザハ案を知っている人たちと契約したら、それ自体が係争を招く恐れがある。>

やはり契約上はJSC不利に思えて来る。更に一方的な契約解除の形になっていることも有り、構造設計の問題を持ち出すなどしない限り、ZHA側に押されてしまうだろう。5月も半ばになったが、今月中の決着は出来るのだろうか。決着する場合は、どのような形になるか。

なお、冒頭の(1)に関しても新たな類似点があった。A案ではスタンドの外側に「3層目スタンドエントランス」が4カ所ある。そして4カ所ともザハ案キールアーチ根元部分に相当する位置の直近にある。図で示す。

イメージ 1

ザハ案からキールアーチを削除すると根元部分のスペースが空く。当該エントランスはキールアーチ根元部そのものの位置ではないが、根元周辺のスペースも空くので、そこに配置したようにも見える。類似性が問題になる箇所はZHAから見ると、まだまだ出て来ると思える。

以上