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(続)デザイン監修料

昨日記事に関してツィートが有った。
@_kyzkaさん
 当初、3億円とされていた監修料が13億円に膨らんだ経緯をつつくkensyou氏。
 考えてみると、この10億円の差も今まで誰も納得のいく説明をしていないんだよなぁ…>

全くその通りで、まず賞金「2000万円」が安すぎることについて建築家の方々が論評しないのが不思議だった。「監修者」を選ぶコンペは異例と言っても、賞金が高ければ辻褄が合うのではないか、と当方はずっと考えて来た。それに対して文科省局長の国会答弁で監修料「3億円」の話が出ていたことが分かったので、昨日記事にした次第。つまり賞金は「3億2千万円」と考えたら、デザインコンセプト募集のコンペとして有りとも言えるのではないか。

経済原理として成り立つなら応募する選択も有り得る。応募期間約2か月での概略設計とパース作成等の行為に対して、当選すれば3億2千万円の見返りが得られる。経費の掛かる模型も不要だった。その上で後述のように要項上は基本設計・実施設計も取れる可能性が有る。落選のリスクは有っても、挑戦する価値があると思う人は出て来るだろう(実際応募46作品)。

もし監修者に留まって設計に関与できなくても、当選後に設計経費を掛けなくて済むのだから監修料は殆ど利益になる。それでいて東京五輪競技場のコンペ優勝者と設計監修者の栄誉は手に入る。悪くない条件、或いは好条件とも言えるのではないか。デザインコンペを批判する声は多かったが、こういうビジネスライクな話をする建築家がいないのは全く不思議だった。

そして、余り言われていない点であるがコンペ募集要項は、「入賞有無に関わらず、基本設計・実施設計の公募に応募できる」という規定だった。監修者で絶対終わりと云う訳ではなかった。
----デザインコンペ応募要項抜粋開始----
20.デザイン監修、設計及び工事との関連
(1)最優秀者は、デザイン監修を行う。
(2)デザイン監修は、本募集要項4.2に示した事項に関して、提案のとおりに基本・実施設計及び施工が実施されているかを確認し、必要な場合には、修正の提案を行い、また、本募集要項4.2に示した事項に関する基本・実施設計者及び施工者の要望や質疑について回答などを行うことをいう。
(3)基本設計及び実施設計の設計者は、今後、改めて公募型プロポーザルを行い選定する。なお、入賞の有無にかかわらず全ての応募者は、公募型設計プロポーザルに応募することができる。
また、最優秀者と他の応募者との公平性を保つ必要があるため、すべての情報を開示し、審査基準に従って公正に選定することとする。
----抜粋終了----

ただし、本来は最優秀作品の応募者が設計を担当するのが筋だから、変な規定ではある。また、JSCは解体工事入札でも揉めたように談合体質のようで、この規定があっても日建設計JVに落札させるつもりだったとは思うが、最優秀作品応募者がゴネたらどうするつもりだったのだろうか(笑) この規定や監修料について応募者には何か事前説明が有ったのだろうか。デザインコンペにも応募した伊東豊雄氏などに聞いてみたいところ。

なお、「10億円の差」については、ZHAが監修者を越えて設計に関与し主導したことを考慮すれば、アップしたこと自体は妥当。ただし、以下のように本来関与を減らしていたはずの実施設計段階での監修料が格段に高い「9億3千万円」になっていることは不可解。
 ・フレームワーク設計…2億円
 ・基本設計…2億円
 ・実施設計…9億3千万円

更にこれらは全て随意契約(随契)だった。昨日引用した文藝春秋由利氏記事や上記要項にあるように、JSCは設計の契約を公募にする段取りだった。それに対して、特に9億円3千万円もの実施設計時契約を、どうやって随契に持ち込んだかと云う疑問も湧く。そして随契だと資金操作がやりやすくなるという面も出て来る。例えば発注先との「握り」により、「監修料+設計料」に更に上乗せした金額で発注しておいて上乗せ分を還流させることも、やろうと思えば可能になる。

お金に関して曖昧な面があると色々考えられて来る。特に今は招致段階での賄賂疑惑が出ている。監修料に関係するかどうかは分らないが、由利氏記事に「ザハ・ハディドの影響力」 という項目があることを当ブログ昨年10月13日記事で紹介し考察も行った。
----由利氏記事のIOC関連部分引用開始----
<「一二年ロンドン五輪で、ザハ氏は水泳競技場を提案して採用され、IOCに注目されました。ただし、この会場も当初予定の約百七十億円から三倍の約五百二十億円に総工費は膨れました。それでも安藤氏は、ザハ氏のIOCへのアピール力に目を付けたんです
→これはどのようなアピール力なのだろうか。スポーツ機関も特に欧州が仕切る組織はFIFAで露呈したように金権体質が根底にあるようで、IOCも以前に招致で不祥事があった。単なるアピールだけでなく、お金が絡むと話は複雑になるが、仮にもし裏で何かあっても表には出て来にくいだろうとは思う。
----引用終了----

このように「招致に関してもZHAの協力を得ているのではないか」と云うことも由利氏記事から読み取れるが、もしそういうことが有ったとしても表に出て来ないものだと思っていた。また今までのところの招致疑惑にはZHA関係(アラップ含む)の名前は出て来ていない。

それは承知の上で念のために憶測として考えてみる。仮に招致活動の裏でZHAにも動いてもらうとしたら、IOC関係者へのロビー活動費や工作資金等を監修料に上乗せすることは、前述のように握っておけば可能になる(時期的にずれても立替えて貰って後で支払える)。

そのためにはコンペ段階から仕掛けがあっても不思議ではなくなるが、審査議事録の討議経過を見ると、当方印象として出来レースはあまり感じられなかった。安藤氏の最終判断はあったが、最終選考にZHAが残るまでの過程での操作は感じられず、日経アーキの読者投票等でザハ案が大差のトップだったようにインパクトが有ったから最終判断でZHAを選んだことも妥当性は有った。

ただし、由利氏記事で< 安藤氏は、ザハ氏のIOCへのアピール力に目を付けた >となっている。これはコンペでZHAを勝たさないと意味が無いので、やはり何か裏は有ったかも、という気もする(事前に予定していた応募者(ZHA)の作品の評価が高くて、そのまま決まったということは有り得るかも知れない)。
結局デザインコンペで何らかの出来レースがあったかどうかに関する当方考慮点は以下の相反する二つ。
 (1) 審査議事録からは出来レースは伺えないように思う
 (2) 由利氏記事にあるザハ氏のIOC影響力利用にはZHAのコンペ勝利が必須

直感的には今までのところ五分五分の感じだが、関係者の誰かが招致を確実化するために画策していないとは言い切れず、次のような読みも有り得るかも知れない。五輪招致は以前から魑魅魍魎の世界。
@a_la_clefさん
 TOKYO2020は「絶対」
 だからなんでも逆算出来るというコンサルからの提案。
 ゆえに全て(第一コンペも)は「絶対」完遂のためのネタ。…>

以上