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「フライデー誌ザハ記事」及び「JSCとの契約内容」

今週号のフライデーにザハの記事が出た。「独占直撃」となっているが、実際は事務所の広報担当を通しての話とのこと。JSCが送ったという契約関係部分を抜粋。テレグラフ紙報道等で既に知られた内容だが、日本メディアによって改めて確認されたという意味はあると思う。

----フライデー記事抜粋開始---
ザハ・ハディド「100億円訴訟へ!」 「怒りは頂点に達しています」
JSCが新たに作成した契約書には、次のように書かれているという。
<新しい勝者(隈健吾氏)は、著作権に関係なく、当初の設計のいかなる部分も使うことを許される>
<追加の料金を払わずに設計に変更を加えることもできる。ザハ・ハディド氏はそれに対し一切の異議なく同意しなければならない>
ザハ・ハディド氏はJSCの評判を傷つけようとするいかなる行為もしてはならない>
----抜粋終了----

旧計画の知財権利関係では、JSC・ZHA両者の立場の違いがポイントだったのではないかと思う
 ・JSC…新国立競技場だけに自由に著作権が使えればよい
 ・ZHA…他スタジアム等の設計を請け負った際に自由に使えるよう著作権は保持したい

JSCは他に国立競技場を作ることもないし、仮に作ることになっても遥か先の話で設計は全く変わり、「ZHAの著作権は必要ない」と想定できる。しかしZHAにとっては他の仕事の可能性があるため必要。よって「ZHA側は著作権の保持を要求し、JSC側は新国立競技場だけに自由に使えれば良いのでZHAの要求を呑んだ」と想定すればZHAとJSCの関係は辻褄が合うのではないか。このように考えてみていたら、昨日記事で言及した相坂氏ツィートの中に以下の記述があった。
JSCの予防線としては、当初コンペ募集要項の確認書の6条2(4)、「著作権は乙にあるが、それを基本・実施設計へ甲が複製使用する権利を無償で許諾する」という一文だったんだと思う>(2016年1月14日)

該当文は国際コンペ募集要項の最後にある「確認書」に入っているので抜粋。
----「確認書」第6条抜粋開始----
確認書(案) 甲:JSC、乙:最優秀作品製作者)
(最優秀作品の著作権
第6条 最優秀作品の著作権は、乙に帰属する。
2 乙は甲に対して、以下の目的のために、最優秀作品を複製し使用する権利を期間の制限なく無償で許諾する。以下の目的を実施するに必要な範囲で、甲は第三者に対して再許諾することができる。
(1) 最優秀作品を掲載した作品集の出版
(2) 最優秀作品を撮影した映像記録の公開
(3) 最優秀作品に関するロゴ又はキャラクター等(以下「ロゴ等」という。)の作成
(4) 新国立競技場の基本設計及び実施設計
(5) 平成31年に日本で開催されるラグビーワールドカップ及び東京2020オリンピック・パラリンピック(招致)等の国立競技場で行われる大会・イベントの広報・招致活動
(6) 甲又は甲が指定する第三者が行う広報活動
(7) その他上記各号に関連する行為
----抜粋終了----

相坂氏は「JSCの予防線」と見ておられる。その面もあったかも知れないが、前述のZHAだけでなく各応募設計者側は著作権を保持したいと思い、JSC側は新国立競技場にだけ自由に著作権を使えれば良いので、このような規定で双方に納得性が有ったと見る。当選したZHAも基本的に異存は無かったのではないか。

しかし、ご存知の通り状況が激変した。夢にも考えていなかった「白紙見直し」になったため、新コンペで再度設計案を決めることになった。ここで普通は総理が直接発表までして白紙化したばかりのザハ案流用を考えないと思う。しかし、全くの仮定の話になるが、日本側(官邸チーム・ゼネコン・JSC)の誰かが「新国立競技場の基本設計・実施設計ということでは同じではないか」と考えて、工期短縮の切り札としてザハ案流用を発想したことは考えられないだろうか。他の人たちもそれに乗ってしまって大成チームに流用させる段取りで新コンペに入ってしまったのではないか。
しかし結果的には、やはり「ZHAの許諾が必要ではないか」という流れになって、ZHA側に許諾を求めたら拒否されて暗礁に乗り上げたのが現状かも知れない。優秀な人たちが集まっていて考えられない事態と当方も思うが、総理が「白紙見直し」を国民に表明して一ケ月も経たないうちに、JSCが「最大限活用」意向を出したのも信じられない話。何が起きていても不思議ではないという意味で、仮定中の仮定としてこの経過も考えてみた。

それにしても、ZHAと話をつけないままで大幅流用したのは、やはり信じられないミスと思う。どのような水面下の事情があったのだろうか。

以上