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登場者検証3 「JSC」

日建設計とJSC日本スポーツ振興センター)との初期の係わりについては、鬼澤理事の前任者である「藤原」元理事のヒアリングで以下のように言及されている。
<○ 平成25 年7月2日13 時、設計JVの幹事社である日建設計から1,700 億円から2,000億円かかる可能性があるとの報告があった。同日15 時文部科学省に報告。デザイン競技の時の1位がザハ・ハディド案、2位がオーストラリアのコックス案だったのでコックス案への変更も可能ではないかと提案。文部科学省からもう一度デザインするのには時間がかかるのではないかと指摘。
JSCからはキールアーチをやめれば価格縮減できるのではないかとの提案もした。
同年7月22 日JSCに対し、設計JVよりフルスペックで可動式椅子、屋根を敷設した場合の建設費が3,300 億円縮減A案は屋根とホスピタリティ部分、特殊設備の簡素化で2,500 億円B案はA案の縮減に加え可動式の椅子と屋根を止める案で1,900 億円との提案があった。JSCから縮減案Bでも世の中は納得しないから更に最小限のものを作るべきとの話をした。日建設計からはそもそもザハ・ハディド事務所に修正を求めては、と提案があった。

これからするとプロジェクト開始当初は、日建設計は役割と責任を充分果たしていたと思える。やはりZHAが設計に参加してロンドンで設計チームが出来た頃から、だんだん引きづられていったのではないか。

なお一旦話は変わるが、昨日の推測なども含めて、このところの当方記事は憶測による「陰謀論」のようにも感じる方がおられるかも知れない(笑) しかし、技術者として回路やソフトウェアを相手にしていると、それらは幾らおかしな動きをしても陰謀ではあり得ない。ちゃんと論理的な動きをして不具合が出ているわけで、それを解明していくために仮説を立てて検証していく。今回のような社会的問題でも同様にやっているが、機械相手ではないので「仮説」があたかも「陰謀論」の様に見える場合もあると思う。また「憶測」を行う場合もあるが、それも含めて事態を説明するための「仮説」を立てているという考え方であることを、ここでご紹介させて頂く。なお、参考に当方とは違うやり方と思われる人の端的な例を[追記]で後述。

さて、話を戻して結果から見ると、JSCは白紙見直しによってコンペやり直しを余儀なくされ、更に独立行政法人の5段階評価で異例という最低の「D」評価を貰うことになってしまった。それがどれだけ実質的ダメージになったかは分からないが、大変な不祥事と認識されたことは確かである。

当方はZHAが商売最優先だったと分かって最初は驚いたが、思い直してみると欧州の企業は相当えげつないことをやってくる。直近ではVWがまさにそうである。或いは企業でなくても、スポーツ団体等で自分たちが不利になってくるとルールを変えることも良く知られている。だからそう思って付き合わない方が悪いということになるだろう。
ただし、日本人同士は違うと思っていたが、今回日建設計は御承知のように設計料満額いただいて大して責任も追求されていない。「D」評価を貰ったJSCは完全に割りを食ったと思う。だが不思議な事にJSC関係者のヒアリングを見ても「日建設計にしてやられた」というニュアンスを感じさせるものは当方が見た限り無かった。鬼澤理事でさえそうだった。JSCは専ら自らの問題を反省している立派な態度と言うべきか。(或いは今になっても本当に気づいていないか、又は官僚発想で元々責任自体を感じないか)

なお、そんなJSCにも疑惑はある。端的な例が見積り乖離における「新国立競技場の特殊性765億円」の件(11月2日記事参照)。本当に未だ特殊性の内訳を調べてないのだろうか。要因として出ている項目は”「屋根鉄骨」「スタンド鉄骨」「内外装」「大量の建設発生土」”になる。「噂」と明示して書かせて頂くと、「JSCは安い鉄骨(海外製など)を使うことにして見積りを低く見せているのではないか」という話はネット上で有った。

実際にも竹中はヒアリングで「大きな食い違いがあったのは、鉄骨の単価だった」と明言している。安い鉄骨使用を指示したのは設計JVではなくJSCではないかという疑惑になる。竹中は逆にキールアーチには普通より良質の鉄骨が必要と考えたら、見積り差は更に広がる。JSCはスタンド鉄骨も含めて無理な安値指示が表面化しないよう内訳を明らかにしなかったのではないか。
しかし、鉄骨価格差などで765億円もの説明を付けるのは困難だから、JSC側の隠蔽と一緒にZHA+日建設計による「安全性配慮に欠けた工法想定」や「スタンド全体免震化」などの無理な設計のコストアップも隠されてしまっているのではないか。

結局「ZHA+日建設計+JSC」の一蓮托生の話になってきてしまう(笑) もしこういうトライアングルを組まれたら外からの解明は容易では無いので、ここまでにしておこうと思う。ただ、このような複雑怪奇な状態だったとすると、他の登場者も含めて裏に「お金」の流れなども考える必要が有るのか無いのか。難しい話であるが、対処は「検証委員会を再開すべき」ということに尽きる。

以上
[追記]
上杉隆」氏が”悪いのは誰だ!新国立競技場」”という新書を出されている。読んでみると、まさに「玉石混交」という感じ。例を挙げると、安藤氏について<一部報道で取り沙汰されているような事実などはなく、本当に安藤個人がザハ案を選んだわけではなかったのだ。確かに審査委員長として、安藤には選考結果に対する責任はある。だが、メディアが批判的に報道したように、安藤個人が選考したという事実はない。その意味において、彼に責任はないのだ。>(P53)としている。

これは国際コンペ審査委員会の議事録が公表されて、そのような評価になって来ているから「玉」相当だろう。だが最終審査過程については以下のように書いている。
最終選考に残った6作品のうち、国内からの応募はSANAA+日建設計と環境デザイン研究所の2つ。…妹島は日本女子大学、西沢は横浜国立大学…仙田満は東京工業大学の出身。東京大学出身者がきれいに排除されているのは偶然だろうか。一次選考の段階で、安藤は「東大建築学科」をふるい落としたとしか思えない。>(P54)

皆さん御存知の通り、最終審査に残ったのは11作品で東大建築学科出身の「伊東豊雄」氏作品が入っている。上杉氏は、安藤氏と東大建築学科出身者との対比を浮かび上がらせようとして事実まで曲げてしまっているようである。それにしても余りに分かりやす過ぎる(笑) (どこから「6作品」が出てきたのだろう)

また、一見して分かりにくいこともやっておられる。帯の宣伝文句には<[部外秘]資料を入手>となっているが、それが<新国立競技場の設計契約に関する内部資料>(P134)と云うことであれば、JSCのHPにも載っている内容。ただし、上杉氏が注目した<フレームワーク設計の落札率が99.09%>という事実などは解明すべき重要ポイントになるかも知れない。

と云うことで、「玉石」を見分けていく楽しみも味わえる本になっています。なお、当方は自己のストーリーのために事実の方を曲げるような手法は使っていないことを保証します。

追記以上