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登場者検証4 「検証委員会」

検証委員会を再開すべきと主張して来ているが、実際にも検証委員長が「見積り乖離の理由は検証しきれなかった」と会見で明言しており、その原因として「時間と専門家(見積解析)」の不足を挙げていた。
時間は今からでもやれば良いし、積算専門家は官邸に国交省営繕部から出向しているから参加してもらえば良い。日本は民主主義国のはずだが、これだけはっきりしていることを政府は行わない
野党も委員長自ら検証不足と言っているのに追求しない。蓮舫氏はどうされているのか、馬渕議員の登場はないのか。与党河野氏もあれだけ追求してきて入閣後はスルーの様相。仮に「ゼロオプション」放棄が入閣の裏条件で、内閣に入らないと出来ないことをやりたいから呑んだというような事情がもし有ったとしても、行革担当としての入閣である。少なくともまず「大半が無駄になった巨額設計費」という明確な問題には迅速に切り込んで頂かないと覚悟の程が問われてくる。
関係者の皆さんは一体どうなっているのかと思いつつ、少しでも今後に役立てばと片隅のブログで検証中(苦笑)

さて柏木検証委員長は9月24日検証報告後会見で、もう一つ出来なかったことを挙げていた。(43分頃~) 
白紙撤回された経緯」である。
<記者:最終的に白紙撤回された経緯というものは今回の委員会の調査の対象にはなっていないのですか?
委員長:白紙撤回されるに至った経緯ですか。問題の起こった経緯というのは検証対象ですけども、安倍首相がどういう根拠で判断されたかというのは検証対象では有りません。調べていません。>

見積乖離とは異なり、こちらは「検証対象ではなく調べていない」としている。重要ポイントにも関わらず、どうして調べなかったか?と思っていたら、後から文科省より公表された第一回検証委員会議事録に以下の記述があった。
----議事録引用開始----
【前川事務局長】  事務局長の前川でございます。…
  文部科学省スポーツ・青少年局が作成した資料でございます。…
  この資料のカバーしている範囲でございますけども、2016年のオリンピック大会に立候補したという時点から、この国立競技場の整備計画について白紙撤回を総理がお決めになったという時点までをカバーしておりますが、この検証委員会は、そのうちの新国立競技場の整備計画がスタートした時点から、その工事費の見積額が2,520億円というところまで来たという、その時点の範囲で検証していただくということを想定しております
----引用終了----

「白紙撤回(見直し)の総理決断」に関する経緯は、検証対象範囲外と最初から釘を差されていた。検証報告書から、「検証事項の具体例」を文科大臣が示して実質的に枠を嵌めていたことは読み取れていたが、更にここまでやっていたことには少々驚いた。文科省は検証委員会議事録をなかなか公開せず、検証報告提出後、随分経ってから公表したが、この検証範囲設定がバレにくくしたのではないかという疑義も出てくる。これは証明困難としても、少なくとも総理決断経緯の対象外し自体は、これまでの当ブログ検証から推測すると、やはり「和泉総理補佐官」の差配ではないかと見る。ここまで手を打っていたとすると、和泉氏の仕切り恐るべしということで同氏については明日取り上げる予定。

なお、委員長会見には他にも重要な情報があって次のように述べておられる。(38分頃~)
<最初のザハ案をフルに実現して、なおかつラグビー協会とかサッカー協会の色々な人の要望を入れたならば3000億を越してしまう。そこから始まってどんどん取って(外して)いきましょうという検討をやってたわけです。一番安かった1350億というのはキールアーチを250mに切ってしまって観客席から立ち上げる。だいぶ様相が変わってしまうわけですけど、そこまで切り詰めた案。切り詰め案というのは値段を安くするというのではなく、対象を切っていく、小さくしていく、簡単にしていく、こういう作業になるわけです。>

当方が注目してきて10月3日記事などで書いたように、「250mキールアーチ案」はスタンドで支える構造だったことがこれで明確になった。
委員に構造専門家がいたら耐震問題や基本コンセプトからの逸脱を見抜かれていた可能性があっただろう。しかし、専門家としては建築コスト関係の古阪氏一人しかいなかった。長大スパンのキールアーチという特徴的な構造なのに構造関係を一人も入れなかったのは無理がある。和泉氏も当然そのことは分かるから、国交省から出向の羽山氏との繋がりもある古阪氏一人にしたのは、構造問題を避ける意図が透けて見える
なお当の古阪氏でさえ、第一回検証委員会に文書を提出し、<複数の専門家の協力を要請することが望ましく、委員会の下にそのような組織、たとえば、ワーキンググループを編成したい>と提案しておられた。
このような提案も、委員長の<半年はいただかないと、しっかりとした調査にならない>という見解も押さえ込んで、一ヶ月半程度で検証報告書をまとめるように仕向けた和泉氏の豪腕は、もはや「凄すぎる」と言うよりないと思う。

また、250mキールアーチ案は別の重要な意味も持つ。設計者の中に「スタンドで支える構造でも良い」という認識を持つ人が出てきて、370mに戻した際にも支持はスタンドのままで両端支持構造無しという流れを生んだのではないか。構造面での迷走は実質的にこれから始まったと当方は見ているので重要となる。
結果的に表彰式プレゼン案にあったキールアーチ支持用の「スラストブロック基礎」を無くしたのはいつ頃で、誰が決めたか? 基本設計の屋根構造はアラップ社が担当していたことが分かって来たが、250m案はロンドンに設計チームが出来る前の2013年8月20日にJSCから文科省に説明されており、日本側JV担当の可能性もあってどちらの主導か不明。
なお、JSCがZHAと「フレームワーク設計に係るデザイン監修業務」契約を結んだのは同年7月29日だった(ちなみにこの契約はJSCのHPにある「落札・結果情報」一覧に載っておらず何か不透明さも感じる)。正式にZHAが参加したのは、ほぼ8月からとなり、250mキールアーチ案が出てきた同月の検討にZHA側がどれぐらい絡んでいたか微妙な時期となる。

以上
[追記]
250m案についてもう少し考察してみると、もし支持構造の制約さえも外してみた「ブレーンストーミング」的な案だったとしても、そこから370mに長さだけ戻してOKとした設計者の能力は低すぎるだろう。コンペの在り方や発注の仕方などについて論議が行われているが、設計事務所の設計者の能力が低ければ、仮にゼネコンの設計者も同レベルか少し下回っても、とにかく最後まで責任を持ってくれる建設会社への一括発注が多くなってもやむを得ないことになる。
また本文で記したように250m案はスタンドがキールアーチを支えるので基本コンセプト逸脱になり、そのような案を出すこと自体が仕様策定を混乱させる例となる。仮に発注者側が求めてきても無理な案を出すことは、たとえ参考でも結果的に発注者のためにならない場合がある。常にコンセプトや出来上がりを見据えながら、専門家である設計側が慎重にコントロールする必要があるだろう。それが最終的に発注者側の利益に資することになるが、そのような取組みができていたか。
総合すると、「設計能力が余り高くなくて、発注者の利益も守れない組織設計事務所」という問題がもし実際に有るなら、専門家の方々はどうお考えになるか。今回考えるべきは、このような非常に基本的なことになると思われる。

ただし、建築設計業界特有の背景が有りそうなことは、業界外の当方にも見えてきたので、その一端を示す。

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たまたまこの「主催:日本建築学会、後援:建築関連5団体」という揃い踏みイベントに向けた各社の協賛広告を見た際に、業界として一体感のようなものを感じた(笑) そのような場合は往々にして本質的な厳しい追求は避けられてしまうことが考えられそう。

以上