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基本構造再検証1 「屋根に対する風や地震の影響」

昨日の続きですが、またろさんもお忙しいでしょうから本件を考えていただくのも手間になるかも知れないため、ここからは当方の独自再検証の一貫として記すことにします。ただし、またろさんのコメントは引用させていただいて(<>内)、当方見解を→以降に示す方法を取らせていただきます。

⑤「風や地震」の影響(2回目)…風を中心に記述
<「風や地震」の影響については、私の考えだと、キールアーチ自身の構造に影響を与えるのではなく「屋根開閉装置」の作動条件に影響を与えると考えました。>
→当方もZHA案について検証してみるまで、表題の件、特に「横風」がアーチに及ぼす影響は気がついていませんでした。強風で落橋した米国のタコマ橋の映像は見ましたが、吊り橋で橋桁がねじ曲がって揺れていました。それに対してアーチ橋だとガッチリしているから横風が来ても影響はそんなに受けそうにないという漠然とした感覚を持っていました。
しかし、基本設計書に「サイドストラット…キールアーチとスタンドを結ぶ部材。地震時や風荷重時にキールアーチに生じる力を受け止め、スタンドに力を流す」という記述を見て、アーチに対する風の影響に気が付きました。
またろさんが書かれているように、屋根開閉装置の「対風荷重」という風速等を規定した項目も基本設計書にありますが、開閉装置以外にも設計チームは横風の影響を検討していたということになります。
丁度耐風構造の専門家(「平ねぎ」さん)も「アーチに対する横風の影響」について書いておられたので、まずはそれを見て頂こうと云う趣旨が昨日掲示板引用の①項です。

そして「平ねぎ」さんは、<長大橋の場合、耐風安定性が最重要課題です>としていて、特にアーチ組み立て時の問題を指摘しておられます。実際の橋の例を示します(工事はベント工法では有りませんが参考)。
イメージ 2

組み上がる直前は仮設状態でアーチが最大高に近くなり、アーチ両端の支点から離れた位置で横風の力を受けるため影響が大きくなります。またアーチ組立中は2本のアーチを連結して倒れにくくするZHA案の「クロスタイ」も構築されていない状態です。
更に上図の橋もZHA案キールアーチも外側に傾いているため、元々外側に倒れる力が働いていています。そこに風の力が加わるから「平ねぎ」さんは次のように書いておられます。
<忘れてた。このアーチは傾いてるんだった。こんなのできるか~ (゜Д゜)ゴルァ!! >

そして組立後も風の影響が大きいということをZHA案で示したのが、これまで紹介してきた以下図です。

イメージ 1


先に示した橋のアーチに比べて風受け面積が格段に大きくなることは一目瞭然。よって通常の橋梁のアーチとは別物と考えるべき、と個人的には思っています。しかし、ZHA声明文は「標準的な橋の建設技術が使える」と主張しています。日本側もコンペ審査時から、建築専門家の多くもZHAと同様に考えてきたことが混迷の大きな要因になったと思います(未だに考えが変わっていない専門家も多いようですが)。キールアーチだけに着目して「橋の技術」と云うだけでなく、付随した複数の構造物も含めた全体での考慮が必須です。風は全体で受けるのですから。(アーチにこれほど色々取り付けた長大橋が標準的に存在するはずもないのに、「標準的な橋の技術が使える」とはZHAもよく言ったものです)

当方が属する電子業界では「AND条件」という用語をよく使います。他分野でも使用されることは多いと思いますが、「命題が成立するための条件が複数あって、条件が全部成り立たないと命題が成立しない」場合を表します。今回の命題を「ZHA案は建てられる」とすると、AND条件のうち成り立たない条件が幾つもあったのが特徴的と考えています。横風対策はそのような条件の一つだった可能性があります。そして一つでも成り立たないと建てられません。(「プロジェクトに対して致命的な影響を与える要因が複数あった」と言っても良いかも知れません)
「屋根はキールアーチが支える構造」とZHAビデオで言っていますから、スタンドと屋根は分離しています。屋根に対する横風や地震の力もキールアーチだけで支える構造なのか? 強風や大地震の際だけはスタンドに力を逃がす構造なのか? スタンドに逃がすとしたら接続部はどのような構造になるのか? 接続部の強度や耐久性はどうなのか? 屋根に対する横風や地震対策だけでも疑問は多々出てきますが、果たして解決されていたか。

他にもAND条件として色々あるので明日以降記す予定。

以上