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基本構造再検証2 「アンカー」

⑥アンカー
<コンペ時の検討ではザハ事務所とARUP社はアースアンカーでスラスト力の対処をしようとしていたのは間違いないと思います。ただコンペの時の与条件には地下鉄の情報は入っていない。これを「設計の瑕疵」と考えるのは難しいと思います。>(またろ氏)

→まず、ZHAとアラップはアースアンカー(以降アンカーとします)で対応しようとしていたのは同感です。表彰式プレゼンの構造図にはアンカー相当の「スラストブロック」が記載されていたことが根拠になります。また、またろさんも見られた日経アーキ記事に以下の記述があります。ただし、情報の出処は書いてありません。
国際デザイン競技の時点では、アーチの両端をコンクリートのブロックなどで固定する支持方式を考えていた。基本設計の初期段階で免震構造の採用の可否に関わらず、アーチタイを採用する方針となったという。
重要な情報を出してきている日経アーキなので、そのまま受け取りたいところですが、基本設計の初期段階どころか最終の「基本設計書」にもアーチタイがないことは皆さんよくご存知のとおり。この記述は全部が事実とは言えないところが厄介。ただし、(具体的設計が出来ていたかは別として)アーチタイ追加も事実なので、アンカーを途中で放棄したことは、もはや断定してよい重要な事実となるでしょう。

そこで「地下鉄干渉」の件ですが、当方も時々この表現を使用してきました。分かりやすいからですが、実際は「敷地オーバー」がそもそも問題になると考えていました。今回それを図にしてみました。

イメージ 1

上図でキールアーチ先端から北側の歩道まで約24m(左上)。この中にアンカーが収まって、しかも埋設工事をする際も掘削箇所などが歩道にはみ出して、歩行者通行止めが必要になることは許されないと考えます。ましてや歩道を越えて道路も閉鎖するなどは論外でしょう。なお、約24mは結構距離があるようにも思えますが、キールアーチの根元が約13mあります。その倍の大きさのアンカーにしたら、もう24mを超えます。

更に上図は基本設計図での話ですがフレームワーク設計案(下図右)とほぼ大きさは同じです。コンペ表彰式案(左)と比較すると以下になります。
イメージ 2

表彰式案のキールアーチ北側先端位置はよく分かりませんが、全体として大きいですから、少なくとも約24mかそれ以下になるでしょう。また点線で示したように南側だけ見てもキールアーチのスパンは長いのでアンカーも大きくなります。修整前のコンペ案そのものだと必要なアンカーはもっと大きいかもしれません。そして敷地条件は与条件です。結局ZHA+アラップがアンカーをどこまで検討してあったかということになります。

ただ首都高やJRを跨ぐデザインだったことを考えれば、ZHAとしては「アンカーは後で何とかなる」程度だったとしても驚きません。皆さんも多分そうでしょう。問題はその後です。なぜ設計JV、特に構造担当の日建設計はアンカーの大きさが敷地内に収まらないことを最初からハッキリ言わなかったのでしょうか。収まらなかったら建てられないので、早い段階で諦めるか軌道修正があったでしょう。
ただし内部では言っていたかも知れないので、結果的に「ZHA(+アラップ)・日建設計・JSC」のどれかが主導して、或いは相互に思惑が絡み合って隠したと考えるしか有りません。良い方に取れば、「何とかしようとしていた」ということになるでしょう。

それでも人間のやることですから、当事者がそのようになるのも或る程度已むを得ないとも思えます。しかし建築界は問題です。例えば構造専門家の方々がアンカーの大きさを概略でも出せたでしょう。アンカーの想定寸法を公表してJSCに検証を迫れば、キールアーチが敷地内で成り立たないことが早期に分かって、プロジェクトを止められていた可能性があると思います。設計チームが弥縫策でアーチタイを持ちだしても、その設計を公開させればアンカーより困難な可能性があることも早く理解されたでしょう。また構造専門家だけでなく、構造も当然学んでいる建築専門家の方々も出来たことではないでしょうか。

このように書くと具体性に欠けるように思われるかも知れません。しかし、これは延期になっている「内藤廣氏研究」で書く予定の内容に関連しています。
内藤氏の近年経歴はwikiによると「2001年 東京大学工学部土木工学科助教。2003年 東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授。2010年 東京大学副学長」とのこと。「構造デザイン講義」などの著書もお有りです。生粋の構造専門家と云うわけでは無さそうですが、それにしても東大の土木工学科で構造を教えていた人がアーチ基本構造の問題に気付かないことはあり得ないし、あってはいけないことでしょう。
しかも内藤氏は2014年7月頃から設計チームとやり取りするようになり、設計過程にも目を通しているとのこと。基本設計が終わって、もしかするとアーチタイを検討したり追加決定したりしていた時期と重なってくる可能性あり。ご自身も何か絡んでいたか、少なくとも経緯を相当知っておられるのは間違い無さそう。
全く唖然としました。もし槇氏と共闘してZHA案潰しを行っていないとしたら、建てられないZHA案をずるずる引っ張った責任は和田章氏を上回るのではないかと思います。近いうちにもう少し詳しく書く予定です。

以上
[追記]
このような記事が出ていて見られた方もおられると思います。
<今年7月、「新国立競技場」建設計画の見直しを発表した時の安倍首相発言が、何の根拠もない“作り話”だった可能性が高くなった。
  見直し会見の中で首相は、「1か月前から見直しを検討してきた」と明言していたが、関係各省への情報公開請求から、計画見直しの検討文書が存在していないことが判明。発言根拠が、どこにもない状況だ。首相発言の根拠を「不存在」とした関係省庁のいずれもが、新国立の見直し作業自体を否定している。
  安保法の国会審議が続く中、支持率低下に歯止めをかけたかった首相が、その場しのぎの発言を方針決定の補強材料にしたとみられる。>

これは「和泉補佐官」が取り仕切って殆ど水面下でやっているから出てこないだけでしょう。それと「その場しのぎの発言を方針決定の補強材料にしたとみられる」となってますが、実際は検討していないのに安倍総理が自ら決断してリスクも多い白紙見直しにしたら、それこそ歴史に残る大英断。凄い記事を書く記者がいるものです(笑)

ただ、これに関連して浮かんだ憶測中の憶測があります。
河野太郎氏の入閣も和泉氏が仕掛けたのではないか。目的は「ゼロオプション封じ」。
実際入閣前に”新国立競技場:建設しない選択肢も 自民行革が提言”毎日新聞 2015年10月06日と云う記事が出ましたが、中身は今も公表されていないと思います。河野氏ブログの旧記事もアクセスできなくなりました。河野氏自体は当選7回で大臣未経験だったので入閣は不思議ではないですが、何故この時期にという驚きはありました。初入閣理由の全てではないにしろ、新国立競技場問題は絡んでいるかも知れません。
しかし、「ゼロオプション」どころか、五輪目指しては建てない「ゼロ」にして、今後の方策を河野氏に担当してもらうのが良いと云うのが当方意見なので行革相での入閣は残念。無駄撲滅だけでなく河野氏にはもっとクリエイティブなこともやってもらいたいと思います。
また河野氏入閣の件は別にしても、ZHA案顛末の真相を公表しないままで進めようとする和泉氏の情報隠蔽路線で、果たして新コンペからの建設は成功するか。

追記以上