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 huffingtonpost「藤村龍至氏インタビュー記事」(続)

(予定変更して)昨日に引続き表題記事について検証してみた。記事へのネット反応を”はてなブックマーク”で見たところ、高評価のコメントが多い。抜粋を示す。
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●dog…:状況がとても良く噛み砕いてあって感心。この様な説明が発注者?JSCもしくは安藤氏からあったならと。
●hou…:一人の専門家が鮮やかに解きほぐすほどに、何人ものおっさんが寄せ集まった組織との説明力の差に愕然とする
●kos…:やっぱりこれくらい前提知識とか経験則あると、ちゃんとした話できるんだなー、って感じがした。
●ha4…:やっと冷静な分析が読めた気がする。どんな現場もこんな風に地味な調整の繰り返しであるし、好き勝手に絵を描いて終わりじゃない。
●ike…:これは力作。そして見事な記事。とても分かりやすいし、見通しも一気に良くなった。・・・
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特に分かりやすさが高評価に繋がっているようだが、当方にはどうしても違和感が拭えなかった。そうしたら世の中には鋭い人がいるもので、短い一行のコメントで違和感の元を言い当ててくれていた。
■pla…: 技術的な話がほとんど無い。 

これだった。藤村氏は大学でも教えておられる建築の専門家のようだが(wikiより)、この記事では肝心なところで技術的な話は殆どされておられないように思う。例えば昨日も紹介した以下の部分で考えてみる。
今回も反対派のブログでザハのアーチが槍玉に挙げられると、アーチの基礎が地下鉄にぶつかる、アーチのせいで見積もりが高騰したなどという不確かな情報が一人歩きし、・・・>

「アーチの基礎が地下鉄にぶつかる」、「アーチのせいで見積もりが高騰した」を”不確かな情報”としておられる。それであるなら建築専門家として、「アーチの基礎が地下鉄にぶつからず国立競技場の敷地内に収めることが出来る」と云う確かな手法を例示してもらえば有り難い。見積りも同様で「アーチにはこれぐらいしかかからない」と云う見通しと根拠の概要でも挙げて頂ければと思う。実際に設計チームがやっている方法でなくとも、可能性のある手法を仮説として提示して頂ければ良い。しかし、そのような説明は無いから、鋭い人が「技術的な話がほとんど無い」と見抜いたのではないか。

しかも、これで気づいたことがある。”技術の話をしなければ、一般の人には一見分かりやすくなる”
例えば「敷地に収まるアーチの基礎構造」を説明しようとすると、例としてあげるモデルは単純化するとしても、それに対して若干でも構造的な計算等も必要になるだろう。一般向けには少しでも数字が出たら途端に話が分かりにくくなるが、元から技術的な話をしなければその事態も避けられる。それでも一般の人は技術の専門家から話を聞けたということで、満足感も得られる。説明用の論理構築・表現工夫などの手間も省けて一石数鳥の何と上手い方法だろう。率直に感心した。

なお、技術面とは別に、上掲文章に続く以下の部分も気になっていた。
ザハ事務所が声明を出すたびにヘイトスピーチが沸き起こるようになってしまった。ああなってしまうと専門家がどれだけ擁護をしようが、中身の話ができなくなってしまう。それはとても恐ろしいことだと思いました。
これには次のように指摘している人がおられた。
■nod…:専門家VS素人の構図にするのは議論の矮小化。一体なぜここまで反対が強まったと思ってるのか。ヘイトスピーチサイバーカスケードという言葉の雑な使い方こそ不当。

現在日本で話題に上がる「ヘイトスピーチ」は歴史問題などの要素が入ってくる複雑な話。ここでそれを使ってくるのは非常に違和感があったが、端的に「」と一文字で表現する人がいた。(サイバーカスケードについては今回は略)

同じ内容を指しているかどうか不明な言葉を、定義や背景等の説明も省いて持ってくるのは他の部分でもやっておられる。
隣に建っている槇さんが設計した東京体育館だってキールアーチなのに(苦笑)。
この手法が鮮やかに決まったのが次の反応。
nia…:「隣に建っている槇さんが設計した東京体育館だってキールアーチなのに」 申し訳ないけど、素人目にはこの情報が一番説得力ある。

しかし専門家としての話ならば、例えばザハ案と東京体育館キールアーチの同一性や相違部分などを技術的に語っていただかないと検証不能だが、「キールアーチなのに(苦笑)」で終わらせておられる。こちらは前述した「技術の話はしない方が一般の人には分かりやすい」と云う手法の再現にもなるだろう。

結果的に藤村氏は相当の手練れとお見受けして、その観点で他の部分も見てみると更に色々出てくる。例えば<今回のプロジェクトでザハ事務所と日本側の4事務所で実際の役割分担がどうなっていたのか詳しくは知りませんが、>とおっしゃっておられる。
核心につながるところがそのような不確かな状況でも、<ザハ・ハディドのチームに続投してもらって減額案を出してもらうのが国民のために一番の選択肢だと思います。>と明快に述べておられる。この対応と、他者ブログ検証結果は「不確か」と云う理由であっさり片付けておられることとの対比は、手練れとしても当方にとって今のところ理解を越えている。

昨日事実関係の認識について問い合わせたhuffingtonpost伊藤記者の御反応(反応有無も含めて)を待ちながら、また考えてみたいと思う。

以上