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ZHAビデオ論点1,2 屋根支持、アーチタイ

ザハ側が公開した「ビデオプレゼンテーションとレポート―新国立競技場 東京」(以下ZHAビデオ、本ビデオ、ビデオ)の検証をこのところ行ってみたが、本ビデオへの反響は大きいようなので論点整理を実施。

”論点1:「屋根はスタンドから支えるのではなくキールアーチで支える」と云う構造は各設計期間中も一貫していたか?”
この点は一昨日昨日と検証した内容になるが、論点をまとめるにあたって再掲。また、ビデオへのネットの反応ではキールアーチ問題の真相がまだ認識されていない面があるように見受けられる。当ブログとして補足を加えてみると、例えば以前紹介したフレームワーク設計時のJSC提出資料図に「どれで支えられているか」と云う問いを入れてみた。
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一見キールアーチ両端A,Bでも支えているように見えるが、地中に支持構造がないと有効な支えにならない。そうなるとスタンドのC,Dで支えることになるが、ザハ側主張と矛盾する。またスタンド設計はキールアーチと屋根フレーム全体を支える強度保有を考慮しているか?と云うことにもなる(免震問題も出てくるだろう)。
同資料の説明では「キールアーチの構造的な負担を客席部の構造体が一部負担することとしています」となっていて、「スタンドも一部支える」と云う認識だったようである。ただし、「一部」の意味は不明(明日検討予定)。

ZHAビデオでは、「デザインは価格を決めない」と明言している。だがザハデザインでの新国立競技場建設プロジェクト(以下本プロジェクト)では、キールアーチの両端支持構造が不明確だったことが設計の混乱を招いて、コストダウンや工期短縮も取り組みにくかったのではないか。そして最終的にアーチタイ追加と云う基礎構造の大変更に追い込まれたことは、屋根部の価格がゼネコン見積りで950億円と高騰したことに大きな影響を与えたのではないか。

ビデオを見せられるだけでなく、ザハ側に確認すべきことがあると思う。「アーチタイ追加以前もキールアーチ両端支持構造は当初から有ったのか?」、「有った場合はどのような手法を使用していたか?」、「無かった場合のキールアーチ支持方法は?」、「日本側設計JVの担当というのであれば監修者としてどのように設計状況を把握していたか?」、「アーチタイの設計はザハ側も確認しているのか?」など。政府検証委員会はどこまで踏み込むか。
(当方推測として、アーチタイ追加まではキールアーチの両端支持構造は無かったのではないか。ただし表彰式プレゼン図には一応あるため、中間段階の解明と検証が重要)

”論点2:アーチタイ追加”
本プロジェクトの設計における問題が一番明確に噴出したのが、基本設計終了から実施設計入札公示まで3ヶ月弱の期間における「アーチタイ追加」であったように思う。このような「大変更」を途中で行わなければならないのでは、当方経験的には「設計に致命的欠陥があった」と見ざるを得ない
技術者としての常識的見方と考えているが、何故か建築業界の方々からその声が殆ど上がらない。森山氏以外にも建築士・建築家や建設関係者等の方々から「途中でアーチタイ追加必要では当初設計が根本的におかしい」と云う見解が早くから続々出て来て当然だと思うのだが、そうなっていなかったし、今も少ないのではないか。当方には理解し難い状況になっている。

ザハ側以外への疑問になってしまったが、ZHAビデオは「アーチタイ」を工程図に登場させている。それを見た第一印象で以下の図を以前の記事で掲載した。
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更なる分析は実施設計のアーチタイ図面等が無いと困難で、自民党や政府の検証に期待するしか今のところは無い。ただ、関心の高い「金額」につながる話として、例えばザハ側が声明で主張している「アーチ部のコスト230億円」の中に「アーチタイの費用は含まれているのかいないのか?」は明確になっていない(アーチタイ込みでは多分収まらないと思われる)。
河野議員の先日ブログを見ると、アーチタイ追加前の初期段階における各種案を検証しておられるようだが、並行して「アーチタイ追加経緯」と「アーチタイがザハ側やゼネコンの見積に含まれていたのかどうか?」を解明すると真相究明が早くなると思われる。

なお、ZHAビデオではデザインの重要性を説いていて、それは非常によく理解できる。しかし「なぜリスクを冒すのか?」と云うザハ側の問いには次のように答えることが出来ると個人的には考える。
基礎構造と云う建築で一番重要な部分に重大な疑義があり、それを明確に説明していない設計者に再度依頼することは何よりも最大のリスクになる
(これは担当した設計JV等も同様)

以上(明日に続く)