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 huffingtonpost「藤村龍至氏インタビュー記事」

既に見られた方もおられると思うが、「The Huffington Post Japan」に昨日投稿された伊藤大地記者による「藤村龍至氏インタビュー記事」に関して、事実関係の確認を中心として当方で気づいた点を書いてみた。
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この記事は、ザハ案による新国立競技場建設プロジェクトの経過について詳細かつ広範に論考されておられる。ただ、基本的事実関係で当方が調べた内容と相違している部分が複数有り、もしや事実認識に誤解があるかも知れないので以下に該当箇所例(1)(2)と、その説明(→以降)を記す。

(1)  <フレームワーク設計の進捗とともに出てきた実施案のパースが、一番初めのザハ案の絵が持っていた伸びやかなテイストとは違う感じででてきた。>
→「実施案」は当該記事掲載CGの「2014年にJSCが作った修正案」、「一番初めのザハ案」は同じく「コンペで選ばれたハディド氏の原案」になると思われる。
しかし、2012年コンペ選出案(①とする)と2014年実施案(③とする)の間に、2013年3月
コンペ表彰式でザハ側がプレゼンテーションした修正案(②とする・・・南北逆転の変更が行われている)がある。
更に④として先月公開のZHAビデオからの画像を加えて並べてみる。時系列は①→④の順序。

イメージ 1

これを見ると「一番初めのザハ案の絵が持っていた伸びやかなテイストとは違う感じ」は、既に②から始まっていたと思えて、②~④は似たようなテイストと言えるのではないだろうか。藤村氏はどうお考えだろうか。(当方個人的には②以降も悪くないデザインと感じている)
そしてフレームワーク設計は2013年5月開始であり、②はその前になるため修整は(JSCの依頼で)ザハ側が実施したと考える他ない。このことを藤村氏及び伊藤氏は御承知の上で当該記事は書かれたのだろうか。
もし「伸びやかなテイストとは違う感じ」が、①コンペ時からの劣化を意味するのであれば、まず②で劣化させたのはザハ側自身と云うことになる。

また伊藤記者は記事の前書きで<建築家やゼネコンなど業界関係者の間では、「白紙撤回となったザハ・ハディド氏の案を活かせ」という声が根強い>としている。この場合の「ザハ・ハディド氏の案」は、上記「①」と「②~④」のいずれを指しておられるのだろうか。更にインタビュー途中で伊藤記者自身も<私も素人目で、白紙になった設計案は「元の絵とぜんぜん違うな」という感想がありました>と述べておられる。もし「②~④」の方でも良いという場合は「元の絵とぜんぜん違う」案でも已むを得ないと云う理解で良いのだろうか。

(2)<今回も反対派のブログでザハのアーチが槍玉に挙げられると、アーチの基礎が地下鉄にぶつかる、アーチのせいで見積もりが高騰したなどという不確かな情報が一人歩きし、・・・>
→反対派のブログとは、もしかすると建築エコノミスト「M氏」ブログだろうか。当方は同ブログに触発されて独自に設計経過を解明開始し、JSC公開資料等を時系列で丹念に読み込むなどの調査手法により以下のことが判明。

 (ⅰ)「フレームワーク設計」と「基本設計」を経た「2014年5月28日第5回有識者会議資料」の設計図にアーチタイが入っていない。
 (ⅱ)「同年8月18日実施設計入札公示図面」にはアーチタイが記載されている。

参考にアーチタイ追加経過としてフレームワーク設計から実施設計まで全体的に時系列で並べる。アーチタイが追加されたのは下表の「基本設計」(2014年5月末終了)→「実施設計入札」(同年8月18日)の間と見られる。
イメージ 2

藤村氏が不確かな情報としている「アーチの基礎が地下鉄にぶつかる、アーチのせいで見積もりが高騰した」などの情報は除いて考えても、前述のように「アーチタイ」が基本設計終了報告の有識者会議資料になく、その3ヶ月弱後の入札公示資料には入っていたことは公式資料で確認できる厳然とした事実。
約370mものスパンの巨大な「アーチタイ」追加が、基礎構造の大幅変更になることは藤村氏も当然ご理解されると思う。大幅変更が必要になったということは、変更前の設計には何か大きな問題があったということになって来る(問題に対応するために変更必要)。その問題に対してM氏がブログで解明を試みられていたと考えられるのではないか。

藤村氏はザハ案のキールアーチ支持構造に関して、設計初期(例えばフレームワーク設計)から一貫して問題無かったという御認識なのだろうか? もし「設計の内部事情は分からないから判定できない」と云うようなことであれば、御自身の論考自体が「不確かな情報でザハ案設計を肯定している」と云うことにならないか?
つまり、伊藤記者のタイトルは「なぜ実務家たちは、ザハ・ハディドを支持するのか」となっているが、実務家さん(当該記事の場合は藤村氏)は「確実な情報(例えばJSC公開資料等)によって検証したうえで、ザハ・ハディドを支持しているかどうか?」も詳細に御確認頂きたい。その結果、もし誤解等があったりしたら是非正しい認識で再論考をお願いしたいと思う。
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以上であるが、伊藤記者のメールアドレスも載っているので、上記趣旨を後ほどメールしてみることにする。果たして反応はあるだろうか。
もし無くても、「不確かな情報」どころか「事実認識に誤解があるかも知れない情報」が独り歩きしないためにも本日記事は書いてみた。(藤村氏論考への見解と云うより、まず伊藤記者に事実認識確認のメールを出すための下書きになっている。もし事実認識が変われば論考も変わる可能性があるだろう)

そして他にも大きな課題として「アーチタイが実際に実現可能だったか?」なども有るが、論点はひとまず絞ってみた。ただし、基本設計を経たはずなのに「アーチタイ」の図面がごく簡単にしか書かれていない入札図面をご存知かどうかは伊藤記者への確認に入れる。

また、当方もザハ案の良い面を認めていることは折にふれて書いて来ているが、明日はその点についても「ZHAビデオ論点検証」の一環として改めて記す予定。

以上
[追記]
藤村氏論考については後日以下記事も追加した。(特に東京体育館の件は実地調査も行って誤りを検証できた)

なお、本文の「伊藤記者の反応」は無かった。

追記以上