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  「基本的考え方(関係閣僚会議)」と五輪担当大臣意見交換

見直しに向けた方針が官邸HP上で公開された。9月としていた整備計画策定を今月中に前倒しし、9月初にデザインビルド方式による公募ということで、ようやく政府も「突貫」モードに入ってきた感がある。

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2020年東京オリンピックパラリンピック競技大会のメインスタジアムとなる新国立競技場整備計画の再検討に当たっては、国民・アスリートの声や与党からの提言を踏まえ、以下を基本的考え方として、今後具体的な検討を進めていくこととする。
(1)「アスリート第一」の考え方の下、世界の人々に感動を与える場とする。
(2)その大前提の下で、できる限りコストを抑制し、現実的にベストな計画を策定する。このため、以下の方向性で検討する。
・施設の機能は、原則として競技機能に限定
・屋根は観客席の上部のみ
・諸施設の水準は、オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとして適切に設定
(3)大会に間に合うよう、平成32年(2020年)春までに確実に完成させる。整備期間を極力圧縮するため、設計・施工を一貫して行う方式を採用する。
(4)アスリートや国民の声をよく聴き、計画の決定及び進捗のプロセスを透明化する。
(5)周辺地域の環境や景観等との調和を図るとともに、日本らしさに配慮する。
(6)バリアフリー、安全安心、防災機能、地球環境、大会後の維持管理等を十分考慮する。
(7)内閣全体として責任をもって整備を進める。独立行政法人日本スポーツ振興センターによる整備プロセスを当会議で点検し、着実な実行を確保するとともに、新たに専門家による審査体制を構築する。
(8)大会後は、スタジアムを核として、周辺地域の整備と調和のとれた民間事業への移行を図る。今後、政府において計画を踏まえて、ビジネスプランの公募に向けた検討を早急に開始する。
なお、今月中を目途に、スタジアムの性能、工期、コストの上限等を示した新たな整備計画を策定し、これに基づき、9月初めを目途に公募型プロポーザル方式(設計交渉・施工タイプ)による公募を開始することとする。
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加えて、五輪担当遠藤大臣がアスリートや競技団体トップと意見交換を行った内容も同HPで紹介されている(実施:7月30日~8月11日)。→以降は当方が感じたことをコメント。
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・岡田氏(元サッカー全日本代表監督)アメリカ的なエンターテイメントとヨーロッパ的な文化の両方の側面を持って、スタジアムに来てもらうようにする必要がある
→ライフスタイルも含めたような提言。為末氏も「私の原体験は、海外のスタジアムにカフェとレストランやホテルが併設され、ことあるごとにそこでパーティーが行われ、宿泊し、また毎日そこが地元の方のコミュニティになっていた風景です」と書いている。上記基本的考え方では最初に「アスリート第一」を挙げているが、アスリートの方々は各スポーツの隆盛を支える「国民第一」が分かっておられるのではないか。
・玉木氏(スポーツ評論家)…サブトラックの必要性、「サブトラックは、言葉通りの“サブの”トラックではなく、むしろメイン」である
→サブトラックは非常に重要と思える。国立競技場がサブトラック仮設しない普段の状態では「第一種公認競技場ではない」と云うのは余りにもったいない。しかし、サブトラック仮設は既に決定事項の模様。
・平岡氏(JOC専務理事)…プレ大会を行う上で必要な2019年(平成31年)12月まで(完成)が望ましい、8万人規模の観客席
→各種準備のためには五輪開催一年前にはできている必要があった。その意味で2019年完成はラグビーW杯だけでなく五輪用にも必須だった。今の完成目標は明らかではないが、舛添知事要請の2020年1月が実現できるかどうか。
・鳥原氏(日本障がい者スポーツ協会 日本パラリンピック委員会会長)…(パラリンピック出場選手の移動等への配慮だけでなく)障がいのある方がご家族と一緒に観戦や応援を楽しめる環境整備
→近年の五輪はパラリンピックの比重が増していると言えるだろう。「パラリンピック・ファースト」ぐらいの積もりでやらないと良い大会と云うことにはならないのではないか。バリアフリーは日本の課題である高齢化社会対応にもつながる。
佐藤真海氏(パラリンピアン)…「国立競技場はアスリートにとって聖地」、「大会終了後も、大人や子供、障害のある人が集う場所であってほしい」
→佐藤氏は走幅跳の選手。新国立を球技専用にと云う声もあり、トラックが無い方が球技は見やすく、またサッカーが収益になることも間違いない。ただ、考えてみると球技用ではサッカー・ラグビー・(日本ではマイナーな)アメリカンフットボールぐらいになる。陸上競技の方は、走る・飛ぶ・投げるにそれぞれ多様な種目が有る。やはり国立競技場に陸上競技は外せなかったと思えてくる。実際にも陸上競技と球技併用で決定するようである。
(これ以外に「コンサート」や「イベント」も五輪後の活用には重要になるだろう)
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それぞれが非常に良い意見を出しておられる。ネットによる国民からの意見募集も行われ、多数集まっているようである。基本計画にある「アスリートや国民の声をよく聴き」と云う項目が実際に遂行されている。
ただし、これらの意見を今月末までの約半月間でどのように整理して優先順位を付け、関係者との調整も行った上で整備計画に落としこむのか。時間が短すぎて至難の業のように思える。

現実的には政府にとって五輪に間に合わせることが最優先になるのは間違いなく、意を受けたゼネコン設計部隊や協力する設計会社が既に検討を進めていると推察できる(フライングでは有るが短納期対応には事前検討が必須で、もしこれを進めてなかったら政府の怠慢…ただし入札は適正に行われると想定)。設計者が少しでもやりやすくなるように整備計画策定も前倒しされた可能性はある。その結果、各種意見の議論や反映が難しくなることが当方の危惧する点。ヒアリングを受けた方からは、反映されない場合に当然批判も出るので、政府が納得のいく説明を行って計画をまとめていけるか。
今回は主に工費と工期の問題で白紙見直しに追い込まれたが、そのリカバリーが「早い安いまずい」では、また国民や関係者の理解が得られない事態も有り得る。その解消策は今のところ日本の誇るスーパーゼネコンの能力に期待と云うことだろうか。

ただし、今回ゼネコンは昨年8月の実施設計入札仕様を受け取った後、アーチタイだけでなく全体仕様としても工期・工費が満足できないことを迅速に理解したのは確実(分からなかったとしたらその時点で能力不足、またもっと前から知っていたと推察できるが正式には入札公示があってからになる)。結果的に軌道修正が遅すぎたことは否めず、その点ではゼネコンにも全幅の信頼は置けそうにないと思える。

更に、基本的考え方で「独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)による整備プロセスを当会議で点検し、着実な実行を確保する」となっているが、昨日記事でも検証したようにJSCはこの期に及んでも今回のプロジェクトを白紙見直しに追い込んだ最大の要因である「偽キールアーチ」問題につながる経緯は全く出していない。このような体質をそのままにして次に進むのは無理が有りすぎる。totoの収益使用があるのでJSCが元締めになることは已むを得ないかも知れない。しかしJSCの責任として独自検証も早急に行い、検証委員会で承認受けるなどして改善策の策定と実行に取り組むような姿勢が必須ではないか。

以上