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聖火台問題7…開会式演出との関連

聖火台問題については一般の関心も高く議論が活発になり、その中で開会式演出と関連させた見解がある。追記で記すようにコメントも頂いたので考察してみる。
例えば以下のようなツィート。
<点灯は開会式演出のメインであり、クライマックス。一番力を入れるところで、しかも極秘事項では。演出も決まってない段階の設計図面に聖火が最初から含まれる物なのでしょうか?点灯方法が決まってから(あるいは並行して)検討するものでは?>
このような意見に関して当方は素朴な疑問がある。
まずソチの例。以前記事でも紹介したように下図のような高さ約20mの外部設置で、羽を広げた白鳥を模した噴水池付きの凝った作りになっている。これをどうやって開会式まで極秘にするのだろうか? 点火方法は隠すとしても、聖火台の位置やデザイン等は完成時期を考慮し決めて着工することになり、当然設計図も事前に必要。

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ロンドンにおいては場内中央で広げて点灯し、その後折りたたんでから観客席横の方に寄せたようである。これだと秘密にしておきやすいが、いつまでも外に作らなければ場内と分かってしまう。また点灯後の聖火をどこに置くかは早めに決めて観客席等の設計で考慮し、安全性などにも充分配慮したスペースを確保する必要がある。
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日本での例としては、3度の五輪開催のうち最後の長野五輪開会式スタジアムを見てみると、下図①②のように立派な聖火台とアプローチ階段が設置されている。これも到底隠しておけるようなものではないし、競技場設計に含まれることになる。
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その上で、以下③④のように点火者(伊藤みどり氏)がエレベータ(昇降機)で持ち上がって点灯した。
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結果的に聖火点灯に関する検討事項としては、ざっくり次の3項目の検討が必要ではないか。( )内は長野の例。他の五輪でも様々なやり方が行われた。バルセロナでの点火は火矢だった。
 (1)聖火台位置・形状等とアプローチ(スタンド後方に設置、フィールドから階段で到達)
 (2)点火方式(点火者が昇降機で持ち上がってトーチで点火)
 (3)点火者・衣装等(元スケート五輪選手、卑弥呼をイメージした衣装)

冒頭の意見にもあるように競技場建設と並行して、このような事柄を検討することになるが、少なくとも(1)については早めに決定する必要がある。つまり、一口に「聖火の検討」と言っても段階的に考えるにも関わらず、「演出家や演出が決まっていない」という話に、いきなり帰着させてしまうのは無理がある。なお、検討順序を変えて点火者から考え、それに合わせていく手法なども有りうるかも知れないが、それでも競技場建設に関わる部分は演出が決まってからでは間に合わないと云うことになりかねない。
また極秘にすることについても、突き詰めると空撮や今だとドローンまであるので場内設置でさえ隠すのは難しいと思われる。ドローンは禁止しても飛ばす不埒な人が出てくるかもしれないし、空撮でも屋根の間から超望遠レンズ等で狙えるかもしれない。他にもあの手この手を考え出す。無理して全体を秘密にするより、演出家には基本的に(2)と(3)の範囲で工夫して貰うのが現実的ではないか。

しかも演出家は早く決めるのが良いというばかりでも無いと思う。国民の多くが今から認めるような候補がいれば良いが、そうでもないだろう。組織委員会も慎重に納得されやすい人選を検討し、決めるのは少なくともリオ五輪後ではないか。逆に、もし新国立競技場建設の構想段階から演出家に参加して貰うことにしていたら、数年前に決まっている必要があった。到底無理な話で、聖火台問題を演出家や演出決定の話に持っていくのは「無いものねだり」になってしまう。
やはりJSCと組織委員会が話し合って、外部か内部かなどの基本構想から決めざるを得ない。その当たり前のことが出来ていなかった酷い状態だから、何故こうなったかは、もっと検証しておく必要がある。最も議論すべきは、政府がまた有耶無耶のままで進めようとしていることだと思う。

なお参考として、開会式が行われる競技場を「劇場」と考えて、劇場と演出家の関係について例を挙げてみる。端的なのは「劇団四季」で、自前で劇場も作っている。この場合は演出家でありながら実業家で劇団代表でもある「浅利慶太」氏の意向が劇場の構造等にも反映可能。このような特別な場合と、一般的に演出家が既にある劇場で演出するのとでは条件が異なる。(ちなみに長野五輪の開会式を手掛けたのが浅利氏だが、現在82歳とのことで東京五輪は無さそう)
能力ある演出家に打診したら、「劇場(競技場)に合わせて如何様にでも演出して、受けるようにして見せますよ」と言うのは間違いない。リオ後にそういう人を選ぶことになるだろう。しかも実際に演出を考えるのは更にその後になる。

以上
[追記]
3月8日記事に以下のコメントを頂いている。
<根本的な疑問が一つ。
 開閉会式の内容が決まってないのに、どうやって必要な機能を仕様として決定するんだろう?>
まさに本文内容のように、演出家決定もリオ後と考えられるので早期の詳細な仕様化は困難。JSCと組織委が段階的に、その時点で決めなければいけないことを決めていって、後を演出家に託すという流れ。
ちなみに新コンペでの「オリンピック・パラリンピック競技大会のメインスタジアムとして必要な機能を整備する。具体的には…開閉会式に必要な機能を整備する」という規定は、同様の内容が旧計画国際コンペ募集要項から入っていた。
<【競技等機能】
 ・オリンピック・パラリンピック競技大会のメインスタジアム(開閉会式、陸上競技ラグビー、サッカー)に必要な機能を整備する>
新コンペ業務要求水準書はこれを踏襲しただけかも知れない。ただし、例えば3月9日記事で書いたように、2014年1月にはJSC鬼澤理事(当時…新コンペ募集時も同職)に富山県高岡市が「高岡銅器の聖火台への採用」の要望書を手渡したとのこと。それ以外にも五輪担当相などへ川口市山形市等からの要望も複数回伝えられている。検討を促す機会が多数有りながら、最終的に関係者間で聖火台の調整が抜けてしまった経緯は、官僚や政治家の仕事のやり方の例として再発防止教訓のために検証必須。しかし今の流れだと、森氏と馳大臣の小芝居などでお茶を濁すだけで、検証はやりそうもない。

なお、本文で演出家や演出の話を書いたが追加がある。ここまでA案を引っ張ってしまうと、B案への転換も難しくなってきた。しかし、流用を全否定し審査疑惑なども無視して、このまま進めれば国としてのモラルの問題になる。それを防ぐためには、B案が間に合わなくなったら、「五輪までに建てることにはこだわらず仕様を抜本的に検討し直す」"ゼロの案"となってくる。もしそうなれば新国立競技場を使わない開閉会式の企画演出が出来る人を選ぶ必要も出てくる。このままA案で押し切ろうとする圧力も当然強いし、今後の展開は果たして如何に。

追記以上