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 新コンペ検証4「整備計画策定のカラクリ」

9月18日(金)は入札参加表明締切日で、ゼネコン各社の動きも色々報道されてきている。これも大変興味深いが、このところ続けてきている新コンペ検証の中で「整備計画策定のカラクリ」や、それが決まってきた「意思決定の構図」が見えてきたので記していくことにする。

まず整備計画は8月14日の関係閣僚会議で、以下の「再検討に当たっての基本的考え方」が示された。これを「A」とする。(以降も順にアルファベット付与)。
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これを受けて、JSCに設置された「技術提案等審査委員会」第1回が8月17日に開催され、第1回なのに何故か早くも「業務要求水準書(案)」が示されている(笑)
その中の第3章第1節が「整備の基本的考え方(P)」で、「A」の要約になっている。これを「B-1」とする。
(P)は他の箇所の記述を見ると「Pending(未決定、未定)」と思われる。しかし、「A」は既に8月14日に決定されているから、その要約が未定と云うのは解せない点である。

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同委員会第2回は8月25日に開催されたが、この時は「B-1」に相当する部分の内容がガラッと変わっている。これを「B-2」とするが、何と肝心の「アスリート第一」が抜けてしまっている。なお、この文章で(P)が取れて、9月1日の入札公示でもこのままになっている。
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更に8月25日の会議ではもう二つ重要な資料が追加されている。一つは「業務要求水準書(案)の作成の方針」と云う資料で「C」とする。この中に「2.メインスタジアムとして適切なものとなるよう、白紙撤回前の基本設計等の検討結果を業務要求水準書に活かす」と云う項目がある。つまり前回基本設計等の検討結果を流用することを打ち出している。
「白紙撤回」という安倍総理が言っていない言葉を政府資料で使うのはまずいと思うが(笑)、それ以上に「白紙化しても前の設計は活かす」と云う趣旨を明記していることが重要になるだろう。

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もう一つは以前記事でも紹介した資料で、これははっきり「内閣官房提出資料(その1)」となっていて「D」とする。ちなみに何故か(その2)は未公開だが、Dだけでも計画策定に内閣官房(官邸)が直接関与していることが分かる。つまり官邸主導の可能性が高い。
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A~Dまで通して見ると、流れが見えて来るように思う。意思決定の経過としては、時系列や資料順とは違って、実はD→C→A(≒B)と流れている可能性が高いと思える。まずDで削減できる項目を決めて、それの理由付けとして「A」に「アスリート第一」のコンセプトを置いたと云う構図ではないか。
結果的に「D」で競技機能は若干増やして(+4.3%)、「アスリート第一」を実現していますよと云うアリバイを作った上で、他機能をバッサリ切るための理由付けにした。

これは単なる憶測だけでなく、8月14日に基本的考え方が示された後もアスリートらのヒヤリングを続けていた背景が理解できてくる。「アスリート第一を表面的に取り繕うためにヒヤリングし続けたのではないか。幾ら聞いても計画に反映させる気はなく、いつもニコニコの遠藤大臣を表に出して「懇談」を続けていた。遠藤大臣とお話されたアスリートや元アスリートの方々は実際には殆ど反映する気はなかったと知ったら、どういうお気持ちになるだろうか。
また「D」ありきだから、「B」のバージョンが二つあっても特に影響なく、「B-2」が「A」や「B-1」と異なって「アスリート第一」が入っていなくても、単に「明治神宮外苑の歴史と伝統ある環境」などの表現を入れて格調を高めておこうという程度の意味合いと受け取れてしまう。(つまり「B_2」も後付け)

このような背景があった上で、「取り止め」や「削減」された機能以外は前回計画の流用をメインとして進める。ただし、工期短縮とコストダウンの大部分は既に決定済みだったアーチタイ含むキールアーチ」の廃止であり、新コンペによる新構造の設計を実現する
つまり、「白紙化」しても一からコンセプトを見直したわけではなく、「工期・工費最優先」と云う主に政治的事情から機能削減し、キールアーチ構造以外は前回計画の流用を核にして、それに合うようコンセプト(基本的考え方)を合わせ込んだ。
これが整備計画策定のカラクと当方には思われる。

ただし、政府としては「工期・工費最優先で整備計画決定が急がれていたから已むを得ない」という割り切り方は当然あるだろう。だが、その本心を率直に言わずに、(当方が見る限り)コンセプトの後付けで辻褄合わせしようとしている計画のまま押していって、最終的に国民は納得するだろうか。大いに疑問。
なおこのような計画策定における意思決定の構図推測を明日記す。

以上
[追記」
昨日記事でVIP対応のことを書いた。業務要求水準書でVVIPとして「IOC 会長」が国家元首より先に入っていたので、五輪開催を考えてのVIP席と思えたが別の面も重要だった。
陸上競技場の規格にはVIP席の規定はないと思われるが、サッカーのスタジアム規格にはVIP席について細かく書かれている。またVIP用の駐車場も重視されているので、本文資料「D」で駐車場機能が維持されているのは、この理由が有るのかもしれない。
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第7章 ホスピタリティ関連事項 
7.1 VIP・VVIPへの対応 
7.1.1 VIP・VVIP席の確保 7.2 VIPエリアとVVIPエリア 
7.2.1 VIPエリア 
①場所 
②アクセス 
③VIP席 
④収容人数 
⑤VIPラウンジ 
7.2.2 VVIPエリア 
①場所 
②アクセス 
③VVIP席 
④VVIPラウンジ等 
⑥トイレ 

2.3.3 その他の駐車場 
①ホスピタリティ用 
ホスピタリティパーキングの設置は、特にマーケティングプログラムの一環として重要となります。VIP入口の付近に位置し、一般用駐車場とは区別されていることが必要です。同時にVIP席数に応じた十分なスペースを確保しなければならず、スタジアム敷地内に設定されることが望まれます。
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8万人収容の可能性を残したことなどを含め、サッカー協会には政府も相当に配慮していると思われる。「アスリート第一」を唱えながら、随所で「サッカー協会優先」が入っているのもカラクリの一環と思えて来る。
内実は新国立競技場建設資金にもtoto収益が重要だし、JSCの次期理事長は大学時代はラグビー選手とはいえ、その後はサッカー界が長い「大東」氏が就任見込み。悲願であるサッカーW杯単独開催に向けて、国も強くサポートをしていくことになりそう。

なお次のような記事もある。
<千田 : VIPエリアについてですが、選手や監督はほとんど立ち入らないです。全然関係ないですね。アスリートファーストの立場から言えば、プレーをする上では全く必要ない。記者席のほうに力をいれたほうがいいのではないでしょうか(笑)。VIPエリアは目的が全然違いますよね、サッカーなりスポーツなりをツマミにパーティをするところなので。それをなぜオリンピックのスタジアム、しかも国立でやるのかと。それは論理が間違っている。>

このような見方も有るが、当方は逆にVIPエリアを重視して、例えばホテル化した方が日本にも本格的な「スタジアム文化」導入になるのではないか、という見解で昨日記事を書いた。結局色々な考え方があると思うが、工期・工費最優先による官邸の国交省グループ主導で、どのようなスタジアムが出来るだろうか。

追記以上