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 キールアーチと中国アーチ橋

昨日記事で見直し案が「早い安いまずい」になったら、また国民に受入れられないと云う危惧を書いた。工期・工費以外の要素は色々有るが、それらも満足できる水準が必要。
中でもデザインは引続き重要。ザハ案で懲りたからと言って、デザイン軽視になったら、それも問題。政府も当然分かっていると思うが、そのためか「基本的考え方」(5)項に「日本らしさに配慮する」という文言が入った。これは見直し案へのキーワードになるかも知れない。閣僚会議終了後の記者会見でも安倍氏が再度「日本らしさを取り入れ」と述べていて、こういう場合の総理の言葉は重く、「日本らしさ」は必須項目の様になるかも知れない。ただし、建前上は入札だから果たしてどうなるか。また、もし「日本らしさ」を入札条件に入れようとしても、抽象的過ぎるという懸念が出てくるだろう。

デザインについて、参考としてザハ案を再度考えてみる。アーチが特徴であるが、中国の橋で新国立ザハ案のキールアーチに似た形のものが有ることは、既にご存じの方も多いと思われる。「南寧大橋」と云って中国南部に有り、ライトアップもされて観光名所になっているようである。
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ザハのキールアーチのコンセプトに通じるものがあると思うが、南寧大橋は2009年9月完成で新国立コンペの前である。設計も中国人デザイナーだが、ザハもどこかでコンセプト案など出しているかも知れず、関係性の有無は分からない。それでも外に開いたアーチ形状とその角度がほぼ同じなど、主要部分で共通している所は見て取れる。ただし、中国ではこのようなデザインが好まれるのか2006年にも既に事例がある。(他の国も有るかも知れない)
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新国立ザハ案も賛否両論有るとはいえ、評価する声が有ることも確かである。参考レベルだが建設業界サイト「ケンプラッツ」の当時の読者予想でもザハ案が圧倒的支持を得ており、ザハ案を選んだ審査委員会はあながちおかしな選択をしたとも言えないと思う。また大きさ自体も南寧大橋のスパンは約300mで、日本の建築土木技術を持ってしたら、もっと長くてもいけるという信頼が安藤氏だけでなく著名な建築専門家が務めたコンペ技術委員達にも有ったことは考えられる。
ケンプラッツ読者による投票は11月2日に開始。コンペに対する関心は高く、11月6日午後5時までに548人が投票に参加した。
 あなたが選ぶ最優秀案はどれか。11作品から1つだけ挙げてもらったところ、3者が全回答者の10%以上の支持を集めた。1位はザハ・ハディド・アーキテクト。152票(28%)と圧倒的な支持を集め、2位以下を引き離した。2位はSANAA + 日建設計で96票(18%)、3位はドレルゴットメ・タネ/アーシテクト&アー+アーシテクチゥールで78票(14%)。>

だが、実際には流れるようなキールアーチデザインの裏に、「支持構造なし」と云う根本的大問題が地雷のように潜んでいたという真相はこれまでお伝えしてきた。敷地が広ければ埋設アンカー等で支持できたかも知れないが、過密都市東京の中心に位置し、敷地の制限も最初から示されていた。それで何故このようなことが起きたか、検証委員会でザハ側や日本側の関係者からヒヤリングして詳細経緯を解明して頂きたい。

当方でも概略考えてみると、橋梁を想定してみて以下イメージ図は基本的にザハ案構造(アーチタイ追加前)の特徴を表しているのではないかと思う。つまり、本来意図した「アーチで桁を支える」と云う真っ当な構造ではなく、「桁でアーチを支える」という驚愕の本末転倒構造(逆転構造)になっていた。それが最終的に表面化してプロジェクトを吹き飛ばしてしまった。

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橋を通る車からは「逆転構造」が見えず分からないように、新国立ザハ案でも「スタンドで屋根を支え、更に屋根がキールアーチを支える」と云う構造は当初から隠れて見えなかった。この場合屋根から伸びて下がった部分のキールアーチは飾り部材だった。それが隠しきれなくなって、或いは免震などの特性が満足できず、急遽出てきたのがアーチタイ追加ではなかった。(この辺の真相が検証委員会の調査で明らかになるか)

なお、上記考察を行っていたらザハコンペ案には別の解釈の可能性もありそうで、それは明日記載予定。

以上