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痕跡での証明に関して

rec*lde**des*さんから以下のコメントを頂いた。
 TrueCryptやsubstコマンドによる仮想ドライブと、ファイルスラックなどに残るiesysの痕跡の解析が課題でしょうね。彼が仮想ドライブを認めたことは重要な点。

本事件における最重要ポイントの一つと思うので、当方の現在の見解を述べる。
ただし、検察側が「痕跡」類の詳細を公開してないため、個別事実にはなかなか深く踏み込めないので、他の件も含めた大局的な見方を記す。(因みに検察側ももっと公開を考えたら良いと思う)
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まず痕跡類に関しては以下の大きな疑問点があると感じている。
  検察側は被疑者が徹底した証拠隠滅を図ったと主張しているのに、何故派遣先PCには多くの開発痕跡が残っているのか?

根本的な問題なので、この点を明確化してからでないと論議は始まらないと思う。
そのためには以下の説明が考えられる。
    (ア)犯人が消し忘れた
     (イ)犯人は消そうとしたが何らかの事情で消せなかった
    (ウ)犯人は意図的に痕跡を残した

弁護側は被疑者PCが真犯人に遠隔操作されて犯人に仕立て上げられたという主張なので、基本的に(ウ)であろう。
検察側は(ア)か(イ)になると考えられる。
ただ、(イ)は「何らかの事情」が実際には何か?ということをある程度説明する必要が出て来る。
だが、検察側は被疑者取調べをほとんど行っていないから、どのような事情なのかを掴んでいるとは考えにくい。また検察側だけで事情を想定しても、被疑者にぶつけて反応を確認した上で裏付けまで取らないと意味を持たない。
それで一番やりやすい(ア)を主張する可能性が高いと思われる。
これを[争点Ⅰ]とする。

次にデジタル履歴の中で、もう一つの大きな争点を考えてみる。
12月22日鹿島合宿のアリバイ問題である。これを[争点Ⅱ]とする。
検察側はSDカードのタイムスタンプが変更できることを示して、アリバイ崩しを行うようである。
しかし、弁護側は「タイムスタンプを偽装するなら犯人のストーリーに沿った1月2日以降にするはずであり、12月22日のタイムスタンプは犯人が被疑者のアリバイを消し忘れた、或いは消しそびれたために残ったものである」という主張になる。
検察側がこの主張に反論するには、「慎重な犯人(被疑者)は消し忘れることなど無く、アリバイを作るためにわざとタイムスタンプをずらして偽装した」ということになる。

もうお分かりの通り、検察側は[争点Ⅰ]では「消し忘れた」と云い、[争点Ⅱ]では「消し忘れることは無い」という主張をすることになりそうである。
更に検察側として「犯人は非常に慎重」と云うのか「抜けている」と云うのか、犯人像に関してどういう見方をしているかも問題になってくるだろう。
検察官がこの矛盾を抱えて公判でどの様な主張をするか、或いは矛盾を断ち切れるようなアリバイ崩しの具体的証拠を持っているのか。
弁護団は検察側主張の論理矛盾にどう切り込むのか。
丁々発止の見どころであると思う。
また、その結果を裁判官が自由心証でどう判断するかが最終的なポイントになる。
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以上をまとめてval*gar*yさんのコメントにあった表現を借りて述べると、次のような論理になると考えている。(犯人は検察主張の単独犯とする)
   ・全人類でただ一人の犯人が、消し忘れた多数の開発痕跡を残したことを認めるとする。
   ・では、同じ犯人が12月22日のタイムスタンプを残したのは、消し忘れたのではないことを証明できるか?

警察・検察は12月22日のアリバイ問題を逮捕前に掴んでいた可能性も極めて高く、3月22日の起訴前には間違いなく認識していた。
上記の論理矛盾を解消できる説明や証拠(例えばタイムスタンプ改ざん痕跡等)を用意して起訴する必要があった。
しかし、もしその説明が「タイムスタンプは変更可能」というものであったら、一般人でも「はいそうですか」とはいかないことは明らかだし、裁判官も同様ではないか。

結局複雑な難事件だからこそ起訴する側は全体の整合性を取った説明・証明を行う必要があり、整合性が取れない部分はその理由と裏付けを明確にして置かなければならないのは当然のこと。
検察側から見た主張だけで突破することを考えているとしたら、相当厳しくなりそう。

以上