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証明方法考察

江ノ島で使用されたマイクロSDカードのタイムスタンプ(2012年12月22日12:05)の被疑者アリバイ主張に対して、検察側は「被告人がコンピュータの時刻設定を変更するなどの方法でファイル作成日付等を変更することができたこと」を立証すると云うことのようである。

しかし、よく知られている通り、タイムスタンプ書き換えは容易である。
だが、それを実際にやったことの証明は話が別になる。
大阪地検某検事の場合は、フロッピーに改ざんした証拠が残ってしまっていた。
今回の事件ではどうか。改ざんを示す証拠を検察側は入手しているのだろうか。
今までの経過からは、そういうものは無いことが想定され、それで前述のように「変更することが出来た」という証明方法になるのだと推察される。

もしそうだとすると、本事件では改ざん痕跡の有無だけでなく、某検事の場合とは決定的に違う特別な事情が存在する。
それは弁護側の最重要と言って良いであろう主張が「被疑者が使用していたPCやスマホが遠隔操作で覗かれていた」と云うことのためである。
「遠隔操作で覗くことが出来る可能性」の証明を僅かでも提出できれば、検察側のアリバイ崩しの証明と似てきてしまう。
つまり、裁判官が検察側の”「変更することが可能だった」と云うだけで「実際に変更した証拠はない」”というレベルの証明方法を受け入れたら、弁護側の主張も単に可能性が薄いと云うだけでは無碍には退けられなくなってくるだろう。

このことは皆さんも既に感じておられたと思われ釈迦に説法ではあったが、検察側のアリバイ崩しの証明がどのようになるかは当面の大きな注目事項と思う。
ただ、こんな単純なことが今頃注目されること自体がおかしな話である。

公判前整理手続とその主要目的であるはずの争点整理とは一体何だったのかということになる。
警察はマイクロSDカードの回収後すぐにタイムスタンプを確認しただろうし、道場に通っていたことも程なくして突き止めているだろう。

公約である「シロにする捜査」を行なって調べていれば、被疑者の道場稽古・行事参加履歴とデジタル証拠の日付を照合することは容易で、弁護側がアリバイの存在に気付くずっと前に分かっていたはずである。
12月22日のアリバイ可能性の存在を警察・検察がいつ知ったのかは確認しておく必要があるだろう。

もしずっと前に知っていて弁護側や被疑者に知らせず隠していたなら、某検事並みの不祥事レベルになりかねない。
改ざんはしてなくても某検事の事件があった後なのだから、その反省もせずに被告に完全有利の情報をずっと隠していたとしたなら起訴自体の成否問題にさえつながりかねない。
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以上で本記事の考察完了しようと思ったが、追加で考えてみたら問題はもっと広がるかも知れない。
①検察の事情推察(逮捕後)
以下の可能性は無いのだろうか。
”取調べを行うと12月22日のアリバイの存在を検察側から提示して詳細を聞かねばならならないので、実は取調はやりたくなかった”
前述のように早くからアリバイ可能性の存在を知っていたら、取調をしない方が告知しなくて済むのである。
SDカードのタイムスタンプが弁護側に示されたのは証明予定事実記載書第三部が出された時点とすると7月。
検察側に不利なアリバイ可能性があることを知りながら、取調に応じないのに乗じて引延し、まとめて一気に出して解析に時間がかかるようにしたなんてことは、よもや無いだろうとは思うが・・・。

②警察の事情推察(主に逮捕前)
こちらは更に凄い考察結果になってしまった。
それは、逮捕前にアリバイ可能性を知っていたのではないかと云うことである。
まず、タイムスタンプは1月5日回収後精々1~2日で分かるだろうし、被疑者は1月11日頃からマークされていて、道場への聞き込みも当然行なっていただろう。

警察は逮捕時にこのアリバイの存在を知っていたとしても不思議ではないし、むしろ知らなかったら怠慢と云えるレベル。
逮捕状取る際にこのアリバイの存在は警察内部でどう検討されて、どういう理由でこのアリバイを乗り越えて逮捕状を請求したのか。
「タイムスタンプは書き換えられる」だけで、アリバイ崩せるとして逮捕に踏み切ったのだろうか。

加えて、被疑者は勤務後も道場に通ったと冒頭陳述で述べたことが報道されている。
 < 「仕事後に剣術の教室に通ったり、休日に同居していた母親とドライブしたりする一面もあった」>
当方が以前に記事で書いたように、被疑者が所属する居合道場は各所にある道場のどれに行っても良いというシステムで、夜の稽古をしている道場もある。
そして、遠隔操作やその他デジタル証拠には退社後の可能性があるものも存在する。

合宿の写真とは違って、稽古にはタイムカードのような正確な記録は無いかもしれないが、参加記録は残っている可能性が充分あるだろう。稽古中はPC操作無理だから、稽古していた時間帯にデジタル証拠のタイムスタンプがあればアリバイ可能性になる。

遠隔操作その他のデジタル証拠のタイムスタンプは前年から収集して整理もされて、照合は容易だっただろう。
稽古関係のアリバイ可能性も逮捕前に調べられるし、充分調べてからでないと本来逮捕出来ないのではないか。当然被疑者本人の任意聴取も必須になる。

これらを考え合わせると、もし被疑者のアリバイ可能性を知っていた場合は警察・検察とも以下の対応だったことが考えられないか。
”アリバイ可能性を掴んでいることは伏せておく。しかし取調を行うと後で「何故被疑者に有利な事実を知らせなかった」と言われるから出来るだけやりたくない。
取調をやる素振りだけ見せて、どうしようかと思っていたところに、渡りに船で録音しないと取り調べ拒否と言ってきた。
そのまま取調べなしで起訴。再逮捕しても全く同じ対応。とうとう公判まで来てしまった。”

このような推察が万が一合っていたとすると、違法逮捕・違法勾留レベルであろう。
更に取調を避けたかった要因は12月22日のアリバイ可能性だけでなく、他にも幾つか存在すると類推することもそう無理なことではないだろう。
まさか深層にこのような事情があるとは思いたくないが、これは個人的には憶測でなく論理的な推測に依るものなので余計困惑する

以上

[追記]
kensyou_jikenbo2では、今後の公判は検察側と弁護側で「差し引きゼロ」の戦いが積み重なるのではないかと推測した考察を記載した。
追記以上