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取調可視化に関して

今回の事件では、可視化を求める被疑者・弁護側に検察側がゼロ回答で、取り調べが行われなかったという問題がある。
そこで、可視化について少し考察しておきたい。

可視化については現在、裁判員裁判の対象事件などで試行されているが、法制化に向けての検討が進んでおり、丁度先月14日に法制審の作業部会から素案が示されている、

経過としては、まず法制化に向けて法制審議会(法相の諮問機関)の特別部会は1月、制度設計のたたき台となる「基本構想」を提示。
 (1)裁判員裁判の対象事件について一定の例外を認めつつ、原則、全過程を可視化
 (2)可視化の対象範囲は取調官の一定の裁量に委ねる――とする2案を示した。
しかし密室での取り調べで多くの冤罪(えんざい)を生んできた反省がないとして、(2)の取調官の裁量を認めた点を中心に、委員から異論が相次いだ。

その後、特別部会の下部組織である作業部会が基本構想を話し合い、6月14日素案を提示。
基本構想(1)の例外事例について、「捜査上の秘密が害されるおそれがあること」「十分な取り調べをすることができないおそれがあること」など、捜査側の拡大解釈が可能な条件を盛り込んだ。
批判された(2)案も残された。

以上が公式な動きのようだが、実は既に取調の録音が行われていた事例がある。
奇しくも、佐藤弁護士が担当した有名な冤罪事件である「足利事件」である。
”「足利事件」調査報告書 - 日本弁護士連合会”
足利事件では,警察官と検察官,双方の取調べで,菅家さんに対す
る取調べ状況が録音され,そのテープ合計1 5 本が存在していたこと
が,再審公判の直前に判明した。そして,検察官が録取した録音テー
プのうちの一部( 4 本) が再審公判で再生されている。」

警察官や検察官の裁量で録音できて、上記のように法廷にも持ち込まれているのである。
特に検察官は個人裁量が大きく認められているから、今回も検察官判断で録音すればよかった。
今回は弁護側も録音だけでも良いと譲歩したから、問題なくやれたのである。

また、検察については内部からも以下の様な提言があるという記事も今年出ていた。
”取り調べ可視化:最高検「可視化は有効」 犯罪立証に活用提言”

このような中で、今回検察側が頑なに録音も拒んだのは非常に残念な対応であったと思う。
また検察も公務員であり、仕事の効率性という観点からも、当初から可視化(録音)しておけば、
これだけの大がかりな体制が必要になったり、時間がかかったりということも無かったのではないだろうか。

以上