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取調問題他

昨日袴田事件の再審開始が決定され、袴田氏が拘置を解かれて48年ぶりに外に出て大きなニュースになっている。
本事件も今年中には判決に至ると思われるので、袴田事件の成り行きが潜在的に影響してくる可能性はあるだろう。
袴田事件では、直接的にはDNA鑑定結果が再審決定に大きく寄与したと思われるが、長時間圧迫的取調べは裁判でも認定、証拠捏造の疑いも指摘されている。
本日は本事件と関連して取調と証拠の問題について記す。
(これまでの問題点整理の一環なので連番を付す。DNA問題は明日取り上げる予定)

(3)取調問題
袴田事件では20日間で約240時間の取り調べがあったとのこと。最長は17時間。
しかもニュースによると、8月で当時はエアコンなど考えられない取調室において、動くなと云われて汗を拭こうとしても手を叩かれたりしたそうである。
それ以外にも無理なやり方が多々あって、とにかく少しでも休みたい一心で自供してしまったとのこと。

そのため調書が殆ど採用されていないが、自供した検察官調書だけ採用。
一審の裁判官も無罪と思ったが、先輩裁判官から諭されたと証言していた。
やはり可視化は必須というしか無く、改めて裁判員裁判で可視化導入されたのは大きな改革であったと思う。

しかし、本事件では録音取調べも拒否されたのは皆さんご存知の通り。
kensyou_jikenbo2の方で本年2月21日に書いた記事「取調問題と公判対応」において、最高検が取調可視化試行を行っており、その試行期間が本事件の逮捕から起訴に至る日程と重なっていた事を紹介した(→以降当方)。

  (6月3日訂正…逮捕は2013年2月だったので試行期間とは1年のズレが有り、重なっていなかった。
   ただし、試行が出来たなら、誤認逮捕があったという特例理由で本事件も可視化出来たのではないか)
   

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4.最高検察庁 可視化試行検討
  ・"取り調べ可視化。最高検が、試行結果を公表" 毎日新聞 2012年7月4日
      → 最高検は特捜部などの取調で91件もの試行を行なっている。
    しかも、この結果公表は2012年7月4日で、遠隔操作事件捜査終結の検察会見は6月28日。
    取調べ可視化試行期間は2011年3月~2012年4月だったとのことで、被疑者2012年2月10日逮捕~3月22日初回起訴に至る期間にまさに重なっている。
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何故遠隔操作事件も試行対象に特別に入れて録音取調をやらなかったのか。
上記結果を発表した当時の笠間治雄検事総長の発表時見解は「全面可視化は問題あり」とのことだった。

しかし、試行期間中に笠間氏のところに「遠隔操作事件を録音で取調べたい」と具申や打診があったら反対していたのだろうか。
誰が今回頑なに録音取調べを拒んで、事件の真相解明が不十分なまま起訴を行ったのは誰の指示なのかを明らかにするために、弁護側は笠間氏を証人申請すべきではないかと思う。
個人的推測では笠間氏は「拒むことはせずに現場に任せただろう」という証言になると思う。

それが証言されれば、誰が録音取調べを拒み続けたのか、責任の所在を明らかにできる。
黙秘ではない被告人に対して、取調べを行わず起訴したのは刑事訴訟法第一条「真相を明らかにし」という重要な規程に違反すると当方は以前から主張してきた。
本裁判の有効性を判定するためには、笠間氏に当時の状況を証言してもらうことが必要と思う。

なお、弁護側の対応に関しては、片山氏のネット放送等多数出演についての見方は様々でも、少なくとも「黙秘ではない」という姿勢を完全に明らかにした点では大きな効果があった。
この状況は裁判所にも伝わると思うので、積極的に証言する意志を示している被疑者に対して、殆ど取調べを行わないまま起訴したことの問題を裁判所も認識しやすくなることが期待される。

(4)証拠改変問題
袴田事件では事件後1年以上たって味噌桶の中から発見された下着類に捏造の疑いがあるなど、幾つかの証拠改変の疑いが指摘されている。
当方は基本的に警察・検察の方々を信じるスタンスであるが、第5回公判のN課長証言で今でも証拠(この場合は証言)を細工するのかと驚いた。

「修正作業はチームリーダーI氏の他、5~6人で行った」という肝心な事実を検察側のN課長尋問の中で証言させていないのでは、”数千行のプログラムの修正作業を一人で任されて問題無くこなした”という虚偽の印象を持たせようとしていると思われても仕方がない。
弁護側が反対尋問すれば良いではないかというのは言い訳にすぎない。
必要な状況を正確に述べてから主張をしないと、主張全体の信憑性に疑いが出る。

また、チーム人数だけでなく、「問題なくこなした」を印象づけようとした思われる以下のやり取りも疑問。
   ――被告人の修正が、後に不具合を生じたか。
       「そういう記憶はありません」

片山氏がN課長に出したメールが証拠にされているようだが、メールを出しているということは上司や責任者に確認しているということの証明でもある。
修正するにしても承認を受けているだろうし、上司や責任者の方もまだプログラマとしてスタートして1年半程度の人に全部任せるなどするわけがなく、当然チェックしている。
それがあって「後に不具合が生じなかった」ということであり、片山氏が単独で修正して問題なかったという経過でないことは明白。

証言前に何度も打合せてこのやり取りでは、開発問題を重視する当方として検察側のやり方に大きな危惧を感じざるを得ない。
もっと正々堂々と筋を通して立証の論議をして欲しいと思う。
このままでは逆に検察側の印象が悪くなって不利になるのではないか。
今回の事件は異例の情報オープン化が行われ、多くの一般人が長期に渡って注視しているのをまだ気づいていないのだろうか。

以上