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豊洲市場は環境影響評価条例違反の状態

豊洲市場は、東京都の環境影響評価(アセスメント)条例に、東京都自らが違反しているという異常事態。

「環境影響評価条例の違反状況」

1.環境影響評価審議会へ提出した変更届に違反
2017年8月環境影響評価審議会に対して東京都が提出した「変更届」内容と異なる状況になっている
P8<②  地下水管理の変更 本事業の地下水管理システムは計画地の地下水位を日常管理水位(A.P.+1.8m)に保つ ようにしている。一方で、地下水管理システム稼働後、計画地の地下水位が日常管理水位に達していない状況が発生した。そこで、既存の地下水管理システムに加え、主要建物の地下ピット内に揚水設備を設置するほか、既設観測井戸に揚水ポンプを設置することによる揚水井戸化、外構部にて真空ポンプによる揚水を実施する。これらの機能強化の実施により、日常管理水位に早期に達するとともに安定的に保つ

→機能強化工事は2018年7月完了したと都が公表。
しかし、現状でも日常管理水位(A.P.+1.8m)を超過の地点が多数発生している(後掲)。

しかも「真空ポンプによる揚水(ウェルポイント工法)」施設(WP)を、観測井戸の近傍に設置して、水位を暫定的に下げた状態で水位測定が行われている。本来のWP稼働停止状態にすると、殆どの場合で測定水位は更に高くなる。

2.専門家会議による「追加対策工事の効果確認」は破綻
2018年7月30日専門家会議の会見において、同会議の平田座長から、それまで一度も話が出ていなかった「A.P.+2.4m」という新たな数値が提示された。以前からの「日常管理水位目標」などを含めた趣旨説明は次の通り。

A.P.+1.8m: 
① 土壌汚染対策の実施に当たり、集中豪雨や台風時においてもA.P.+2.0mで地下水位を管 理できるよう、地中の貯水機能を確保するための日常的に維持する水位として設定さ れた「目標管理水位」 
A.P.+2.0m: 
豊洲市場予定地の土壌汚染対策が検討される当初より地下水管理により維持されるこ ととなっていた豊洲市場予定地内の地下水位(A.P.+2.0m前後) 
② 先回専門家会議が「人の健康被害の防止」および「食の安全性」の観点から土壌汚染 対策実施後の安全性を検討したときに評価の前提としていた豊洲市場用地内の地下水 位
③ 追加対策工事の実施に際し、達成すべきとした「当面の目標地下水位
 ●A.P.+2.4m: 
① 土壌汚染対策において地下水中の汚染物質の毛管上昇を防止するために再生砕石 (RC40)からなる厚さ50cmの砕石層(A.P.+2.0m~+2.5m)が設置されたことから、そ の存在を考慮した場合に、これ以下の高さに地下水位があれば砕石層より上の層(盛 土層または床面コンクリート)まで地下水が毛管上昇することはないと考えられる地 下水位(これ以下であれば地下水の毛管上昇が抑制されると考えられる地下水位
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しかし、同時に示された測定水位では、既に1箇所(下表6-①)で「A.P.+2.4m」を超過していた(WP停止前からA.P.+2.62m)。
イメージ 1

更に問題になるのは、その後9月に多雨状況が有り、10月1日測定水位は下表のように「A.P.+2.4m」を超過の地点が複数発生した。特に6街区の地下空間を除く地点の平均水位は「A.P.+2.4m」を超過している。また、同じく5街区・7街区の平均水位も、それぞれ「A.P.+2.17m」、「A.P.+2.24m」であり、WP停止での水位上昇を考慮すると更に上昇する。WP停止での実態調査を改めて実施すべきであるが、東京都は実施していない。

イメージ 2

結果的に、専門家会議が会見で述べた「追加対策工事の効果は確認された」という主張は破綻している。
なお、その後は降雨減少により水位は低下しているが、9月の降雨量は観測史上最高の降雨量ではない。
324mmで9月史上7位...1位は2015年9月425.5mm→年間を通しての観測史上1位は2004年10月で669mm(いずれも気象庁「江戸川臨海」の観測データ)。
今後も起こり得る降雨状況である。その場合には、水位上昇して「A.P.+2.4m」超過の地点が複数発生することが類推できる。

3.高水位が続くことによる影響
液状化対策
P91<(5)豊洲市場液状化対策
1)建物建設地内外の地盤 …
〇これらの液状化判定は、市場施設完成後に、地下水位を A.P.+1.8m に維持することで、液状化しない表層を 4.7m確保することにより担保されている。また、A.P.+6.5m よりA.P.+2.5m までの埋め戻し土の締まり具合によっては、地震時の地盤沈下、地下水上昇時の液状化などが問題になる可能性がある。したがって、地下水位を A.P.+1.8m 以深に維持することが必要である
→「地下水位をA.P.+1.8m 以深に維持」を明確に求めているにも関わらず、実態は前項のようにを「 A.P.+2.4m」も超過している。東京都は自ら設置したプロジェクトチーム(PT)の報告書指示を順守していない。

■毛管上昇対策
専門家会議は「A.P.+2.4m以下であれば、砕石層の効果により毛管上昇の影響は抑えられる」としたが、砕石層上端である「A.P.+2.5m」も超過のため、毛管上昇防止が働かなくなっている。汚染物質を含む可能性が有る地下水が、砕石層を超えて盛土層まで上昇しているので、「盛土再汚染の懸念」も出てくる。

なお、既に2016年から盛土層を超える高水位は続いており、盛土再汚染の可能性が既に指摘されているにもかかわらず、東京都が調査を行っていないことも重大な問題である。

■それ以外(原因調査の必要性)
高水位は設計段階で想定されておらず、結果として「液状化対策」・「毛管上昇対策」以外でも影響が出てくる可能性がある。例えば、地下空間の擁壁に対して、土圧以外に水圧もかかることになるが、耐力は検討されているのか?」などがある。

また、そもそも東京都は、高水位継続の詳細な原因調査を実施していない。前述のWP停止での水位再測定や盛土再汚染の調査未実施なども併せ、余りにも怠慢と言わざるを得ない。早急に調査が必要である。

以上(なお、以下の追記で「将来リスク」・「農水省申請」・「環境影響評価条例違反」の考え方について記述)
[追記]
東京都中央卸売市場のHPトップには、豊洲市場について以下のように書かれている(2018年11月1日現在)。
<「安全・安心な市場」豊洲市場開場に向けて
 豊洲市場の追加対策工事が完了し、専門家会議により「将来のリスクを踏まえた安全性が確保されたことを確認した」と評価されました。 
 これまでの取組により、産地や出荷者、市場関係者や消費者など、全ての関係者の皆様にとって、「安全・安心な市場」としてご利用いただける条件を、都として整えることができました。 
 9月10日に農林水産大臣から開場にかかる認可をいただき、10月11日に開場しました>

→先ず、「将来のリスクを踏まえた安全性が確保されたことを確認した」とある。
しかし、本文で示したように、現状水位が或る程度下がっていても(それでも目標は未達成)、将来多雨状態が発生すれば2018年10月1日の高水位やそれ以上の水位が発生する可能性が充分にある。「効果確認が出来た」とは到底言えない。

また、「農林水産大臣の認可」に関しては、東京都から同省への申請にあたって、「追加対策効果確認では将来リスクを確認し切れていない」ことは言及されていないと考えられる(言及されていないから認可されたと見るべき)。

そして、その後更に「環境影響条例違反」が明確になっているにも関わらず、東京都から同省へ通報や変更を行ったというような発表は無い。結果的に、「虚偽申請」で農林水産大臣の認可を受けていることになり、非常に重大な事態になっている。

なお、本文で言及した昨年の「変更届」は、「盛土」などの記載相違に対する変更によるものである。その変更届の内容が、また実態と違う状態になっている。少なくとも再度の「変更届」提出と環境影響評価審議会の開催による証人が必須にも関わらず、それを行っていない現状は、以下の都議会質疑などから「環境影響評価条例違反」は明らかである。(最終的には、市場問題PTの指摘に沿った「日常管理水位A.P.+1.8m」の達成・維持が必要)。

<○原田委員
アセス条例六十二条には、変更届の提出は、環境への影響の多寡にかかわらず、事業変更の事前に提出しなければならないとあります。この際、当該事業者は明らかな条例違反を行ったといえると思いますが、いかがか
○松本政策調整担当部長
 都の環境影響評価条例上、変更届は事前に提出すべきであり、今回の豊洲新市場の事業計画の変更について、事前に届け出がなされなかったことについては手続の違反と認識してございます

⇒東京都は「軽微変更」を主張するかもしれない。しかし、前回の「環境基準以下の達成放棄」や「盛土無し」の場合は、「追加対策実施で対処する」という言い訳が有ったが、今回は「追加対策しても目標未達」という状況であり、軽微変更には当たらなくなる。

なお、上記で都は「手続きの違反と認識」と答弁しているが、原田都議は本会議でも代表質問しており、小池知事が明確に「条例違反」と答弁している。
<原田あきら議員:
市場が豊洲新市場建設で盛り土なしという、環境影響評価書と異なる工事を行ったにもかかわらず、変更の届け出を放置し、事が発覚してからようやく変更届を出したことを、知事はアセス条例に即して適正だと考えますか。
小池知事:
変更届を提出せずに工事を実施したことにつきましては、環境影響評価条例に違反をしており、遺憾でございます>

追記以上