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水位問題のまとめ

追加対策工事を行っても、地下水位が目標に達しない地点が多数発生という異常な事態になっている。
このような状況を生じさせた都や専門家会議に対する当ブログとしての疑義を、質問形式でまとめてみたので掲載する。
1.追加対策工事の状況
■工事の完了届が7月12日に提出された
2.主要な問題点
①水位目標A.P.+1.8m未達成地点あり:
中央市場HPで公表されている水位データにおいて、工事完了後約1週間経過の7月20日データでも、水位目標A.P.+1.8mを上回る地点が複数発生している(添付図1…添付図は末尾掲載)。(A.P.は以降APと表記)
→工事完了でも目標未達という異常な事態
②ウェルポイント工(以降「WP」と表記)の稼働継続:
7月12日以降もWPが稼働継続している箇所が複数確認されている(添付図2)。
→工事仕様書で「揚水期間は揚水開始から 80 日間」とされている。しかし、3月や4月に稼働開始したWPは、殆どが既に80日間経過でも稼働継続箇所有り。
3.対策効果確認に関する質問
(1)工事完了判定
水位目標未達成箇所が多数ある状態では、対策の効果は不十分であり、対策工事が完了したとは言えないのではないか?
(2)効果確認方法
現時点で目標未達であることは、既に効果確認NGとなっているにも関わらず、7月末の効果確認完了までに、どのような確認を行うのか?
(3)WP稼働停止での水位測定
前述のように、WP稼働期間は「80日間」の予定だったが、市場HPにある観測井戸配置表(前述添付図2)に記載の「WP稼働開始日」からすると、80日間を過ぎても稼働している箇所がある。
観測井戸近傍でWP稼働させていると、原理的に正確な水位が測定できない(添付図3)。WP稼働を停止しての水位測定が必須になるが、効果確認時には停止させるのか?
(4)WP停止での正常水位復帰期間
前項により、もしWP稼働停止して水位測定を実施する場合には、正常な水位に戻るまで停止期間が必要になる。どれぐらいの期間を想定しているか?
(5)WP稼働継続の可能性:
効果確認後もWP稼働継続させる予定はあるか?稼働させる場合は、どれぐらいの箇所になるか?いつまで稼働させるのか?
(6)長期効果確認
仮に7月末に正常水位に戻せて、水位目標達成していたとしても、それだけでは効果確認は充分ではない。例えば昨年10月に多雨状態だった際は、3m超や4m超の水位が発生し、最高は5.44mだった。
水位維持の能力確認には、季節ごとの降水量変動などを考慮して、ある程度長期間の確認が必須。7月末迄では到底困難であることは自明。東京都として必要と考える確認期間はどれぐらいか?
4.根本的原因に関する質問
(7)当初設計との相違
第3回技術会議(2008年12月)資料「集中降雨時における地下水管理の検討 」(資料Aとする)において、次のような説明が有る。
<過去10 年間(2004年1 月~2008 年 11 月末まで)で、豊洲近傍地である新木場観測所及び東京23区における時間最大降雨量が50mmを超過した降雨6パターンについて検討を行った>とされている。
また、「第7回土壌汚染対策工事と地下水管理に関する協議会」 (2012年6月)において、基盤整備担当課長が次のように説明している。
<大雨・集中豪雨、台風に対しましては、東京管区気象台による豊洲近傍での 140 年間の既往降雨の情報から、集中豪雨、台風、梅雨期の長雨に対して対応できるよう設計してございます>
→これだけ検討して設計してあるにも関わらず、かつ現状は多雨状態でもないのに、設計上の管理上限であるAP+2.0mをも超える水位が複数発生している原因は何か?
(8)浸透率
資料Aにおいて、敷地内への降雨の地下浸透量が計算されている(添付図4)。その際に、「道路部(舗装)の浸透率は15%、緑地部は85%」としていた。しかし、それぞれの値に再度吟味が必要と思われる。
(8)-1:道路部浸透率
資料A<国交省の設計指針等での道路の流出係数0.80~0.90 の平均取ると0.85、これが下水に流れるだろうと。>
→流出係数0.85は、浸透率だと15%になる。
しかし、第2回新専門家会議(2016年11月)資料「地下水管理システムの稼働状況」(資料Bとする)では、「浸透率8%」の想定になっている(添付図5)。これは道路部と緑地部を合わせた数値ということが考えられるが、この計算の詳細を示されたい。
(8)-2:緑地部浸透率
資料Aで緑地部は浸透率85%で計算されているが、その後に緑地部には「ベントナイト混合土層」による遮水が実施されている(添付図6)。浸透率も85%から大幅に下がっていると思われ、実際の緑地部の浸透率想定値はどのような数値か?また、その算定根拠をどうなっているか?資料Bの計算とも関連付けて示していただきたい。
(9)水収支
前項のようにして、敷地内降雨の地下浸透量が求められたとして、これは敷地内への流入になる。逆に流出としては、「揚水による排水」と「蒸発」が主なものになると考えられる。流入量と流出量の収支は釣り合っているのか?
(10)水位が下がらない原因
東京都は昨年8月28日の環境影響評価審議会において、水位が下がらない状況に対するる委員質問に、アセスメント担当課長が次の趣旨を回答している(添付図7)。
<地下水をA.P.+1.8mに管理できなかった原因は、平成28年7月から8月に仮設の排水設備を一時撤去せざるを得ない状況になった時期があり、地下水管理システムの本格稼働は10月からで、この時期に台風等の影響により相当量の雨が降ったことから、地下水の水位が上昇したものと市場局の方では考えている>
→しかし、平成28年(2016年)8月からは既に約2年が経過。その間にポンプのメンテナンス・機能強化や、WPを含めた本格的な追加工事も実施され稼働している。それにも関わらず、「2年前の水位上昇の影響が未だに残っている」という説明は無理が有るのではないか?
東京都として、現状で水位がAP+1.8mに管理できていない原因も、一昨年7月8月の影響と、まだ考えているか? 或いは、「新たな想定原因」が有るとすれば、どういうものか?
(11)外部流入の可能性
第7回技術会議(200811月)で、都は次のように回答して、「水の出入り」を否定している。
<(委 員) …周辺の地下水位より低い A.P.+2m で地下水位を管理すると、周辺からの貰い公害が考えられるのではないか。
(東京都) 街区周辺に遮水壁を設けて、水の出入りがないようにする
(委 員) 地下水位を保つために揚水するということは、有楽町層を通した水位の上昇や遮水壁の漏れ等を想定しているのではないか。
(東京都) 殆どないと思う>
→しかし、前項で指摘したように、2年前の大量降雨の影響で未だに高水位継続という説明は無理が有るように思われる。また、低下傾向になっていたが、昨年10月再び当初と同じような4m5mもの高水位が発生した。過去140年間の検討で20cm以内の上昇に抑えるという設計構想からは、かけ離れている。敷地内降雨だけでなく、外部からの地下水流入を考えないと説明が困難ではないか。それでも、東京都は現状でも「外部流入は殆ど無い」という見解なのか? 
5.関連する疑義による質問
(12)アセス条例違反の疑義
(12)-1:実態と異なる記載
環境影響評価書の変更届には、「日常管理水位に早期に達するとともに安定的に保つ」と明記されている(添付図8)。
AP+1.8mに達していない地点が複数ある現状は、評価書の記載事項と異なり、「環境影響評価条例違反」ではないか?(類例で、盛土を記載しながら実際には無かった件は同条例違反と東京都が認めている)
また、開業時までに日常管理水位AP+1.8mが実現できていない場合は、環境影響評価書の変更を再度実施する等の新たな対応を行うのか?
(12)-2:遮水壁の高さ
護岸側の遮水壁高さが4mになっているが、切り下げての施工を申請した変更届は有るか?
暫定措置であるWPの撤去後や大量降雨などで、水位が上昇した場合には、外周を遮水壁で閉じて汚染の拡散を防止する状態になっていないのではないか?
(13)AP+1.8m未達成時の当初設計に対する課題
(13)-1:毛細管現象防止
AP+1.8mが未達成の場合で、更にAP+2.5mも超える場合(実際に超えている地点あり)は、当初設計思想の「毛細管現象防止」が効かなくなるが、どうするか?
(13)-2:液状化対策
市場問題PT1次報告書で、液状化対策においても「地下水位を A.P.1.8m以深に 維持することが必要である」とされている(添付図9)。液状化対策の面からもAP+1.8m達成が求められているが、未達成の場合は、どうするか?
(13)-3:外部流入が有る場合
遮水して外部との地下水の出入りを遮断する設計だが、(9)項で可能性を指摘した「外部流入」が実際に有ると、例えば「315号線」や「ぐるり公園部」の地下に存在する可能性が有る汚染流入が発生してしまうが、どう考えるか?
(14)盛土再汚染
現状だけでなく、これまで盛土部まで地下水上昇していた地点が複数ある。結果的に、「盛土再汚染」が懸念されるが、その調査は行われているか?
(15)最終的な浄化
前述の環境影響評価審議会で、「中長期的な水質改善効果」に言及している(添付図10)。しかし、これは「遮水壁により周辺からの地下水の流入はない」ことを前提にしている。
もし「(13)-3」で示した事態になると、外部からの汚染流入の可能性が出て来て、「中長期的に水質改善」が実現されるか不明になってくるのではないか?
(16)高PH排水
緑地下排水がベントナイト層で区切られて下水に直放流として施工されている。しかし、高PH(12)の為、現時点で下水道法違反になるので放流を止めているとされているが、具体的に排水はどう行っているか?
また、敷地全体の6割近くの雨水浸透を抑制している事になるが、この雨水浸透抑制施設は今後も計画通り維持されるのか?
6.全体として
(17)原因調査の必要性
140年分の降雨検討を行い、更に追加対策を実施しても、水位目標未達成は異常事態であり、根本的調査が必須と思われる。原因調査予定は有るか?
もし、調査しない場合は、当初設計と違う異常事態の原因調査を行わないままで、東京都は開業を実施するのか?
以上、 以降添付図
添付図1:7月20日水位データ
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添付図2:観測井戸配置図
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添付図3WP近傍での水位観測は不正確
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添付図4:技術会議における浸透量計算

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添付図5:新専門家会議資料の浸透率(8%

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添付図6:緑地部のベントナイト層(右下に説明)

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添付図7昨年828日環境影響評価審議会 議事録抜粋1


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添付図8昨年828日環境影響評価審議会 議事録抜粋2


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添付図9:市場問題PT 1次報告書抜粋

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添付図10:環境影響評価審議会…中長期的水質改善

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添付図以上