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PT報告書から見えてくるもの

昨日の日経新聞記事は「豊洲移転で調整」を明記して波紋を呼んだ。
豊洲に移転しつつ、「築地ブランド」を生かすため、築地も売却はせずに何らかの形で活用する案の検討を求めている。23日の都議選告示前にも小池知事が表明する見通し・・・
豊洲移転を前提に築地も活用する案は豊洲派、築地派の双方に訴えられるとの見方がある>
→「豊洲派」・「築地派」の両方に配慮した案の検討は、幅広い都民に立脚する知事として、また都議選を控えた政治団体都民ファーストの会」代表の立場からも、考えられる対応。

ただし、日経記事は「豊洲移転」を前面に出しているが、本当なのかということでPT報告書(最終版は公表前で第9回資料の案)を見てみると、必ずしもそうは読み取れない。報告書は「Ⅰ~Ⅲ」の3部構成になっている。
 Ⅰ 卸売市場のあり方 
 Ⅱ 豊洲市場移転案
 Ⅲ 築地改修案

特徴的に感じることは、本来有りそうな「Ⅳ まとめ」に相当する部分が無い。豊洲移転と築地改修案の両論を出して終わっていることになる。これだと一見して、戦略本部や知事に判断を委ねるかのように見える。

しかし、実際はカラクリがある。以下の目次抜粋に追記した①~③のように、Ⅰ~Ⅲの全てに両論の評価に相当する記述があり、「豊洲下げ・築地推し」の傾向が見て取れるように思う。

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この中で最後の部分「Ⅲ-6」の内容をご紹介。

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豊洲の「五輪メディアセンター化」案がマスコミ等では殆ど報道されていないが、報告書にはサラッと入っている。また、小島氏がPTで、しきりに「神田市場売却」時における「一般会計からの繰入」の説明をしていたのは、「豊洲・築地両方保有の正当化」だった。

以上を総合すると、やはり「両論検討」で、更に「豊洲・築地併用案」になると思える。その際は、②項のように、「豊洲はIT+物流センター」・「築地は仲卸中心市場+食のテーマパーク」と性格分けされると想定される。これは、当方も両論検討する際に考えてみていた、「大卸は豊洲」・「仲卸は築地」の分離分割方式のようになってくるのか。大卸は移転賛成、仲卸は慎重(本音は残留)だから、両方の意向に沿える。ただし、PT案は、下図のように大卸の全機能移転ではなく、Bの中の卸市場は築地に残す構想)

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実際報告書の「新しい築地市場(概ね 10 年後までの想定)」の項目には次のように書かれている。
築地市場の特徴は、仲卸を中心としたモノとカネが結合した市場であり、築地の立地と伝統を最大限活かした機能的で、観光資源にもなる「にぎわい」のある市場である
築地市場の魅力は「仲卸」にある。 

ちなみに、小島氏が一時「青果が豊洲に行きたいなら青果だけ行けば良い」と一見無茶なことを言ったのは、青果はダミーで、「大卸が移転したいなら、大卸だけ行くことも考えられる」という話の前振りと思って個人的に聞いていた。実際「冷蔵棟」などは大卸だけの問題だから、流通センター化を兼ねての移転は筋が通る。

ただ、当然ながら両方投資のコストと回収の問題がある。また特に当方が考えてみた際にネックと思えたのが、分離して市場の機能に支障が出ないかという点。ただしPT案では上図のように、卸市場も築地に残すことで成立させるよう意識はしているようだが、実際にどうかは詳細検証必要。

結果的に分離併用案も色々問題が出てくることは確実だが、「都議選を乗り切る」という戦術面からすると、この方向性が打ち出される可能性は十分有りそうに思う、ただし、その場合は冒頭に書いた疑問のように、「豊洲移転を前面」に打ち出すことになるのだろうか(内実は築地がメインになるのではないか)。選挙戦では「スローガン」になる言葉の問題も重要なので、小池氏がどのように語るか今後が注目される。

以上