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佐藤尚己氏発言(雑誌Will)2「盛土関係」

Will6月号記事で盛土関係の話をしておられる部分をご紹介(Kindle版も有り、是非全文御覧ください)。①~の段落番号は当方付与。発言者表示部分は敬称略で、無表示は佐藤氏。
考察を行なうが全体が長いので、①において佐藤氏発言の基本的問題点を図で先行説明し、最後でまとめて考察。
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佐藤:①第5回の「豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議」(2008年10月29日開催 以下、技術会議)で、「地下空間の利用について、建物の外側に遮水壁をつくり、地下水の流出を止められるのであれば一つの対策としてあり得る」という委員からの発言がありました。つまり「盛土をしなくても問題はない」という認識だったのです。
有本:「地下空間を有効利用したい」という思いは、当初から東京都職員は持っていたわけですね。
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[先行説明]
佐藤氏は、技術会議が「盛土をしなくても問題はない」という認識だったとする。技術会議の公式仕様は「盛土有り」。それに対して、「盛土の必要性認識」は別と考えて、現状空間を正当化しようという論理だろうか。しかし、第1回技術会議で認識されていた専門家会議仕様と最終的な技術会議仕様は、どちらも明確に「建物下の盛土」が図示されており以下に示す。幾ら言を弄しても詭弁か誤解釈にしかならないと思う。

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この後も、現状地下空間擁護の強弁が続く。
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(発言続き)
佐藤:②豊洲を設計した日建設計が提案したから「地下空間」ができたわけではありません。第8回目の技術会議(2008年12月15日開催)では、具体案として駐車場として使えないかと検討しています。ただし、そうなると現状の深さから、さらに1.7メートルほど掘らなければいけない。余計な工費と工期がかかるため、最終的には難しいと判断された。

 ③奇妙なことは、第18回の技術会議(2014年11月27日開催)で提出された最終報告書では、盛土工事の最終状態が報告されているのですが、なんと建物下には盛土がない。つまり、2009年から土壌汚染対策工事が発注されるまでの短い間のどこかの時点で、「盛土をしない」という方針が決定されているわけです。

 ④安全性に関していえば、地下空間をつくることは技術会議の見解で認められていたのですが、メンバーの一人である長谷川猛氏(<公財>東京都環境公社非常勤理事)は「地下空間の利用は聞いたことがない」と発言しています。

有本:⑤決定プロセスに問題はありませんが、盛土がないことが、あたかも”悪”であるかのように喧伝されてしまったことは疑問ですね。いまだに小池都知事は「あるはずの盛土がなかったじゃないですか」と言っていますが。
佐藤:技術会議で認められた対策の一つですからね。
有本:しかし、技術会議は決定機関ではありません。

佐藤:⑥諮問機関です。そこの答申を受けて、都が最終的な判断を下す。土木と建築の技術者間では「建物下に盛土はしない方針」で同意していたことを、事務方は「盛土をする」と思い込んでいたのです。
有本:水が溜まっていたことも大きな問題ではなかったのでしょうか。

佐藤:⑦心配であれば、地下に監視カメラを設置して、地上のロビーに映し出せばいいのです。空気の成分を時間ごとに分析して表示するとか。少しでも異常が見つかれば換気し、排出すればいい。それだけのことです。

有本:⑧昨年12月28日、豊洲新市場に対して、東京都は建物の安全性確保と、建築基準法に適合することを証明する「検査済証」を発行しています。でも、この事実は広く知られていません。この「安全宣言」が我々に聞こえてこないのは、行政の不作為以外の何ものでもありません。
佐藤:仰る通りです。「安心」と「安全」をわざと分離させている。
有本:物事を前に進めず、いつまでも、なんとなく不安を助長させている。行政は本来、逆に我々都民を安心させないといけないのですが。

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[考察]
<第5回技術会議で、「地下空間の利用について、建物の外側に遮水壁をつくり、地下水の流出を止められるのであれば一つの対策としてあり得る」という委員からの発言がありました。つまり「盛土をしなくても問題はない」という認識だったのです>
→佐藤氏が趣旨を引用している実際の第5回会議録と、参考として第4回の議事録を示す。

----第5回技術会議 議事録 該当部分----
(委 員) (前回までで紹介された)提案にもあったが、建物周囲に遮水壁を設置するのであれば、これを利用して地下空間を利用する考え方もある。(東京都) 地下水はすべて環境基準以下に浄化することを考えているので、建物と建物以外を分けるための遮水壁は必要ないと考えている。
(委 員) 建物下に遮水壁を設置しないのであれば、地下空間利用は審議の必要がなくなる。
----第4回技術会議 議事録 関連部分----
(委 員) 提案技術には、緑化や地下空間利用についてもあるが、これらは対象外とするのか。
(東京都) 汚染土壌・汚染地下水対策などとパッケージになっていれば、検討の範疇となる。
----第4回5回議事録引用 ここまで----

地下空間利用について以下のような話があったことになる。
●第4回 「汚染土壌・汚染地下水対策などとパッケージ」なら地下空間は検討対象になり得る
●第5回 「建物下の遮水壁削除なら地下空間利用は審議対象にならない」

少々分かりにくいが、第4回では「パッケージなら検討対象になり得る」という条件が付いている。佐藤氏は、これをどう解釈しているのだろうか。ただし、条件がついた上に「検討対象になり得る」だから、検討してみないと何とも言えないことになる。更に第5回の「地下空間利用は審議対象にならない」という発言や、その後の審議経過を見ても、”「盛土をしなくても問題はない」という認識”が有ったとは到底受け取り難い。

なお、「パッケージ」に関しては、後の方でも取り上げる「盛土と同等対策」のような意図と当方は解釈している。

<第8回目の技術会議では、具体案として駐車場として使えないかと検討しています。・・・最終的には難しいと判断された>
→①で示した第4回議事録のように、「パッケージなら検討対象」というレベルであり、単に地下空間の話が出たから「盛土無しで問題ない」と言うことにはならない。更に次の第9回で「地下利用案は採用しない」ことが決定し、以後地下空間の話は議事録に無い。

<第18回の技術会議で提出された最終報告書では、盛土工事の最終状態が報告されているのですが、なんと建物下には盛土がない>
→これは多くの人が検証しているが、第18回議事録で以下のやり取りがあった。

----第18回技術会議 議事録 該当部分----
○藤原課長 ・・・今ある地盤については、A.P.+2m建築敷地、それ以外のところを盛土というところで、もともとの地盤面が結構高かったので、捨てる量のほうが多くなっているというのが現状でございます。 
矢木座長 そうですか。わかりました。そうすると、今回の工事では2mよりも低いところは、汚染しているものはみんな掘り上げてきれいなものを入れている。それから、2mと4mは全部掘削して、きれいなものと入れ替えている。それからさらに、2.5mですかね、きれいな土を入れているということで、要するに、4.5mはきいれいなものが積んであると、こういうふうに考えてよろしいわけですね。 
藤原課長 はい。 
○矢木座長 わかりました。 
----第18回技術会議 議事録引用終了----

課長の「A.P.+2m建築敷地、それ以外のところを盛土」発言を論拠に、第18回では「建物下盛土無し」仕様になっていたと解釈する向きがある。しかし、座長は「要するに、4.5mはきれいなものが積んであると、こういうふうに考えてよろしいわけですね」と念押しで確認、それに対して課長は「はい」と返答。

つまり、座長は、決定済仕様である「敷地全面に盛土」の説明にしては違和感を感じたと思われ、「4.5m積んであるんですね?」と再確認して、「はい」の回答を得た。これを聞いていた委員も含めて、「仕様は変わらず全面盛土のまま」と思うから問題視しない。そして公式仕様は、依然として「盛土有り」のままで、前述の解釈は間違いとなる。

なお、実名入りの議事録もあるのだから、PTに当該課長を参考人で来て貰って当時の状況を聞いてみれば良い。そのようなことは行われておらず、佐藤氏は十分な確認をした上での見解なのか疑問が拭えない。

また、上記の藤原課長は既に盛土無しを知っていて、まずいと思っていたことは間違いない。しかし、最後の技術会議で盛土無しを説明しようとしたが結局は伝達できないまま終わった。結果的に隠蔽と同様になった。

<地下空間をつくることは技術会議の見解で認められていたのですが、メンバーの一人である長谷川猛氏は「地下空間の利用は聞いたことがない」と発言しています。
→前述のように技術会議は最終的に矢木座長が「全面盛土」を再確認。技術会議報告書も全面盛土。
しかし、佐藤氏は、「地下空間は技術会議で認められていた」と明言。これでは全くの曲解、或いは、もはや虚偽のレベル。

なお、盛土無し発覚後のマスコミ取材で、長谷川氏だけでなく、他メンバーの矢木・根本・川田の各氏も「盛土無しは知らなかった」と述べている。もしや佐藤氏は、この方々が「本当のことを言っていないのではないか」とお考えなのだろうか。

<有本:決定プロセスに問題はありませんが、盛土がないことが、あたかも”悪”であるかのように喧伝されてしまったことは疑問ですね。いまだに小池都知事は「あるはずの盛土がなかったじゃないですか」と言っていますが>
→有本氏も「決定プロセスに問題有りません」とする。上記の様な経緯があるプロセスを充分調査・検証しておられないのではないか。或いは思い込んでおられるか。そして結局は小池批判に持っていく。

<(技術会議は)諮問機関です。そのこの答申を受けて、都が最終的な判断を下す。土木と建築の技術者間では「建物下に盛土はしない方針」で同意していたことを、事務方は「盛土をする」と思い込んでいたのです>
→現実においては、どの部署の誰が行ったかは別として、途中から隠蔽を行った形跡が有る。以前から紹介している「技術会議の資料で第18回は建物の図が消えている」件はわかり易い例。建物を削除する理由はなく隠蔽意図は確実。このような事実も、多分ご両名は認識されていないと思われる。

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<地下に監視カメラを設置して、地上のロビーに映し出せばいいのです、空気の成分を時間ごとに分析して表示するとか。少しでも異常が見つかれば換気し、排出すればいい>
→「水の侵入をカメラで監視」だと要員配置も必要と思われ、システム設計者が普通に考えたらセンサーで自動化する。このような相当ズレていると思える佐藤氏発想の是非は別にしても、「換気」の話が出ている。専門家会議が換気追加を提言予定の為と思われる。専門家会議は更に「地下空間床面の防水・気密対策追加」を検討していることを3月の第5回会議で下図のように示している。

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同会議の平田座長は、再招集された際の記者会見で「今から盛土は出来ない」と発言。これが豊洲問題の混乱を深めた面がある。というのは、平田氏の真意が「盛土は出来ないから、盛土と同等の対策を検討する」という考えであることが、追加対策検討案が出て分かってきた。最初から同会議は「盛土と同等効果の対策」を考えると明言してもらえば、「盛土無しでも問題ない」と誤解する人を減らすことが出来たと推察。(個人的には「盛土同等対策」必要性の周知が遅れたのは非常に残念)

ようやく3月19日専門家会議で上図のような「追加対策工事」の検討が表明された。建築専門家の佐藤氏は、換気追加より、「防水・気密」対策の方が工事量が多くなることは容易に分かる。しかし、記事では全く言及が無い。豊洲移転の前提となる重要情報を抜かしており、専門家として不誠実ではないか。

また、第1回PT会議で現状空間を「都職員の英知」と絶賛したが、後から追加工事必要では工費・工期が余分にかかるのは当然。「英知」と言うなら、最初からやってあるべきもの。佐藤氏の見識には大きな疑問を持たざるを得ない。

<有本:昨年、豊洲新市場に対して、東京都は建物の安全性確保と、建築基準法に適合することを証明する「検査済証」を発行しています>
→これも認識の誤りが酷い。環境影響評価書は「盛土あり」に変更必要なことは、もはや有本氏もご存知だろう。ロードマップにも明記。しかし、現状は変更届が出ておらす、検証報告書で「重大な手続違反」と厳しく指摘している状況が継続。
<事実と異なる環境影響評価をそのまま放置して変更手続きを怠ってきたことは、ミスの一言では済まされず、重大な手続違反と捉えるよりない>

このような環境アセスを前提に開催された都市計画審議会で得た「建築許可」に基いて、豊洲市場は建設されている。出発点の「建築許可」発行に疑義有りが判明していたにも関らず、「検査済証」まで発行されてしまった異常事態。佐藤氏は、建築家として、この問題に気づいておられないのだろうか。
なお、「検査済証」発行は東京都で、小池知事の問題でも有る。

追記では、佐藤氏発言に関する従来分も含めた見方を記述。

以上
[追記]

佐藤氏は第1回市場問題PTでも現状空間を「英知」と評価。都側の検証報告もまだ出ておらず、議題でもなかったのに滔々と自己評価を披瀝。しかし、本文の先行説明図でも「盛土有り」の仕様は明らかで、都側が両会議にも諮らず変えてしまった現状を擁護するとは信じられない話。

それでも「変更を周知していなかったことが問題で、盛土無しにしたのは英知」というのが佐藤氏の主張。だが、本文⑦で紹介の「盛土有りと同等の効果にするための対策工事追加」が見込まれ、工費・工期の増大が発生し到底英知とはいえない。

また本文のように「技術会議は『盛土をしなくても問題はない』という認識だった」という正しくない前提に立っていることが考えられる。結果として第1回PTの当該佐藤氏発言は議事録から削除必要。もし佐藤氏が削除や訂正に応じなければ、PTの責務として対処しないと誤った言説が公式議事録で発信され続ける。

なお、地下空間の経緯としては、これも佐藤氏が言及しておられない「ミニ重機作業用空間」の問題が有る。更に「モニタリングと建築工事の並行実施」という根源的問題などもあるが、長くなりすぎるので機会を改めてまとめたい。

また、このように「盛土無しの経緯」は複雑にも関らず、第三者による検証は行われなかった。この点は小池知事の重大な瑕疵・怠慢と言うよリない。豊洲問題は随所に問題があって混迷に陥っている。

追記以上