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佐藤尚巳氏発言(雑誌Will)1

雑誌Will6月号に「有本香氏と佐藤尚巳氏の対談」記事が掲載されている。この中で、佐藤氏は、第1回市場問題PTの頃から変わらず現状地下空間を絶賛。しかし、結果的には、その地下空間のために開場できない状態が続いている。

しかも、佐藤氏が「英知」とまで高く評価した地下空間に対して、新たに招集された専門会議は「換気と床面気密・防水」の追加対策を検討中。ロードマップでも追加対策工事が予定されている。「英知」なら、必要な措置は事前に盛り込まれているはずだし、後から対策では工事もやりにくくなり工費・工期が余分にかかることは自明。佐藤氏の考える「英知」とは随分レベルが低いように感じる。

佐藤氏や他の即時・早期移転派の方々は、どうも現状空間しか想定しておられないように思われる。しかし、検討段階では別の案もあった。配管スペースと盛土の2層式である。この両方について内容を以下に示し、その後に考察を行う

①現状地下空間(Will記事)
佐藤:地下空間は建物の構造上、存在して当たり前なのです。余り当たり前過ぎて、どうして問題になるか理解できなかった。
 根本的な問題は、技術者が当たり前だと思っていたことが、事務方の人達と共有できていなかった。土壌汚染対策として盛土をしても、これだけの地下空間を作らないといけない、ということをしっかり説明できていなかったのです。
有本:コミュニケーションの齟齬があったわけですね。
佐藤:空間の天地は4.5メートルあります。一般的な地下ピットは約2.5mから3mですが、その深さだと「人通孔」という直径60センチほどの穴を基礎梁中央に空けて、60~80センチぐらいの厚さの梁をくぐって行かなければならなくなる。さらに排水管など無数の配管が張り巡らされているから、非常に複雑な状態で処理しなければいけない。
 どこかでトラブルが発生したとき、大規模の施設では真っ暗闇の中で、地下空間を這って問題箇所にたどり着き作業することは非常に恐ろしい行為です。
有本:結果的に盛土をしなくて正解だった。
佐藤:そうです。4.5メートルという高さであれば必要な梁を取った上で、まだその下に2.5メートルの空間をつくることができました。
 この空間によって配管も自由に配置できるし、問題が発生したとしても自転車に乗って行き、すぐにメンテナンスできる。

②2層式
この方式は2つの書類で示されている。

(1)環境影響評価書案(2010年11月)…評価書(2011年8月)も同記述のまま
イメージ 1

(2)日建設計技術提案書(2011年1月)
■盛土部分
イメージ 3

■配管スペース
イメージ 2
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[考察]
佐藤氏は地下空間の「4.5メートルの高さ」を、<配管も自由に配置できるし、すぐにメンテナンスできる>と絶賛。しかし、その為に盛土が廃止され、都側の議会答弁などの公約と相違し、結果的に開場出来なくなった。

ここで思うのは佐藤氏は「信頼できる専門家」なのだろうか? 単に知識が有るだけでなく、実務において信頼できる専門家とは、担当した案件を成功させられる人であると当方は考える。佐藤氏は「予定通り開場する」という本来の絶対目標を蔑ろにしているわけで、全く信頼できない専門家のように思える。

しかし、①のような言説が、まかり通ってしまっている。これは、「本来どうすべきであったか?」という議論がしっかりなされていないからだと思う。そこで②の「2層式」の話になる。(1)の環境影響評価書の「根切」は、例えば次のような説明がある。<根切りとはコンクリート基礎を施設するために土を掘ること>

これは(2)の「盛土部分」の図になる。根切りを除く部分に盛土という構想が、(1)(2)の2つの書類で一致していた。盛土の高さは4.5メートルより低くなるが、盛土と配管スペースの両立が可能。都側は、最終的には技術会議で再検討して貰うなどして、正式仕様化し実行しようという考えであったと推察できる。

これが全くの盛土無しに変わってしまったのは、日建設計の技術提案が選定されて、基本設計の打合せが始まった際に都側から提示された「地下空間の検討図」による。ミニ重機用空間が必要とされ、それが設計与条件のようになって進んでしまった。この辺の経緯は当ブログで色々記事を書いてきた。

①と②で、どちらが豊洲新市場の設計として適切だったか?を建築専門家で論議して頂きたいと思う(或いは他手法も含めて「どのようにすれば予定通り開業できたか?」)。本来PTはそのような「検証の場」になることを多くの人は期待していたと思うが、佐藤氏の第一回会議での一方的発言が他委員の検証も経ずに議事録に掲載されたまま。そして今月でPTは終わろうとしている。

また佐藤氏は記事で「豊洲移転を推進するチームと思っていました」と述べており、当初から中立的検証は放棄していたことも分かった。PTがやらないなら、建築家団体などでも実施して頂きたいと思う。

以上