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市場問題PT委員「佐藤尚巳」氏発言の”詭弁と虚偽”

第2回市場問題PT(10月25日)の前日に、第1回(9月29日)の議事録がアップされていた。
当ブログではPT委員「佐藤尚巳」氏の「英知」発言を批判してきた。それは、例えば築地マグロ仲卸でキップの良い語り口の生田氏が次のようなツィートをしておられる。
<部下達が持っている能力の最大限を引き出して組織の成果に繋げていくのがトップの腕の見せどころ。一流の建築家が叡智と褒め称えた建物が出来たのは手続きにこそ問題はあったが明確な目的に向かう為の自由括達な議論があったンだと思う。・・・>(11月5日)

→生田氏は、<一流の建築家が叡智と褒め称えた>と佐藤氏発言をすっかり信じ込んでおられるが、調査報告書や議事録等の公開資料から見える実態は大きく異る。昨日記事で別のブログを取り上げて異論を唱えたのも、「誤解の連鎖」を出来るだけ防いだほうが良いという意図があるが、ここでも既に起きている。本日は「叡智(英知)」発言の欺瞞を明らかにする。

生田氏は<手続きにこそ問題はあったが明確な目的に向かう為の自由括達な議論があったンだと思う。>とも書いておられる。これに対して地下空間(モニタリング空間)検討の実態が明らかになってきた。

まず、先日も取り上げたが、基本設計の開始に当たって東京都が日建設計に示した検討資料があって、その中で「モニタリング空間」が”課題①”としてトップに挙げられている。

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今月11月は本来2年間で終わるはずだったモニタリングの最終測定月。しかし、上記に有る「小型ユンボ」の必要性に関しては、これまで全く使用されておらず、基準値超えが有っても使われないというリアリティの無さ。しかし、「稼働空間や出入り口」の設置も明記。技術会議で否定された「地下空間の利用検討」まで入っていた。これらが全街区共通の第一検討課題とされ、実質的に「設計与条件」化していた。

当方から見ると明らかな異常事態。実態としても最近の記事で紹介してきたように、都側は設計期間中に何度も盛土有りに変えようとしていた。その度に日建の不同意などもあって断念し、又持ち出すという迷走ぶり。担当職員は相当の苦労があったと思われる。

そのような実態が、「英知」発言で見えなくなる。率直に信じた生田氏が推測しておられる「自由括達な議論があったンだと思う」に対して、実際はどうだったか。長期に渡って現場責任者だった「M部長」の意向に振り回された経過が報告書から見えてくる。
まず、ポイントとされた「2011年8月部課長会議」に関する証言。
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「万が一汚染が出たら・・・力強い発言が部長からあった」とは、部長が如何にズレているかを部下は分かっていた発言と思う。それに対して、M部長は「作らないのはダメだ」と言っただけとしている。ただし、「作らないとダメ」だと「作る」という指示になるから、実際はもっと違う表現だったと推測するが、M部長の責任回避姿勢は伝わってくる。

また、基本設計開始に当って、モニタリング空間は<厳密な検討を行なったものではない>との都側発言がある。
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ちなみに空間の絵を作成指示したのも報告書によるとM部長。第1検討課題になっている事項が、ポンチ絵レベルだったわけだが、更に具体化に際しても苦労が見える。

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上記の「過剰」から無駄なスペースということが分かる。しかし、担当者は理由が必要だから「掘削土の場内堆積スペース」と言い出している。スペース的には空間が建物下の全域に広がっているのだから、置ける場所は沢山あり、特に高さが必要とも思えない。汚染土を地下に置いておくのも問題になる。リアリティのない苦肉の理由付けだろう。

また、バックホーユンボ)用の有効高さが足りない場合は「人力掘削」で良いと言っている。それなら万が一対応で地下のどこで起きるかも分からないのだから、全面的に人力にしても良いだろう。実際にも高さ2mでも稼働できる最少サイズのミニユンボだと「スコップ代わり」レベルの能力。職員は苦労して、その場をしのぎながら、やっていたのだと思う。

盛土の有無やモニタリング空間の高さなど本質的なところでも、担当者が逡巡・葛藤を繰り返していた姿が議事録の随所に見えられる。やはり潜在的には提言無視はしたくなかったと思う。しかし、最終的な結果は移転判断時期さえ不明で混迷長期化が必至の現状。職員達は今は本当に悔しいだろう。(報告書からすると)一人の人物のために、ここまでの状況が起きた。

ただ、「M部長主導」は調査報告の表現の仕方からは明らかだが、M部長の弁明の取り上げ方も前述のようにあやふやなところがある。やはり、資料を元に事実関係の更なる客観的解明が必須。

現状は延期期間未定となって、損失が膨らむことは確実。この重大事態の発生経緯は、引き続き調査・解明して将来に向けての教訓にしていくことが必要。都の内部調査は終了としても、ここからは建築専門家が中心のPTが第三者委員会として解明に取り組むべきと思う。是非やって頂きたい。

その際に、佐藤氏発言の問題を明確にしておく必要があると思う。同氏が挙げておられるポイントは二つ。
<二つの問題があって、一つは、誤解されている最も大きな問題は、地下に大きな空間をつくったことによって、大変な出費をしているのではないかという誤解があるのではないかと思います。もう一つは、この地下空間は一体何のためにあるのかという、構造について上手に説明しきれていない問題があると思います。>

→一つ目の「出費(=コスト)」の問題については、次のように解説されておられる。
三つの街区の総面積が40.7ha(40万7,000㎡)あります。・・・差し引き約100万㎥の土が実際は盛り土されなかったわけです。・・・ざっくりと(1㎥当たり)1万円と評価すると、盛らなかった土の評価は100億円に相当します。

→しかし、地下空間の試算を行ったブログが有る。

ブログの該当箇所引用は[追記]に載せてあるが、要約すると次の2案比較が重要と思われる。
 (A)ピット案…躯体単価は70,000円/㎡程度(「新営予算単価」から推測)
 (B)盛土案…盛土の相場で立米あたり3,000円(相場は「テキトー」とのことだが、「5倍でも」との記述有り)

盛土相場が5倍の15,000円でも「A>B」。つまり、佐藤氏想定の立米あたり1万円でもA(コンクリート躯体)の方が高いということになる。ただし、当方では見積もり詳細検証は難しい面があるため、専門家が検証して頂けると有り難い。しかし、少なくと佐藤氏の主張は、このブログ作者のように「地下ピットと盛土の費用比較」」を踏まえてのものだろうか。もし、費用比較もせずに主張しておられたら「詭弁」レベルになってしまう。また、佐藤氏の「費用比較」もあるなら、ご説明願いたいということになる。

佐藤氏のコストに関する発言は続く。
<さらに、一旦盛り土したとして、そこから建築に必要な地下ピットをつくったとします。通常の大きな建物だと2mくらいの深さ・・・実際に設計すると、恐らく3m、あるいは、それ以上になるのが適切(その分掘り込むので75億円)。・・・盛って掘ることによって175億円くらいの費用が余計にかかります。>

→これも詭弁の疑義あり。前述のAとBで考える。豊洲の場合は、AP+2mまで掘込み済みの状態から建てることはA、Bとも可能。よって、AもBも「盛って掘って」取り止めで浮く費用(100億円?)は同じなので、「盛って掘って」の分は比較から外す必要あり。また、「一旦盛り土したとして」と仮定しておられるが、前述のように「盛土有り」でも掘る必要は無いから、比較の仕方がおかしいと思う。結果的に上記ブログの比較のほうが妥当だろう。

しかし、更にもっと不合理な発言。
<構造的に増えた分量は1mからせいぜい1.5mくらいの構造の費用です。>

→高さアップによるコンクリート躯体の費用増加分を、どのように見ておられるのか。その上、都側も引合いに出しておられる。
一体どちらが得なのかということを、当時の技術担当の方は当然考えていたと思います。技術担当のトップの方にも当然それは報告されていたし、わかっていたし、技術者であれば、そのくらいのそろばん勘定はすぐに行います。>

→しかし、都側はちゃんと本質が分かっていて、第1次報告書で次のようになっており、地下空間(コンクリート躯体)のコストを意識していた。
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次に一般向けの発言。
<皆さんが自分の住宅を建てる場合、1mの土盛りをして、そこから75cm削って工事を行うという提案があった場合、ばかじゃないか、なぜそんな無駄なことをするんだと言うに決まっていますよね。>

→これも結構重要な話になる。「1mに対して75cm削る」なら「4mでは3mの掘削」。例えば残りの1mでも盛土が有れば、専門家会議も対応の仕方があり得る。また、日建の技術提案書でも配管スペースは2m程度で、その下に盛土が有った。「2層式」はあり得たことになる。

そして、仮に2層式で「1~2mの盛土」でも有ったならば、例えば「汚染物質遮蔽性能の余裕は少なくなるが、盛土無しのままでも良い」というような判定もあり得る(「移転は今更やめられない」という空気を読むと更に可能性が高まる)。

それが盛土全く無しでは、地下水等の「曝露」と認定される可能性が出てきて、現状のままで了承されるかどうかは不透明。しかし、佐藤氏は盛土無しが正しい判断と次のように肯定。
<都庁の技術担当の方の正しい判断だったと思います。それが報告されていない、シェアされていないことは非常に大きな問題ですけれども、技術的な判断としては、盛らないで下から建物を建てたことは正しかったと思います。>

→<技術的な判断としては、盛らないで下から建物を建てたことは正しい>は、「盛って掘って」の取りやめの話だから、前述のように同条件になるので判断比較の意味がない。そして、<シェアされてなかったことは非常に大きな問題>としながらも、同時に<技術的には正当>とするのでは問題の矮小化につながりかねない。

総合的に見て、「盛土無しでは各会議の結論や都側の説明と異なってしまう」ことが、どれほどの影響を生むかの認識が根本的に甘いと言わざるを得ない。仮に当時は、これほどの事態と考えておられなかったとしたら釈明が必要だろう。その時に「英知」の評価はどうされるか。もし今の事態をある程度は想定しておられた上の発言で、今でも「英知」とされるなら、もはや言うべき言葉もない。PTとしての問題になるだろう。

ここまででも色々有る発言と云うことが分かって頂けたと思うが、更なる技術的認識の問題もある。
<なぜこの空間が必要だったかという点ですが、先ほど説明したように、地下には非常に多くの配管類、ダクト類が走っています。・・・ 必要な基礎梁は床から2mくらいですから、その下は2m実際にあいているわけです。・・・その空間は設備にとっては非常に重要な空間です。・・・50年先、70年先でも十分に、更新しながら使用していくことができる、そういう非常に重要な空間ができたわけです。
これを設けたことも、私は、都の技術系の方の英知だと思いますし、これは決して責められることではないと思います。私は、単純に技術の話をしています。>

→まず、基礎梁位置などの基礎構造面及び耐震性などの話は第2回PTで結論が出たような雰囲気になったが、昨日紹介した「層間変形角は当初想定の1/200から緩和した」と読める議事録の存在などで、また変化があるかもしれないので、ここでは検証対象外としておく。

その上で、佐藤氏の「英知」発言の重要論拠になっている「配管スペース」についての発言を他の部分も含めてまとめる。
<基礎梁の下は2m実際にあいているわけです。皆さんもご覧になったように、この空間は何なのかという広い空間があるけれども、実際は、その空間は設備にとっては非常に重要な空間です。>

→PTメンバーと一緒に現場を見て、「配管スペースの高さは2m」と言っておられることになる、一般の我々は写真や動画でしか見れないが、当方には基礎梁に穴を開けて配管を通しているような箇所は見えない。そして、議事録を見てみても「梁貫通は行わない方針」(2011年11月2日会議)が示されている。
結果的に4mの空間高さでも配管スペースの高さは実質2mということになる。写真や動画とも辻褄が合う。

ただし、ここで矛盾が出る。以下の発言とは話が合わない。
<地下ピットも、通常の大きな建物だと2mくらいの深さになりますが、今回の市場は350m×200mとか非常に巨大な空間で、その地下に通す配管の水勾配を考えると、建物半分から最短距離でも100mくらいの経路を経ないと水が流れません。そうすると、100分の1で計算しても1mの落差ができます。そういうことを考えると、2mではとても足りない。実際に設計すると、恐らく3m、あるいは、それ以上になるのが適切な地下空間のピットの寸法です。>

→「豊洲は巨大だから配管スペースも通常の2m程度では足りなくて、3mかそれ以上必要」という趣旨に読める。しかし、前述では実際に見た結果で2mと言っておられる。結果的に、次のような「ロンダリング?」が見えてくる。

 ”「配管スペースは通常2mぐらい」→「巨大だから3mかそれ以上必要」→「増えたのは1mか1.5mくらい」→「4mの空間は英知」”・・・しかし実際の現場の配管スペースは2m

明白な矛盾をここまで逆の評価に持ってくるのは、「詭弁」を通り越して「虚偽」のレベルと感じる。特に現場の配管スペースを2mと認識した上での「3mかそれ以上が適切」発言は、矛盾していて虚偽になる。「3mが適切だが実際は2m」という話は通らない。英知としておられるのは、「3mやそれ以上の高さによる効果」だから、2mでは根拠が崩れる。

このように技術面でも疑問な発言。そして、結果として上記生田氏のような誤解も生んでいる。これではPT委員としての適格性にも疑問符が付くのではないか。

加えて、これも前から取り上げている、第2回PTで見られた「社会的常識の欠如」がある。前提として、第一回会合の最後で小島座長が次にように述べられている。
<必要な場合はヒアリングをする人をお呼びして、あるいは、先ほどの10ミリ・150ミリ問題も、見つけた人がいますので、公平を期するということで、日建設計(側)のこれはおかしいという人もお呼びして、実のある議論をしていきたいと思います。
  これは一つずつ整理していけば、これが東京の成長に役立つ、これが東京の夢になっていくという自信と安心がこれによって持てるかどうかです。いろいろ問題があれば今のうちに全部出して、全部を解決した上で、そういう希望を持って進められる状態にならないと、これはうそだろうと思います。ですから、専門家だけではなくて、皆さんが理解することも重要だと思っています。>

→「ヒヤリング」及び「問題の洗い出しと議論」が第2回の趣旨だろう。委員は趣旨に協力して来てくれた参考人から中立的な立場でヒアリングするのが当然なのに、委員が立ち上がって参考人を非難しだした。

しかも、佐藤氏が主張した「事実と違う表現を用いて都民の方に誤解を与える解説をした、それが専門家のやるべきことなのかと非常に疑問に感じました」は、本日記事を書いてみて改めて佐藤氏自身にお向けになることが適切と当ブログでは判定する。

高野氏のモデルの考え方は、「土の拘束がない」という現実と合っていている。そして小島氏発言の趣旨に合わせて一般の人にも分かりやすくした工夫だろう。逆に日建側の<周りの土には拘束を期待していない>という曖昧な発言の方に、明確化が必須な技術者として当方は違和感を感じた。佐藤氏は違うのだろうか。

模型の動かし方については、疑問があれば指摘してから、小島氏の言う「実のある議論」を行えば良い。定性的には合っているのだから、日建側の曖昧さも排して明確な議論をして頂きたかった。

こうやって見てみると、やはり余りにも問題が多い。小島氏は辞任を求めるか、ご本人が自発的に退任されるべきではないか。或いは少なくともPTの場で、これまでの発言について再度ご説明いただきたい。

そしてPTは、小島氏発言にある<一つずつ整理していけば、これが東京の成長に役立つ、これが東京の夢になっていく>という強い意思を持って、都側の調査が終わった盛土問題もPTの対象に加えて、今後の希望を持てる体制にしていくために再調査して頂きたい。

民主主義のためには正しい情報が必須。しかし、当ブログで様々な事案を検証してきた結果では隠されている重要事項も多い。今回は議事録等も有って解明可能な事案になったと思われるので、僭越ながら日本の民主主義の発展のためにと考えて、思い切った内容を長くなったが記した。

なお、もう一度内容を見直してみて、ここまで問題の多い発言だったのかと改めて驚く。逆に当方読解も心配になってくるぐらい(苦笑) 当然ながら人それぞれで解釈の違いはあり得る。しかし、 現時点では基本的な読解違いと思えるところは無いつもりで、しかも(早まった)「英知」発言は影響が大きい。現状も踏まえて再度ご説明して頂きたいと思う。小島座長には、次回以降のPTでその場を作って頂きたい。
当方も違っていたら修正するが、問題点が多いので大勢に影響するかどうか。

以上
[追記]
本文で紹介したブログの該当箇所。

<私のコメントでは、地下を掘削してピットを作るように読めます。実際には、A.P.+2.0mの地盤面は露出していて、その上に盛土をするかピットを作るかの比較になります。ですが、それでも、ピットの方が安くなると思います(当方注:後の文章から、これは「盛土のほうが安くなると思います」の書き間違いと想定)。思うだけじゃ何なので、超概算で比較してみます。用いる資料は国土交通省作成の「平成29年度新営予算単価」です。官庁の予算要求用ですが、どうせ超概算ですから。

○ピット案(A.P.+2.0mの上に高さ4.5mのピットを作る費用)
 「新営予算単価」は一般的な事務庁舎を想定していて、階高は4.5mもありません。また、地下ピットの外周壁は窓もなく、土圧水圧を受けますので、コンクリート躯体も大きくなります。ですが、安めの見積もりとしてこれを用います。
 RC-4(3,000㎡)の躯体単価は70,000円/㎡程度です。

○盛土案(A.P.+2.0mの上に高さ4.5mの盛土を行う費用+杭が4.5m長くなる費用)
 杭が長くなる費用も「新営予算単価」のオプション(くい地業)を用います。豊洲市場の工事写真から判断すると場所打ちくいで30から40m程度あるようなので、15,480円/㎡を採用します。4.5m分の㎡単価は、2,400円/㎡程度です。
 盛土は土木工事なので「新営予算単価」にはありません。仕方無いので、大体の相場(テキトー)で、立米あたり3,000円とすると、3000×4.5=13,500円/㎡。
 合計は、2,400+13,500=15,900円/㎡<70,000円/㎡ 

 特殊な事情で盛土費用が5倍になっても、逆転はしません。考えて見ればわかると思いますが、躯体には手間とお金がかかります。まず材料のセメントや鉄筋の製造には大きなエネルギーが必要ですし、支保工の設置、型枠、鉄筋工の加工、組み立て、コンクリート打設、養生、型枠・支保工ばらし、補修という工程が必要です。もし、地下ピットのようなコンクリート躯体が安ければ、団地などの造成でも、盛土はやめて、人工地盤にするほうが得です。>

追記以上