kensyou_jikenboのブログ

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噴出する粗雑な見解と誤解の連鎖

アゴラで次のような記事が出ているが、明白な事実誤認がある。
<盛り土問題について、市場問題プロジェクトチームの第1回会合で佐藤尚巳専門委員が土壌汚染について問題無いことを、第2回会合で小島敏郎座長が耐震性について問題無いことを明言しているからだ。>
→第1回の佐藤氏、第2回の小島氏とも、そのようなことは言っていない。また、建築家の佐藤氏が土壌汚染を、環境省出身で弁護士の小島氏が耐震性を、PTも始まったばかりで明言できるはずもない。よくもまあ、ここまで間違ったことを書けるもの。アゴラの信頼にも係るから、早く訂正や取り下げなどの手を打ったほうが良い。(ちなみに「君主」から「君子」への訂正も行ったほうが良いことは多くの人が気づかれていると思う)

そして宮寺氏は郷原信郎氏の記事を「勉強になる」と高く評価して次のように書いておられる。
ヤメ検弁護士として有名な郷原信郎氏がコンプライアンスの観点から小池都政を批評した記事が話題を呼んでいる。・・・大変勉強になる。>
→しかしながら、郷原氏記事も当ブログで解明してきた客観的事実に照らし合わせてみると矛盾や詭弁が多数。余りにも多いので書き切れないため、本日は一部をご紹介。

----郷原氏ブログ引用開始----
「第二次自己検証報告書」による技術会議報告書の「歪曲」
「第一次自己検証報告書」を訂正し、真相に迫ったとされている「第二次自己検証報告書」では、「豊洲新市場整備方針の策定(平成21年2月6日)」として、
平成21年2月6日、石原知事決定の『豊洲新市場整備方針』(以下、『整備方針』という)が策定された。技術会議の提言内容(敷地全面A.P.+6.5mまでの埋め戻し・盛土)をもって都の土壌汚染対策とすることが明記された。これにより、専門家会議、技術会議の提言は、都の方針となった。
と記述されている。

しかし、ここで「敷地全面A.P.+6.5mまでの埋め戻し・盛土」と書かれているのは不正確である。技術会議報告書には、「エ 埋め戻し・盛り土」の項目の中に、小項目として「①砕石層設置」「②埋め戻し・盛り土」が設けられ、「砕石層設置」については「敷地全面にわたり、A.P.+2mの位置に厚さ50㎝の砕石層を設置する」と書かれているが、「埋め戻し・盛り土」については、「砕石層設置後、計画地盤高(A.P.+6.5m)まで埋め戻し・盛り土を行う」と書かれているだけで、「敷地全面にわたり」とは書かれていない。基本的には、「砕石層の上に6.5m埋め戻し・盛り土を行う」という方針であることは明らかであるが、モニタリングのための地下空間を設置することにした場合にも、6.5mの「盛り土」を行った上で、設置することが必要だという趣旨かどうかは不明である。(当方注:提言では砕石層の上の盛土は4mになる)
----郷原氏ブログ引用終了----

第2次検証報告書が「歪曲」をしている疑いがあるとしていられるが、全く逆で歪曲は郷原氏の方になる。技術会議報告書の該当部分を抜粋。
イメージ 1

盛土のところには「敷地全面にわたり」と書かれていないから、「砕石層は全面でも盛土は全面ではない可能性がある」というのが同氏主張になるだろう。しかし、これは当ブログ11月16日記事”盛土第2次報告書に関する「読解」と「真意」”で紹介した一般の方のブログと同様の読解ミスをしておられる。理由は同記事で詳しく述べているが、ここでも説明を行う。

まず、同記事でも述べたが、技術会議の報告書は次のように、「提言の特色」の第一番目に「専門家会議の提言を確実に実現」と掲げている。
----技術会議報告書引用開始----
3 提言の特色
(1) 安全・安心を高いレベルで確保
専門家会議の提言を確実に実現
技術会議の提言は、土壌と地下水を環境基準以下に処理するとともに、遮水壁や砕石層の設置による地下水の流出入や毛細管現象の防止、地下水位をA.P.+2.0mで維持し、水質を管理するという専門家会議の提言した土壌汚染対策を高いレベルで実現する対策となっている。
地下水を敷地全面にわたって早期に環境基準以下に浄化
地下水を早期に浄化できる処理技術によって、市場施設の着工までに、建物下・建物下以外の地下水をあわせて環境基準以下に浄化する。
これは、建物下・建物下以外を分けて段階的に浄化していくとした専門家会議の提言を超え、安全・安心をより一層確保するものである。>
----技術会議報告書引用終了----

最初の「ア」で「専門家会議の提言を確実に実現」と謳っている。
その上で、「イ」では「建物下・建物下以外を分けて段階的に浄化していくとした専門家会議の提言を超え」として、同提言を上回る対策について述べている。
逆に、もし実現できない部分があった場合は、同提言と異なった部分を明記しないと整合性が取れない。しかし、技術会議報告書には「仕様変更して建物下は盛土無しにした」というような趣旨の記述は全く無いし、各回議事録の論議経過にもない。

実態は、技術会議では建物周囲の遮水壁を無くし、建物下と建物下以外の対策の区別を無くしたから、以下の専門家会議報告書のように建物下と建物下以外を分けて両方で同じ内容を書く必要が無くなったと云うだけのこと。建物下もそれ以外も同じ4.5m盛土であることは変わらない。

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また、郷原氏も、実際はある程度お分かりなのかも知れない。技術会議提言が「全面盛土では無い」という断定は避けて、「不明」と述べられている。結果的に、無理筋の解釈で頑張っても、「不明」にまでしか持っていけないということになる。

それであれば、同氏は検事・弁護士の経験がお有りなのだから、不明のままにせずに様々な証言や証拠で事実確認を行う手法は当然ご存知。今回は非常に簡単で、技術会議提言内容に不明な点があるなら、メンバーに聞けば良い。それは既に報道で例えば次のように出ている。
----東京新聞記事引用開始----

豊洲市場を巡っては〇八年七月、土壌汚染対策を検討する有識者の「専門家会議」が、敷地全体を盛り土するよう都に提言。都の資料によると、この会議では「有害物質が建物内に入る恐れがあるため、地下施設は造らない方がいい」と指摘していた。

 提言を受けて都は〇八年八月、工法を検討する専門家の「技術会議」を設置した。しかし、議事録などによると、都側は同年十一月の会議で、地下空間を設けて駐車場などに利用する公募案を紹介。翌月には、地下空間を設ける理由として「有害物質が検出された場合、浄化作業ができる空間が確保できる」と別の提案もしていた。

 駐車場などの公募案は工費や工期の問題から技術会議で却下された。都は建物の下に浄化作業ができる空間を確保する案を設計に反映したという。だが、設計図面を技術会議の委員に示さなかった豊洲市場の整備を担当する都の芳田浩司課長は「工法が変わったら専門家会議に戻して安全性などを検証するべきだったが、解散したこともあって検証が抜けていた」と説明した。

 一方、技術会議の委員だった川田誠一・産業技術大学院大学学長は「地下も盛り土がされたと思っていた。実は空洞だと聞き、びっくりした」と話した。委員だった長谷川猛・都環境公社非常勤理事は「地下空間の利用なんて都は会議で詳しく言っていない。技術会議で承認していないと思う」と指摘。都によると、地下空間がある建物のうち、青果棟は地下水の上昇を防ぐ砕石層がむき出しになっており、コンクリートで覆っていない。長谷川氏は「地下の改修工事が必要になるのでは」と話した。
----東京新聞記事引用終了----

この記事では技術会議メンバーだった川田氏・長谷川氏が「盛土無しは知らなかった」という趣旨で証言。他に矢木座長・根本委員も同様の証言をしている報道がある。また、都側は<設計図面を技術会議の委員に示さなかった>とのことで、委員には分かりにくくなっていた。

このように幾重にも、「技術会議は建物下の盛土無しを考えていた」という主張は否定される。しかし、郷原氏は前述に続く項目で、<専門家が評価する「建物下盛り土せず地下空間設置」>として、藤井聡氏・佐藤尚巳氏・若山滋氏の評価を挙げておられる。だが、藤井氏・佐藤氏の言説には問題が多いことを当ブログで既に明らかにしてきた。その内容はここでは繰り返さないが、藤井・佐藤両氏は土壌汚染の専門家ではない。もう一人挙げられている若山滋氏も建築家(この人の主張も酷いが、論評対象が多すぎて今はパス)。

郷原氏は、技術会議の趣旨が「不明」としておきながら、土壌汚染専門家でもない部外者の意見を持ち出して、「専門家が評価」としている(建築面との混同もある)。当ブログで危惧してきた「誤解の連鎖」を意図的にやっておられるとも見える。

しかし、上記のように当事者の技術会議メンバーが盛土無しは考えていなかったと言っている。裁判なら、郷原氏主張は簡単にひっくり返される。検事出身で現弁護士が、このような粗雑な論理での主張をして、それを評価する人も結構いることは、日本の言論の低迷を表していると言えるかもしれない。

ただ、小池氏側も処分は表面的に形を付けたというレベルで、盛土問題の真相解明には中途半端な部分がある。そのような隙が有るために、上記で言及した宮寺氏や若山氏などのように新たな批判者が出てきている。

誤解の連鎖が生じていて、更にバンドワゴン効果のようになってきては混迷が深まるばかり。当ブログでは、これまでの検証で得られた客観的事実とそれによる論考を紹介して、誤解の連鎖を少しでも防ぐように記していく予定。

以上