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宇佐美典也氏ブログの「舛添基準」という誤謬

(本記事で取り上げた、所謂「舛添基準」についてNHKまで間違った認識の報道をしていたので以下記事で追加説明を実施。こちらも御覧ください。

以前記事で誤謬を指摘した宇佐美氏ブログで又新たな記事が出された。そして又誤謬がある。

同氏は<現状「豊洲市場の開設条件となる安全基準」を議論するときに三つの基準が想定されています>としているが、そのようなことはなく東京都の基準は早くから1つである。

同氏の言う①~③の基準と関連する事柄を時系列でまとめる。
----時系列開始----
(1)2008年7月専門家会議提言
②専門家会議基準
(2)2009年2月技術会議提言、新市場整備方針
(3)2010年11月16日経済・港湾委員会
(4)2011年3月22日自由報道記者協会 会見
①石原基準
(5)2014年11月27日技術会議第18回(土壌汚染対策完了確認)
(6)2014年12月9日舛添知事会見
③舛添基準
(7)2014年12月17日 新市場建設協議会、都議会(桝添知事2016年11月開業宣言)
(8)2014年12月月22日 経済・港湾委員会
----終了----

宇佐美氏提示の3つの基準のうち、最後となるのが「③舛添基準」。これにより次のように環境基準の扱いが変えられたと同氏は主張。
環境基準の達成を豊洲の開設条件から切り離したのが舛添知事です。舛添知事は環境基準を達成しなくとも土壌汚染対策法上はなんら問題ないため、「技術会議に定められた汚染対策を実行すること」を豊洲の開設条件としました。(③舛添基準)>
→これは全くの誤解釈。(6)2014年12月9日舛添知事会見より後の(8)同年12月22日経済港湾委員会で都側は次のように答弁。

----若林基盤整備担当部長 答弁開始----
当該用地における土壌汚染対策は、ガス工場操業地盤面から下二メートルまでの土壌は汚染の有無にかかわらず全て入れかえ、その上に二・五メートルの盛り土をすることに加え、操業に由来する汚染土壌を全て掘削除去し、汚染地下水は環境基準以下に浄化するなど、繰り返しになりますけれども、法の求める措置を上回る二重、三重の対策を実施したものでございます。
こうした万全な対策をとっていることから、形質変更時要届け出区域が残ることをもって、市場用地の安定性に問題があるとは考えておりません
----終了----

「汚染地下水は環境基準以下に浄化」と明言しており、知事会見後も都側は環境基準の扱いを変えていない。
また、担当部局より知事発言の方が重いのではないか、と見る向きもあるかもしれないが、宇佐美氏の舛添知事発言の読解自体に間違いが有る。

同氏ブログは会見での豊洲質疑の一部引用を行っている。しかし、同質疑はもっとあって全体を後掲する。
最初の部分で記者は「開場時期」について質問。開業時期発表が注目されていた時期だった。
そして、この会見後の(7)12月17日都議会で、舛添知事は「開業時期を2016年11月上旬とする」との答弁を行った。

つまり、当時知事は開業時期を都議会にて公表する直前で、その時期はモニタリング完了より前だった。そこで都議会前に、「モニタリングが法的に決められたものでなく開業条件ではない」と、会見で先にエクスキューズを入れておいたと解するのが妥当。(前述の若林担当部長も「区域指定が残っても開業に問題はない」と述べて都側見解は整合)

----2014年12月9日舛添都知事会見 豊洲やりとり部分引用開始----
【記者】東京新聞の松村です。豊洲新市場の開場時期についてなんですけども、担当局によると、いろいろ施設が完成してからも、以降の準備がいろいろ時間かかるということなんですけども、工事自体が遅れる可能性があるということも開場時期の検討の一つに入ってるんでしょうか。
【知事】まず、今日一部の新聞で、開場時期について何年何月って明言されていますけれども、公式にはまだ決定はしておりません。東京都と市場関係者の間で、今、真剣な議論が行われているところでありまして、その話がまとまれば、担当の都の職員の方から正式に何年何月の開場ということが言えると思います。それまでは、いろいろな要因があって、いつ開場すれば良いのかというのは、一番大切なのは市場関係者。商売をしている訳ですから、商売にとって一番良いということを優先させないといけないので。私が理解している限りにおいては、工期が遅れる云々ということはほとんど問題ではないというか、工期がこれだけかかるから開場時期が遅れていますとか、そういう話ではないのではないか。もちろん、工期の話は当然常識の話として考えないといけないですけれど、むしろ、新しい市場をオープンするに当たって、何月ぐらいがお客様にとってもお店の人にとっても一番好都合なのかということを、工期を共に考えて、真剣に検討中というのが私ができる答えでありまして、正式に決まれば、またお知らせしたいと思っています。
【記者】すいません、もう一つ。土壌汚染工事の関係なんですけれども、この間の技術会議で場長はこれで土壌汚染は解消したというふうに認識しているということを最後に言われたんですけども、それは実質的な安全宣言だと捉えていいんでしょうか。
【知事】基本的には、まさに何重にも安全な措置を取ったということが一つ。それから、この土壌の安全措置というのは、絶対にやれという法的に決められたものではなく、これはこれできちんとやる。しかし、そこに市場を開設するかどうかは、その措置をやらないとできないというような、そういう決まりではありません。法律を調べればわかりますけれど、念には念を入れてきちんとそれをやったということをしっかり申し上げたのであって、これをやらなかったから開けませんとか、これやったから開きますという因果関係の話には法的にはなっておりません。しかしながら、きちんとそれはやって、安全だということで進めていくということです。もし不明であれば担当に聞いてください。どの法律の何に基づいてどうだということを、私よりきちんと説明できると思います。より明確に根拠を示せると思います。
【記者】法律に基づいて云々というんじゃなくて、都として安全だと思っていると。
【知事】そうです。ですから仕事を進める訳です。そこまで莫大なお金をかけて土壌を改良して、勝手にこちらが点検した訳ではなく外の人たちを入れて、専門家を入れて点検して、安全だということです。
【記者】じゃあ、市場関係者とか外に向かってここは安全ですよと宣言したということとイコールだと捉えても大丈夫なわけですか。
【知事】大丈夫ですよ。間違ってほしくないのは、それがなければ開けないというマストの条件ではありませんけれどやったということ。よく誤解があって、それもやっていないのに開くのか、それやって結果が出たらどうなると。その因果関係は法律上は全くありませんということを申し上げたいので、私はこれで十分安全であると、ですから市場を開設しますということを、責任持って申し上げたいと思います。
----終了----

なお、対策自体については、知事は上記の中で次のように述べている
基本的には、まさに何重にも安全な措置を取ったということが一つ>
→「何重もの安全な措置を取った」ということで「法を上回る二重三重の安全対策」という都の約束は変わっていない。

なお、①と②についても誤りや無理があるので追記で述べる。
以上
[追記]
「②専門家会議基準」に関して
宇佐美氏は以下のように書いて、環境基準を満たすことが絶対条件だったかどうかは疑問としている。
<専門家会議の報告書ではあくまで「環境基準以下を達成することを目指す」と書いているので、そもそもこの基準を豊洲市場の開設の絶対的条件として適用することを求めていたかは疑問です。>

そして技術会議を引き合いに出して次のように述べている。
<「技術会議で決めた土壌汚染対策を誠実に履行すること」を新市場整備の条件としており、必ずしも環境基準の達成を求めているわけではありません。

しかし専門家会議と技術会議の関係は以下図のようになっている。技術会議は、専門家会議の提言を超えた対策として、「イ 地下水を敷地全面に渡って早期(市場施設の着工前)に環境基準以下に浄化」としている。技術会議は「環境基準以下」達成の仕様であり、宇佐美氏解釈は誤り。

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「①石原基準」に関して
宇佐美氏は「自然由来と操業由来の両方除去」を石原基準と解している。
豊洲の土壌・地下水の汚染には「自然由来のもの」と「東京ガスの操業由来のもの」の二種類があるわけですが、この基準では両方の汚染は除去されなければいけないことになります。>

しかし、本文の時系列のように、石原基準が述べられたとする「(4)2011年3月22日自由報道記者協会 会見」より前の「(3)2010年11月16日経済・港湾委員会」において、既に自然由来は除去できないことを意識した答弁がなされている。
<都が土壌汚染対策を実施した後も、自然由来の物質が存在する・・・>

石原氏は土壌汚染対策の詳細知識を持ち合わせておらず、操業由来と自然由来の区別をしなかったことは何ら不思議ではない。ここでも宇佐美氏の解釈は無理筋。

以下参考として同委員会の該当部分答弁。
----2010年11月16日経済港湾委員会 引用開始----
○臼田基盤整備担当部長 現行の法令といたしまして、本年四月一日から、土壌汚染対策法の一部を改正する法律が施行されてございます。この改正法におきましても、対策の基本的な考え方は、土壌汚染の摂取経路を遮断する封じ込め対策を行うことに変更はございません。・・・
  まず、自然由来の物質への対応につきましては、専門家会議におきまして、豊洲新市場予定地における土壌汚染対策を検討する際に、自然由来の物質の存在についても考慮に入れた上で、法の措置をはるかに上回る対策を取りまとめてございます。都が行う土壌汚染対策は、法令基準をクリアすることはもとより、市場用地としての安全・安心を十分確保するものとなってございます。
  具体的な対策は、深さ二メートルまでの土壌を、新たに購入した土などですべて入れかえまして、その上に、きれいな土で二・五メートルの盛り土を行い、さらにアスファルト等で舗装することで土壌汚染の摂取経路を完全に遮断し、二重、三重の封じ込めを行うものでございます。
  操業由来の汚染土壌につきましては掘削除去する、地下水についても環境基準以下とするなど、万全の対策としてございます。
また、規制対象区域につきましては、都が土壌汚染対策を実施した後も、自然由来の物質が存在する区域は届け出区域に分類されることとはなりますが、当該区域は直ちに汚染の除去などが必要となる要措置区域とは異なり、土壌汚染の摂取経路がなく、人の健康被害が生ずるおそれのない区域でございまして、さきにご説明しましたとおり、二重、三重の封じ込め対策を行うことによりまして、安全性に全く問題は生じません。

----引用終了----

宇佐美氏記述は色々問題が有りすぎで、無理して粘らずに優秀な頭脳はもっと有意義な形で活かして頂きたいと思う。

なお、同氏は日刊食料新聞さんのツィートに対して以下のように指摘。これは宇佐美氏見解の方に納得性がある。
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宇佐美氏が指摘している「モニタリング」は、2008年10月第4回技術会議などで都側から指定解除の話が出たのが発端。解除のためには環境基準を2年間連続して達成することが求められる。よって、このツィートでの宇佐美氏主張は納得できるが、前述の「必ずしも環境基準達成を求めていない」という自らの主張とは矛盾。宇佐美氏の中でも整理がついているのか疑問になる。

なお、モニタリング完了前の開業でも、「工事で環境基準達成しているから、開業後の検査になっても最終的にモニタリングOKになって問題ない」と舛添氏を含む都側は思い込んでいたと想定される。

追記以上