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形質変更時要届出区域における「一般管理区域」

本日記事は土対法関連の説明があるため、ややこしくなると思いますが、ポイントは「一般管理区域」という言葉になります。

さて、一昨日のTBS「ひるおび」で、11月のモニタリング結果について政治評論家の「伊藤惇夫」氏が次のようなコメントをしておられた。
もう結果が出てるそうですね。公表するのが14日。僕の聞いている範囲では問題ないらしいという話は聞いてますけどね>

これの真偽はともかくとして、皆さん御存知の通り、「形質変更時要届出区域」の指定解除には3ヶ月毎2年間のモニタリングで基準値を越えないことが必要。本来は昨年11月測定が2年間の最終であったが、現実は8月の測定で3ヶ所基準値超えがあった。該当区画は更に2年間のモニタリングが必要と平田氏も言っておられる。

基準値超えの速報が昨年9月29日に出た直後の都知事定例会見で、豊洲問題に詳しいジャーナリストの「池上正樹」氏が小池知事の考えを質問されて回答があった。
【記者】ジャーナリストの池上と申します。お疲れさまです。豊洲で基準値を超える汚染が出たことについてなのですけれども、今後、土壌汚染対策法上の汚染区域の指定解除を行うのであれば、汚染が残っているかどうかの周辺調査をした上で対策が必要になると思うのですけれども、今後も指定解除を行うことを目指すのかどうかということ、これは都の方針として、知事としてはどうお考えなのかというのをちょっとお聞きしたいのですけれど。

【知事】土壌汚染対策法の観点からいたしますと、2年間のモニタリングをしてきたわけです。それで、形状変更時の届出区域の指定解除、そのために2年間続けるというものでございました。豊洲の市場用地というのは、これは土壌汚染対策法上でありますけれども、土壌汚染の摂取経路というのがそもそも土壌とか地下水の飲用利用というものはそもそもない。そして、健康被害が生じるおそれがない区域というものでございます。
ただ、自然由来ということがございますので、これらについては自然由来のものが含まれるということですから、そもそも解除ということにはならないのではないでしょうか、対象として。その土地そのものが。ということで、台帳からは消えないということになろうかと思います、その点については。

【記者】汚染区域の指定解除というのは、これは市場の人たちが求めている安全宣言の前提になるものではないかなと思うのですけれども、その辺についてはどう思いますか。

【知事】それについては、土壌汚染の対策法上とすれば、この土地がそうであるということ、今申し述べたとおりなのですけれども、それについては土対法という観点と、それから全体的な観点と、いつも私は総合的と言うのですけれども、農林水産大臣の方に、この土地は市場に適していますから、そして、指定をお願いをいたしますということをお願いする、そういうポイントがあるわけですから、そこのときは、総合的な判断ということになろうかと思います。そのことが、市場が求めておられることではないかと、このように考えております。
----抜粋終了----

小池氏は的確な応答をしておられたと感じる。都職員のレクチャ-等も有るのだろうが、それだけでなく、1月8日記事で紹介したように当選前の築地街宣時でも以下のように基本的事項をしっかり認識されていた。
 ・卸売市場法に基いて農水大臣に移転許可を申請する
 ・形質変更時要届出区域の指定を解除するかどうか(できるかどうか)
 ・安全宣言が行われるかどうか

ただし、上記会見では街宣のときにはなかった「自然由来」に関する話が入っていて、「自然由来汚染があるので解除にはならない」という見方を述べている。これは事実であり、また街宣時は細かい話まではしなくて当然だから、この見解表明自体は妥当。
ただし、土対法上で正しい解釈とはいえ、この見解だけ取り出すと以下のような流れにも受け取ることが可能と思える。
(自然由来のため)指定解除は出来ない → 農水大臣申請も指定されたままで実施せざるを得ない

ここで冒頭の「一般管理区域」という用語が重要になってくる。「形質変更時要届出区域」は土対法の施行規則改正によって分類が出来ており、その内容とまとめ表を示す。
■形質変更時要届出区域の分類
施行規則の改正(平成23年7月)により、形質変更時要届出区域のなかに自然由来特例区域、埋立地特例区域、埋立地管理区域が新たに設けられ、地下水に接する土地の形質変更の施行方法の基準などが緩和されています。なお、これ以外の区域は「一般管理区域」となります。 
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この中で、③④は埋立時期や地域用途から豊洲は対象外のようで従来も話が出ておらず、①②が適用される規程になり、判定方法は下図のようになる。なお、自然由来も含めて汚染が基準値以下の場合は「指定無し」(⑤)になる。
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「形質変更時要届出区域」指定の区画も2年間のモニタリングOKになると、自然由来汚染が無ければ⑤、有れば②になる。結果的に①が無くなって「②と⑤だけ」になれば、改正前の規程では「形質変更時要届出区域」が解除された状態と同等になる。よって、当方見方としては「農水大臣認可は②と⑤の区画のみという状態にして申請するのが妥当ではないか」ということを12月19日20日の記事で述べた。

また、農水省の現在の見解自体は不明だが、前述のように施行規則の改正は平成23 年7月なので以下の資料公表(平成23年3月)の後になる。よって、この資料の内容が当該改正を考慮しているかも不明。
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現状の見解がどうなっているかについて、都側から問い合わせることは可能と思われるが、行なっているかどうか明らかにしていない。また、専門家会議は都側からの独立性を強調しているが、こちらもそのような話は無いと思われる。両者とも大きな怠慢と感じる。

だからこそ今後マスコミや都議会は、”「一般管理区域」が残ったままで農水大臣認可申請を行うのか?農水省の現状見解を把握しているのか?などの質問で小池氏や都側の考えを問いただして頂きたいと思う。その際に形質変更時要届出区域における「一般管理区域」という用語を使わないと、「自然由来特例区域や埋立関連区域以外の区域」というような分かりにくい呼び方になる。
ちなみに上記会見でも小池氏が「一般管理区域」とは言っておられないが、豊洲問題でも今まで余り使われていないようで関係者の間でも認知度が低いのではないかと感じる。しかし、法令に規程された正式用語であり、豊洲土壌の状態認識に際して今後重要というのが本記事の趣旨。

さて上記で紹介した築地街宣では、小池氏は「安全宣言が行われるかどうか」という話もしている。これには二つの解釈ができると思う。
安全宣言が必要か」という捉え方と、「安全宣言が出来るか」という情勢判断の問題。

前者については、記者会見で「安全宣言」への言及を避けているが、実際に移転決断する場合には関係者も以前から求めてきているから、何らかの形で示すことは必須になると思う。よって後者について考えてみる。例えば専門家会議での「換気」検討を考慮して、「盛土無しで(何らかの)換気装置追加」という対策策が提言として出たとする。これで小池氏は安全宣言できるだろうか。

この時には、昨日記事の追記で書いた”東京都は「法令を上回る二重三重の対策」を公約してきた”こととの整合性が重要になると当方は考えている。この対策方針は昨年の検証報告書資料でまとめられている「都議会答弁」や、その他専門家会議など様々な場でも繰り返し述べられている。

前述の「盛土無しで換気設備追加」の状態が、従来公約に匹敵する「法令を上回る二重三重の対策」と小池氏は言明できるだろうか? 或いは、「対策のグレードは多少下がりましたが法的には安全です」などのように説明されるだろうか? 当方は両方とも相当難しいのではないかと感じており、これが現段階での当ブログとしての情勢分析にもなる。

なお、図解士さんなどのように「盛土無しが正解」というご主張もあるが、それに基づく場合、小池都知事も移転決断する際には同様に「盛土無しが正解なのです」と明言することになるのだろうか。とてもあり得ないと当方は思う。また、「盛土無しで換気装置追加」も「正解」の部類なのだろうか。

結局安全宣言を行う場合には、「盛土無し」の評価が避けて通れないと想定される。専門家会議がどのような見解を示すかも今後の小池氏判断に影響してくるだろうから、まずは今週の会議に注目したい。

以上
[追記]
トランプ次期大統領の話題が連日多くなっているが、同氏の選挙戦や英国のEU離脱の報道などを通じて、「ポスト・トゥルース」というフレーズが注目され、オックスフォード英語辞典が2016年の「今年の単語」に選んだとのこと。日本でも既に注目されているが、更に流布しそうである。

意味は「世論形成において、客観的事実が、感情や個人的信念に訴えるものより影響力を持たない状況」とされている。

当ブログが検証してきた新国立競技場の旧新計画、特にザハ案や、現在の豊洲問題を考えると、まさにピタリの状況があるようにも思える。今後この観点からも、まとめてみることを考えてみたい。

追記以上