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 (続)図解士さんの書籍

1月7日記事「築地問題の図解書籍に関して」に次のようなコメントを頂いた。
トンデモトンデモと言ってる割には枝葉末節のはなしだなー・・・。昔は鋭いご指摘もされてましたが豊洲についてはなんだかナマクラ刀になっちゃいましたねえ。  2017/1/9(月)  [ 通りすがり ] >

「枝葉末節」とされておられるが、当方趣旨で「まずはトンデモ説に至る以前の根本認識における違和感箇所について」と書いたことが伝わっていなかったようだ。

Twitterで再度違和感を書いておいたが、これは本質的であり、「枝葉末節」とは当方は到底考えられない。
”「東京都の主張を整理」とされながら全く違う「盛土無しが正解」を主張。結局は「1時間で”移転が正解”とだいたい分かる」と云う趣旨にも関わらず、客観的に見せようとされているところが違和感大”

詳細を述べると、同書の最初の方に基本スタンスが掲載。しかし、実際の内容との整合性に関して大いに違和感があるので引用後考察。(①~③は説明用に付加)
----書籍引用開始----
①この本に書かれてあることは全て事実を元にしている。
実を申し上げれば本書の解説に目新しい情報は何一つありません。本書で解説する豊洲での土壌汚染対策は、すべて東京中央卸売市場で公表された各種の会議議事録、配布資料、その他情報を基幹としております。これらの資料を丹念に読み解けば豊洲の土壌が十分に安全であることが理解できるのです。しかし、公表されているデータは膨大で、一般市民が読むのに適した形式ではありませんでした。本書はそれらを図解の技術を使用し、②東京都の主張を大まかに整理したものです。
③筆者は、築地移転の是非は都民の判断次第だと思っています。筆者自身は豊洲への移転賛成派なのですが、都民が築地に卸売市場があるべきだと判断するならばそれでもかまわないと思います。しかし、その判断は正しい知識に裏付けられたものであってほしい。・・・
----引用終了----

これについて、同書の他の部分も引用し考察してみる。
①<全て事実を元にしている>
この明言にも関わらず、肝心なところで次のように事実と異なることが書かれているので前記事で指摘させていただいた。
建物を建ててからいわゆる「謎の空間」が発見されました。これは現在のところ「メンテナンス空間」という名称で呼ばれております。

「モニタリング空間」が東京都の検証報告書などにも頻出する通称名で根本的重要性が有ると思うが、理由不明のまま「メンテナンス空間」に変えられても、コメントを頂いた「通りすがり」さんには「枝葉末節のこと」となるようである。
それ以外にも、専門家会議の方針について次のように事実と違うことが書かれていた。
当初の予定のみを見れば、地下の汚染土壌には手を付けず、上に盛り土をかぶせ、その上にアスファルト等を敷くことで汚染物質を封じ込める計画でした。

更に追加しておくと次のような記述も有る。
まず、この問題を理解する上で最初に知っておかなくてはならないことがあります。それは豊洲の土地が東京ガスから東京都へ売却された時点ですでに土壌の表面から50cmまでの部分は汚染処理がなされていたということです。

売却時期は平成23年3月であるが、それより前に専門家会議が始まっており、平成19年5月第一回の議事録で市場長が以下のように述べておられる。また、会議資料「東京ガス(株)が実施した土壌汚染対策」に詳細説明もあり。
移転地は、かつてガスの製造工場であったことから、ベンゼン、シアンなどの汚染物質が確認されておりまして、事業主であった東京ガス株式会社が平成13年2月から、これらの操業に由来する汚染物質の処理を開始いたしまして、平成19年3月には現地盤面から2メートルまでの土壌を掘削し、処理を完了したところでございます。

図解士さんは<土壌の表面から50cm>とされているが、実際は「2m」だったようである。このように<全て事実を元にしている>としながら、事実と異なるところが多々あり。当方から見ると、とても信頼が置けるとは言えないように感じたが、コメントを頂いた方はそうではないのだろう。

②<東京都の主張を大まかに整理したものです>
例えば図解士さんは<盛り土が無い方が正解なのです>と書いておられるが、これは東京都の主張とは異なる「主張の整理」ではなく、ご自身の独自解釈を入れておられるのなら、違うことを明記しておいて頂かないと読む人に誤解を与えかねない。

また、市場PTにおける佐藤尚巳氏の発言を重視して紹介しておられるが、これはまだ「東京都の主張にはなっていない」個人的発言の段階。「東京都の資料に記載」と「東京都の主張」とはイコールではないので、このようなところも明確にして頂かないと正確さに欠けることになる。

③<筆者は、築地移転の是非は都民の判断次第だと思っています>
これに関しては当方も同感。ただ、<その判断は正しい知識に裏付けられたものであってほしい>は、例えば上記①②のように事実と異なるので「正しい知識」になっていない。前述のように「盛土無しが正解」と東京都の主張ではないことを書いておられるのは、「正しい知識」はご自身の解釈ということだろうか。

そして「筆者自身は豊洲への移転賛成派」とも書いておられる。結果的に、冒頭でも書いたようにタイトルからして次のようにされたら如何だろうか。これで趣旨がよく伝わると思う。
 ”1時間で移転が正解だいたい分かる。築地問題の話を図解しました。”

結局同書の冒頭でも目的は<多くの方に正しい知識を知っていただくこと>と記され、客観的立場のように見せながら、実際は「正しい知識→自らの見解→移転賛成」に持っていこうとされている姿勢が見えたので、当方は違和感を感じて記事を書いた次第。

なお、都民の判断は今夏の都議選が重要になるが、それにあたってはまず小池氏がどのような考え方を示すかがポイントになり、その判断の目処も今夏。よって当方は「小池氏がどう判断するか?」を出来るだけ客観的に見ようとしている。そこが図解士さんとのスタンスの違いになると思われる。ちなみに昨日一昨日記事で小池氏の発言を見てみたが、「6千億かけた建物が既に出来ている」という認識とともに、著書では「豊洲移転に慎重」だったというような面もある。

それでも「移転賛成派」の方々は、色々事実と違う点があっても図解士さんと同意見だから、同書に違和感なく賛同できることになるだろう。多分コメントいただいた方も、そのような立場ということかも知れない。

ただトンデモ説かどうかは自体は、例えば「換気」が追加になるかどうかで客観的に分かって来ると思う。現状空間が図解士さんも高く評価する佐藤氏見解のように「英知」であるなら、後から換気装置追加のような改造などありえないのではないか。改造が必要なものを「英知」とまでするならトンデモ説の最たるものになるだろう。今後専門家会議の進展を見ていきたい。

なお、コメントいただいた方は<昔は鋭いご指摘もされてましたが>ということで、当ブログを前からお読みいただいたことがある模様(ちなみに昔の話でもご評価いただいたことは有り難い)。
それであれば、一例として以下記事で「トンデモ説」の検証行っており、他にも多数記事あり。
このような記事を見ておられない、或いは読むのが面倒という場合は、やはり上記のように「現状空間に追加対策が必要になるかどうか」が客観的な判定になると思われる。

以上
[追記]
本文で紹介した第一回専門家会議の市場長発言は次のように続く。
<また、東京都におきましても、市場が生鮮食料品を扱うことの重要性にかんがみ、独自の土壌汚染対策として、法令の対象外でございますけれども、環境基準を超える自然由来の物質につきまして、東京ガス株式会社と同様の対策を行うこととしてございます。
さらに、東京ガス株式会社の土壌汚染調査で汚染物質が検出されなかった区域につきましても、建物建設地以外は掘削いたしまして土壌の入れかえ等を行い、その上に法令の指針を上回る厚さの盛土を行ってまいります。
豊洲新市場予定地は、このように敷地全面にわたりまして二重三重の対策を講じていくことにしております。>

ここに明言されているように、東京都は「法令を上回る二重三重の対策」を公約してきた。議会などでも繰り返し約束してきた。しかし、図解士さんも含め移転推進派の方々では、この点を余り重視せずに、単に法的にどうかという見方をされている場合があるように思える。

例えば「盛土がなくても1階床のコンクリートが有るから法的にOK」という主張も有る。しかし、盛土とコンクリートで2重になるところが、コンクリートだけなら1重になる。これは公約違反にならないか。もし公約違反なら許されるレベルか。

最終的に東京都として「安全宣言」を行う場合には当初の公約は重要になると当方は見ている。今後の推移で小池知事が安全宣言できる環境は整ってくるだろうか。

追記以上