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5階建てか6階建て相当か(訂正あり)

まず、山本一郎氏がYahoo!に書いておられる以下記事の件。その中でも石原慎太郎氏に関する部分から。
<東京都の知事秘書室も、すでに退職した各局長経験者も、本件については「石原都知事に報告を行ったと聞いている」という回答なので、誰にも報告されずに話が進んだと問題となっていた盛り土や地下ピットについては「都知事に報告済みでした」というオチで終わりそうです。>

専門家会議にも技術会議にも報告しないで、建築の知識が無い知事に報告済みだけで担当者や部署は不問、なんてことがあるのだろうか(笑) 山本氏の発想が不明。

なお、以下の朝日記事も石原氏と盛土問題の関連で、「コンクリートの箱を埋め込む」案を検討指示していたと報じている。しかし、もしこの案だったら地下構造の存在がハッキリしていたとも言えるだろう。
<石原氏が08年5月の記者会見で紹介したのは、外部から寄せられたという研究者の案。「箱ですね、コンクリートの。(略)それを埋め込むことで、その上に、市場としてのインフラを支える。その方がずっと安くて早く終わるんじゃないかということでしたね」などと述べた。…
一方、比留間氏(元市場長)は石原氏が示した案について、「知事から『こういう案もあるが、どうか』と言われて検討した」と話す。ただ、工費が多額になりそうな見通しだったため、後日、「採用できませんでした」と報告。石原氏も了承したという。石原氏の方針がその後の地下活用案に影響したかどうかについては、「石原氏の案は採用されなかったので、その後の施設建設に影響はなかった」と話す。>

この記事は、結果的に「影響なかった」と云う件を得々と書いている。
今回の問題は、都側の(現段階では不明の)誰かや部署が、専門家会議にも技術会議にも明確に諮ることなく地下構造を設置し、盛土を止めてしまった。コンクリート箱の話とは全く違っているのに、石原叩きとも思える見出しの付け方は不適切だろう。

山本氏記事に戻ると、更に森山氏に矛先を向けている。
<森山さんについてはかねてからいろいろ物議はあるわけですが、たとえば森山さんが取締役として経営に参画しておられる赤坂の建築事務所、株式会社CRAがあります。…
いずれ報道で出るかもしれませんが、森山さんが取締役を務めるこの株式会社CRAは、今回の東京都が行う公共工事および建築の一部設計や土木、解体などの施工を請け負う企業と競合関係にあります。
そのライバルにあたる会社の数社が、今回問題となった工事の設計や施工で森山さんにいちゃもんがつけられ、しかも、その内容が言いがかりやガセネタであるため、実質的に営業妨害であると当該工事にかかわった各社は判断しています。>

このような属人的ネタは、森山氏が連日のようにマスコミ等に登場し、更に東京都委員就任とのことで、準公人或いは公人的立場として少しでも疑義の有る点は明らかにしておくことは、森山氏のためも含めて納得性もあるだろう。ただし、「ライバルに当たる会社が・・・いちゃもんがつけられ・・・実質的に営業妨害・・・」という部分などは確実な裏取りがされているのだろうか。今後の展開を見ていきたい。

----訂正開始----
第18回技術会議議事録で砕石層に関して以下の記述有り。
<図で着色のない箇所は、液状化対策でご説明したのと同様に建築敷地などに相当する箇所でございまして、土壌汚染対策とは別に、別途施設建設などに合わせて砕石層の設置が行われております。
よって砕石層に関する記述は削除実施。
----訂正終了-----

更に山本氏は構造専門家の高野氏にも突っかけておられる。その中でも以下は重要な論点。
「外周がしっかり固められていない状態で高さが一階高ければ、地震の際の振られ方も違います。」 
これは一級建築士の高野一樹さんの言葉になっていますが、そもそも外周に関する平面図の読み違いがあり、問題外の内容になっています。この時点で一級建築士なのに図面も読めないのかという状態で、かつ、周辺の土壌を固めたところでそれはただの土と舗装であり、地下ピットが土で固められてようがそうでなかろうが構造計算にはほとんど影響しません。なぜならば、地中に打ち込んだ500本以上の杭と強固な基礎で全体の構造を支えているからです。

専門家の高野氏は<地中に打ち込んだ500本以上の杭と(強固な)基礎で全体の構造を支えている>ということは百も承知。まずそれを認識しようとしない山本氏には呆れる。加えて、<地下ピットが土で固められてようがそうでなかろうが構造計算にはほとんど影響しません>とは簡単に言えない。

高野氏は「構造計算を5階建てで行うのか、地下も考慮に入れて6階相当として行うのか」という点を指摘しておられる。それに対して、山本氏は高野氏が図面を読めていないと非難。しかし、「地下部分の周囲が地盤で抑えられていなければ構造計算上で地下扱いに出来なくなるのではないか」という課題提起自体は、ご自身が引用された高野氏のシンプルな概要図(後述)を見たら容易に理解出来て、課題提起の納得性も有るのではないか。

また高野氏は構造計算書のコンクリート厚み間違い指摘も行っていた。これによる都側訂正で上部構造重量が構造計算時より増えた。それに加えて地盤構成の前提が変われば、構造計算に殆ど影響しないと言い切れるか微妙。また申請上の問題になる可能性等も考えられる。

山本氏は、この肝心なところを全力スルーのようだ。また高野氏に対して以下のようにまで言っている。
先日高野一樹さん(Twitterでの通称は「ペコちゃん」)という一級建築士の人が不安を煽るだけの意見書を都議に提出し、あっさりバレて建築家協会送りになるという破廉恥が発生しました。

しかし、前述の高野氏コンクリート厚み違い指摘は的確で、結局都側と設計会社が誤りを認めて訂正することになった。この件もスルーした上で、上記の非難(難癖)。「ガセはどちらか」というのは、豊洲問題をしっかり見ておられる方には明らかと思う。

高瀬氏は地下の「がらんどう」も早くから指摘しておられた。(というか、当方の記憶では高野氏の指摘が一番先だったと思うが、何故か日刊ゲンダイ共産党の指摘が端緒とするマスコミ等が多いようで、どうも変である)
鋭い指摘を連発しておられる高野氏と、「図面を読め」と言いながら自身は読めていない山本氏。どちらが信頼置けるかは言うまでも無いように思う。

このように山本氏は粗雑な記事を連発しておられて以下の記事も有る。この中で、本日本題の構造計算上における階数問題に関して、高野氏の概要図(更に簡略化した図と併せて後掲)を引用して言及しておられる。
この「外部有識者」は建屋設計の平面図を読めておらず、最初から豊洲新市場の設計は盛り土の上に建屋を建設するような愚を避け、空間を用意して汚染物質を遮蔽する方針であったことが分かります。なぜ、いまさらになってこんなことを言うのでしょう。 >

「外部有識者」となっているのが高野氏。ここでも「図面が読めていない」と決めつけ(笑) 
それでも水掛け論になってはいけないので、導入部として「そもそも論」に近いところから考えてみる。
東京都中央卸売市場のHPに、次の資料がある。
豊洲新市場実施計画のまとめ”平成17年(2005年)9月 東京都

2005年に出されたもので、2007年4月の専門家会議設置より、もっと前にまとめられた計画書になる。これには「地下」と云う言葉が一回も出て来ない。建物の構想は以下のようになっていて、直接の市場施設ではない千客万来の下部を除けば、駐車場も含めて全部1階以上での配置になり地下は無い

イメージ 1

つまり地下利用はこの段階から全く考えていない仕様になっていた。専門家会議や技術会議のメンバーも参考資料としてこれを見ているか、都側がこれに基づいてコンセプトを説明していることが想定される。(このまとめの翌年に出された「豊洲新市場整備等事業業務要求水準書(案)2006年12月」にも地下無し)

これでは専門家委員らも、地下施設は無いものと考えて当然。実際、当ブログ9月14日記事の経過表で紹介した、専門家会議第一回における内山委員の「この建物が地下を持っていないということで…」という発言は、こういうところから来ていることが推察される。

長い時間と手間をかけ、専門家らによる会議も含めて地下無しで進めながら、都庁内の誰かが建築発注の段階では仕様を変え、そのことを今まで明らかにしてこなかった。これでは委員にも当時の知事にさえ直接責任を帰すことは困難だろう。小池氏の「都政大改革」の手始めとして、このような不可解な意思決定システムの改革を図って頂きたいと思う。

さて、上記の地下施設無しの仕様から、5階と6階の件について更に考えてみたい。
その際に、仮定として「土壌汚染対策が実施済みの更地」として引き渡しが行われ、そこから建物の仕様策定や設計を実施して建設する場合を想定してみる。まず建築の詳細を考えず更地にするなら、土壌汚染対策は第18回技術会議の資料にある以下図の構成で良いことになる。
イメージ 3

この上に建物を建てる際にどのようにするか。
下図左が現在の構成であるが、敷地全体が盛土で更地に整備されているとするから、地下無しなら右図のように地上部から建てることを考えるのではないか。
イメージ 5

右図は現在の構成を1階分持ち上げてみただけの図だが、建築家の方々なら更地から建てる場合の構造は容易に発想されるだろう。
盛土が部分的に無いという特殊条件から考えるとややこしくなるが、まず更地を仮定して考えてみると分かりやすくなると思う。そこから基礎や配管スペース等はどう設置するのか?、などを考えて行けば、本来の構造が見えて来る。

関連して、「KintA  / @KintaGoya」さんのツィートをご紹介。
<コレ、「地中梁」てより完全に「天井梁」じゃん?(オイラ的経験値)
つまりここがピロティ1階ってことね?
「地上何階」とか呼ぶ建物全体の構造としたら一階分高い・重心も高い・揺れ

地下構造が「ピロティ1階」相当と云うのは慧眼で、「1階分高いのではないか」という疑問に関して、この表現が一番わかりやすいと感じた。その流れで、前述の高野氏による概要図(下図左)を更に簡略化(右)してみる。
イメージ 4

つまり、1階分掘り下げたところ(AP+2m)から建てられたと考えれば、高野氏指摘の6階相当になる。ただし、実際の地盤条件や各部構造を踏まえて、豊洲の建物が「6階で計算すべき構造」になるかどうか?
建築家の方々の更なる検討を期待したい。

以上
[追記]
山本氏には、ツィートとTV出演の関連問題も有ると思う。
当方は「言葉狩り」をするつもりは無いが、まず以下は皆さんが考えてもアウトだろう。
イメージ 2

ただし、Twitterではそれも「芸風」と言うことで押し通したいのかもしれない。しかし、例えばフジTVではレギュラーの曜日コメンテータを務めておられる。TVでは決して言わないだろうが、家の中で個人的につぶやくなら別としても、Twitterはクローズなメディアではない。
フジがこのような発言を知っても、公共の電波を使うTVに出演OKなのか。またネットでもYahoo!は影響力大きいが、このような発言の人に、このまま記事を書いてもらい続けるのか。考える必要が出て来ると思う。

追記以上